背水の農 TPPショック、5大改革で乗り越えろ 2014.05.12 <2>
背水の農
TPPショック、5大改革で乗り越えろ
2014.05.12
今週の特集記事のテーマは
貿易自由化の衝撃は後ろ向きの農協にも押し寄せる。
残された時間でどれだけ生き残りへの足場を
固められるのか
ということです。
PART2 オランダ農業 現地取材
驚愕の輸出力に学べ
欧州各国を歴訪中の安倍晋三首相が、オランダ西部の
ウエストラント市に立ち寄った際のエピソードを、
日経ビジネスの記者は次のように伝えています。
(P.034)安倍晋三首相の険しい表情が緩み、満面の笑み
を浮かべた。手にしているのはオランダ産の
パプリカ。そのまま食べても苦味がなく、
新鮮で瑞々しい味にしばし舌鼓を打った。

オランダのパプリカ
(『日経ビジネス』 2014.05.12号 PP.034-5から)
大事場首脳会談直前に、安部首相がパプリカの生産者を
訪ねた理由は、
「ここのパプリカ生産者がオランダ国内で最大級の生産性を誇り、
日本の農業の成長戦略を練る上で参考になると判断したため」(P.034)
だそうです。
欧州の小国オランダが驚くべき輸出力を発揮している事実を
知ることは、上記の文脈を理解するために不可欠です。
オランダ農業を概観してみましょう。
日経ビジネスは次のようにまとめています。
(P.034)オランダの人口は日本に比べ1割強にすぎず、
国土も九州程度の広さしかない。
ただ、農業はGDP(国内総生産)の1割を
占め、70万人の雇用を生み出す。
農産物の輸出額は世界2位の893億ドル
に上り、国土が広大なトップ米国を追随する。
オランダの農産物の輸出額が、世界2位とは知りませんでしたね~。
国土が狭いオランダでは、相当生産性が高いことが推測できます。
この点が、日本の農業にも大いに参考になる、と判断されたのです。
オランダのパプリカの画像を掲載しましたが、日本のパプリカとは
まったく違うそうです。
(P.035)驚くのは大きさだ。日本の施設は高さ
2~3m程度で、いわゆる「ビニールハウス」
が大半を占める。ここはガラス製の施設で、
高さが7mを超え、広さは4ヘクタールに迫る。
日本の野球場に匹敵する規模に当たり、
植物工場としてコンピューターで温度、水分、
養分などをすべて自動的に制御している。
非常に効率的な生産をしているため、生産から集荷、出荷までの
期間が短縮化されています。
(P.035)集荷から1時間半で出荷準備が整い、
大半は英国に毎日輸出する。
ここで、オランダと日本の比較表をご覧ください。
オランダ 日本
1679万人 人口 1億2712万人
415万ヘクタール 国土 3780万ヘクタール
190万ヘクタール 農地 456万ヘクタール
893億ドル(世界2位) 輸出 32億ドル(世界57位)
日本とオランダには共通点があります。
例えば製造業です。
(P.036)日本の製造業と同様に、土台を支えるのは
9割の中小企業。
しかし、違いもあります。
(PP.036-7)産官学が連携し、次世代の研究も進む。
一例ではオランダのフィリップスが作る
LEDを使い、赤や青といった光の色、
高さを調節しながら、トマトやバラの
バラの生育がどう速まるかを調べている。
さらに、オランダ人気質から来ていると思いますが、
「単純作業が嫌われる収穫の現場は移民の
ポーランド人などに任せつつある」のです。
PART3 農の産業化を急げ
みなとみらい地区(横浜)にほどちかい一角に、白色円形ドームが
あり、通行人の目をくぎ付けにしているそうです。
こちらがその画像です。 ↓

円形ドーム レタス工場
(『日経ビジネス』 2014.05.12号 PP.38-9から)
このドームの中には何かあるのか、気になりますね?
(P.038)高さ5m、直径29mの巨大ドームの中は、
実は最新鋭の植物工場。日本人の
消費量が多いレタスを作っている。
運営しているのは、農業ベンチャーのグランパ(横浜市)で、
「日立製作所、王子ホールディングス、カゴメ、日揮といった
大手企業がこぞって出資し、事業の先行きに注目」(P.038)
しています。
この事業が注目されている理由は、レタスの12毛作にあります。
12毛作? 聞いたことがありませんね?
これはどうすれば可能なのかを知ると、唸ってしまいますよ!
(PP.038-9)レタスは横に広がって大きくなる特性がある。
これに注目してドームの中心部分に苗を植え、
レタスが成長すると少しずつ外側に移動する
仕組みを考案した。レタスが互いの成長を
妨げず、30日間で出荷できる。驚くのは
その生産性。年間「12毛作」を実現している。
面白いですね。まだ、事業が軌道に乗っているとは
言えないかもしれませんが、こうした試みが拡大して
行けば、レタスだけでなくほかの野菜にも導入が
可能になるかもしれません。
日経ビジネスは、大胆な5つの提言をしています。
1 多様な担い手を確保
担い手の確保に向け、企業の参入や地方移住を促進
2 農地集積で生産性向上
農地集積と他産業との連携でコストを下げ生産性を向上
3 高付加価値化で輸出拡大
輸出は高付加価値の加工品で、物流や販促も地域連携を
4 画一農政からの脱却
農政はぶれずに地域特性に応じたきめ細かな対応を
5 農協も競争の時代
農協、農業生産者も競争・淘汰に備え自己改革を急げ
いろいろな試みをご紹介しました。
農協に限りませんが、「脱皮できない蛇は死ぬ」という例えが
あるように、自己改革できないものは生き残ることさえできない
時代に入って行くことは、間違いないようです。
日経ビジネスは、最後にこのようにまとめています。
(P.041)農業大国との貿易自由化拡大が現実化し、
日本農業を取り巻く環境は新たな段階を迎えた。
構造問題の象徴である農業再生に残された時間は
多くはない。今度こそ改革の実を上げ、農業を魅力
ある存在に高められるか。それがアベノミクスの
成否をも左右する。
多くの人にとって、農業は身近な存在ではないかもしれません。
ですが、TPP等の重要な国際問題となってくると、無関心では
いられないと思います。
記事を読んで、面白かったら
ポチッとしてください。
