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日本の革新者(イノベーター) 2014 世界を動かす12の発想  2014.11.24 <3>



日経ビジネスの特集記事(83)

日本の革新者(イノベーター)
2014
世界を動かす12の発想
2014.11.24



今週の特集記事のテーマは

新興国に迫られ、市場の成熟が進むこの国が蘇(よみがえ)る
には、特に3つのタイプの革新者が欠かせない。
従来ない製品を創る「常識の破壊者」、埋もれている日本の
魅力を世界に発信する「伝道師」、戦後70年を迎え官民共に
老朽化が目立つ組織を再活性化させる「異端児」だ。
多様な分野で活躍する、日本の未来を変える「三種の人財」
12人の今に迫った
 (『日経ビジネス』 2014.11.24 号 P.027)

ということです。


日本の革新者(イノベーター) 2014 世界を動かす12の発想

日本の革新者(イノベーター)
2014
世界を動かす12の発想

(『日経ビジネス』 2014.11.24 号 表紙)



今特集記事では、まず、世界を動かす12人のお名前を
ご紹介します。


「日経ビジネス」は、
常識の破壊者
日本文化の伝道師
組織を変えた異端児
に3分類しました。


常識の破壊者

ホンダ エアクラフト カンパニー社長 藤野道格
WHILL CEO               杉江 理 
東京工業大学教授           西森秀稔
Lalitpur CEO               向田麻衣
シャープ副事業部長          田村友樹
九州工業大学教授           伊藤高廣


日本文化の伝道師

旭酒造社長                桜井博志
マイファーム社長             西辻一真
中川政七商店社長            中川 淳


組織を変えた異端児

近畿大学水産研究所長         宮下 盛
「萩しーまーと」駅長            中澤さかな
AgIC CEO                  清水信哉



最終回にご紹介しますが、この12人の中から、
「日本イノベーター大賞2014」の大賞、優秀賞、
特別賞、そして日経ビジネス創刊45周年記念
特別賞の5人が選出されています。
(但し、日経ビジネス創刊45周年記念特別賞
には、ここにノミネートされた方に特に関わりの
強い方も選ばれています。そのため6人の選出
となりました)


どなたがどの賞に選出されたのか、想像しながら
ご覧ください。


第1回は、「PART1 常識の破壊者」6人のうち、
4人を取り上げます。


第2回は、「PART1 常識の破壊者」の残りの2人
と、「PART2 日本文化の伝道師」3人を取り上げ
ます。


最終回は、「PART3 組織を変えた異端児」3人と、
「日本イノベーター大賞2014」受賞者、「2014年
のイノベーターを読み解く5つのキーワード」を
ご紹介します。



PART3 組織を変えた異端児

近畿大学水産研究所長 宮下 盛(みやした・しげる)

マグロ養殖を自ら事業化 稼ぐ大学の先兵に

近畿大学水産研究所長 宮下 盛

近畿大学水産研究所長 宮下 盛 氏

(『日経ビジネス』 2014.11.24 号 PP.040-041)




 成魚に育つ確率が1%にも満たないとされる

 高級魚クロマグロ。卵から人工で育てる

 「完全養殖」の事業化にいち早く成功し、

 大学の掲げる「実学の精神」を象徴する

 プロジェクトになった。


 宮下盛の属する近畿大学水産研究所本部は

 温暖な和歌山・白浜にある。

 「近大卒」の魚が向かうのは寿司店から

 イタリア料理店まで様々だ。


 クロマグロの完全養殖に向けた研究が始まった

 のは1970年。水産庁の呼びかけで当初は複数

 の大学や研究機関が参加した。期待したほどの

 成果が上がらず、水産庁は3年後に研究を休止。

 近大だけが研究を続けた。


 宮下は粘り強くマグロの死因を調べた。その結果、

 たどり着いたのが衝突死だった。

 直径6mの生け簀を同30mに広げてみたところ、

 だんだん生き残る確率が高まっていった。


 養殖成功から10年余りが経過し、今ではマグロ

 が稼ぎを生む。2013年には相次いで大阪と

 東京・銀座に近大のグループ企業が飲食店を

 出した。脂の乗りがたちまち評判になり、

 午後11時の閉店時間前にマグロが売り切れて

 しまうほどの繁盛ぶりだ。


 マグロだけではない。近大付属農場では新品種

 のマンゴーを栽培し、研究牧場で育った牛や鴨

 は「近大ブランド」で市場に流通する。


 今の宮下の関心事は、エサを工夫することで

 マグロの養殖コストをさらに引き下げる研究だ。 
 

  (PP.040-041)


技術力で最後まで業界に残った企業として、
2社がすぐに思い浮かびます。


1社は、カーボンファイバー(炭素繊維)や合成繊維
で圧倒的なシェアを握る東レです。繊維業界から
ライバルが相次いで撤退し、最後まで残った東レが
市場を独占しています。


炭素繊維を使用し、機体を軽量化したボーイング
787が製造されたことは耳新しいニュースです。
量販車にも炭素繊維を使用する試みがなされて
います。


もう1社は、写真業界でコダックやポラロイド、コニカ
などのライバルがいなくなり、最後まで残った富士
フィルムは有機材料化学や無機材料化学などの
基礎技術を磨き上げ、化粧品ビジネスに参入し、
大きな成果を上げました。


最近では、「チェキ」というインスタントカメラが、
日本の若者たちや海外で評判になり、デジタル
カメラとは違い、すぐに写真を見られる手軽さが
うけています。


カメラとフィルムを一体で製造する技術は、
富士フィルムにしか存在しません。
一人勝ちです。


近畿大学の宮下さんは数十年の歳月をかけ、
クロマグロを研究した結果、「完全養殖」に成功
しました。簡単には「諦めない」ことが、奏功した
のです。


近畿大学も数十年にもわたる研究を支援した
のですから、素晴らしいことだ、と思います。




「萩しーまーと」駅長 中澤 さかな(なかさわ・さかな)

地元愛をすくいあげる地方再興請負人

「萩しーまーと」駅長 中澤 さかな

「萩しーまーと」駅長 中澤 さかな 氏

(『日経ビジネス』 2014.11.24 号 P.042)




 全国1800市町村の半数が2040年までに

 消滅する――。「日本創成会議」が今春まとめた

 予測は多くの地方に衝撃を与えた。


 「大好きな魚のそばで暮らしたい」という思いから

 リクルートを辞め、萩に移って15年。埋もれていた

 萩の水産資源に光を当て、情報収集や広報宣伝

 といったマーケティングを徹底して、萩しーまーと

 を年商10億円の道の駅に育て上げた。中澤の

 評判は次第に多くの自治体に広まり、地方活性化

 の後押しを求められるようになった。


 強い地元愛を持つキーパーソンを見つけ出し、

 二人三脚で時間を掛けながら泥臭く突破口を

 切り開いていく。


 「中澤さんは地域を思う人の力を引き出すのが、

 本当にうまい」。中澤について各地を回る、

 萩市観光協会の山口泉は言う。

 中澤は到着するとひたすら町を歩き、夜はいつも、

 土地の人たちと酒を酌み交わす。食資源のネタを

 探しているようで実は、秘めたる思いを持つ人材を

 見つけ出すのが目的だ。


 今の姿勢を貫くのは「一時的だけ良くなっても、

 永続しなければ成功じゃない。そのためには

 地元の人が当事者意識を持って活性化に取り

 組むのが一番いい」(中澤)と考えるからだ。
 

  (P.042)


リクルート出身の経営者は、個性的な方が
多いですね。江副浩正さんが創業したリクルート
のDNAが、連綿と引き継がれているのでしょう。


そう言えば、今年、リクルートが再上場しましたね。


安倍政権は、「地方再生」を喧伝していますが、
中澤さんのような地道な活動、支援でなければ
実を結びません。


選挙のたびにマニフェスト(政権公約)を唱えますが、
口だけでは、「地方再生」や「地方活性化」は図れ
ません。


「一時的だけ良くなっても、永続しなければ成功
じゃない。そのためには地元の人が当事者意識を
持って活性化に取り組むのが一番いい」、
という中澤さんの言葉が全てを語っている、
と思います。


中澤さんたちの活動に「おんぶにだっこ」では、
長続きしません。あくまで「自分たちが主体になって
やっていくんだ」という気概を持って、事に当たらな
ければなりません。



AgIC CEO 清水信哉(しみず・しんや)

産業界に新生態系創る 起業技術者のモデルに

AgIC CEO 清水信哉

AgIC CEO 清水信哉 氏

(『日経ビジネス』 2014.11.24 号 P.043)




 「技術立国」を掲げる日本だが、内実は

 危機的だ。基礎研究の成果は海外に流れ、

 新産業が生まれない。


 東京・神保町の雑居ビル。エンジェル投資家、

 鎌田富久のオフィスにプリンターを抱えた若者

 がやってきたのは、2013年暮れのことだった。

 若者の名は清水信哉。マッキンゼー・アンド・

 カンパニーの若手コンサルタントだった。

 大学時代の友人と2人で現れた清水が鎌田に

 見せたのは「印刷できる電子回路」。銀の微細

 な粒子を混ぜたインクを使い、市販のプリンター

 で紙に印刷すると導電性の回路が出来上がった。

 「すぐ事業化した方がいい」。鎌田は1時間の面談

 で投資を決断。翌月、清水はマッキンゼーを退職

 しAgIC(東京都文京区)を設立した。


 鎌田が清水の支援を即決したのには、2つ理由が

 ある。

 1つは、起業家としての可能性だ。

 鎌田は「リーダーシップがあり、技術への理解も

 深い」と清水を評価する。


 鎌田が清水に期待するもう一つの理由。

 それは、東大発の技術ベンチャーとして、

 後に続く起業家としてのロールモデルを作ること

 にあった。

 3Dプリンターの登場で、個人がモノ作りに参加する

 「メーカーズムーブメント」が起きた。AgICの技術で、

 従来作れなかった電子回路が簡単に実現すれば、

 その波を後押しできる。


 鎌田の思いに応えるように、この1年、清水は着々と

 事業を構築してきた。今年3月に米キックスターター

 で資金を調達、秋には電子回路を描けるペンや、

 プリンター用カートリッジをアマゾンの通販サイトで

 発売した。


 三菱電機を辞めてAgICに参加したエンジニアの

 小笠原一憲は、「大企業では、技術者が本当に

 作りたいものを作れない。ここならそれができる」

 と語る。 
 

  (P.043)


技術が分かり、経営ができる人物であれば、
自らメーカーになることも、エンジェル投資家になる
ことも可能です。


清水さんは、小学校の頃から他とは違う少年
でした。


「小学校の頃から量子論や相対論といった大学の
物理の教科書を読みこなし、名門・灘高校時代は
電子工作に没頭。高校生の化学グランプリで優秀賞
に入った。東京大学ではクルマを自作するサークル
に所属する一方、大学院で人工知能の研究に取り
組んだ」(P.043)ということです。


清水さんが左手に持っているのが、紙に印刷された
「電子回路」です。このような発想をすること自体が
私たち一般人とは全く違いますね。


まだ26歳ですから、これからどんな製品が出てくる
のか楽しみです。


技術者の世界では、大企業からAgICのような小企業
へ転社する人がいます。転職ではなく、転社です。


自分の技術力に自信を持っていますが、大企業では
生かされないと感じると大企業でのキャリアをあっさり
捨ててしまうのです。


報酬などの待遇は悪くなっても、自分がやりたい仕事
ができる会社を選ぶ人たちが増えてくるのでしょうか?




クレージーが革新を生む

3回にわたって、日本の革新者(イノベーター)12人を
ご紹介しました。いかがでしたでしょうか?


正直に言いますと、12人のお名前は一人も知りません
でした。


ただ、近畿大学が「養殖マグロ」を事業化したことは
ビジネス番組で見て知っていました。


ですが、その中心人物である、宮下盛さんのことは
初めて知りました。


「日経ビジネス」取材班は、自ら国内外を取材し、
自分の目で見て、自分の耳で聞いて、自分の鼻で
嗅いで、自分の舌で味わって、自分の手足で触れた
体験を通じて、記事にしています。


ですから、マスメディアによく登場する人たちとは違う
人物を掘り起こすことができるのです。


「日経ビジネス」は「2014年のイノベーターを読み解
く5つのキーワード」を見出しました。
下図の通りです。


2014年のイノベーターを
読み解く5つのキーワード

(『日経ビジネス』 2014.11.24 号 P.044)



「日経ビジネス」がこれらの5つのキーワードを
見出した経緯と解説をご紹介しましょう!


あっ、その前に「日本イノベーター大賞」とは、
どのようなものかを、先にご紹介しないといけない
ですね。


 日経ビジネスは2002年に「日本イノベーター

 大賞」を創設し、各分野で革新を起こしている

 人物を毎年表彰してきた。
 

  (P.044)


では、5つのキーワードについて、「日経ビジネス」
の解説を見てみましょう。


 登場した2014年のイノベーター12人の

 生き様は5つのキーワードから読み解ける。

 1つ目は「Crazy Idea(クレイジー・アイデア)」

 だ。日本ではクレイジーという言葉はマイナス

 のイメージが強いが、英語で「常識外れ」は、

 前向きな意味で捉えられるケースも目立つ。


 2つ目のキーワードは、「Indomitable Spirit

 (インドミタブル・スピリット)」だ。

 不屈の精神を意味し、様々な困難に直面
 
 してもあきらめずにやり抜く姿勢を指す。


 3番目は「Value Creation(バリュー・

 クリエーション)」。新たな価値の創造を指す。

 大学が持つ技術をフル活用し、新たな市場を

 次々に作り上げるさまは、まさに新たな価値の

 創造と呼ぶべきものだ。


 4番目は「Global Scope(グローバル・スコープ)」。

 世界的な視野を意味する。

 (WHILL(ウィル)CEOの)杉江は会社を創立した

 当初からグローバル市場を見据えてきた。

 電動車椅子で世界最大の市場である米国を

 ターゲットに商品開発を加速。

 「国内市場でまず成功してから海外に出る」。

 そんな従来のベンチャーの成功方程式を根底

 から変えようとしているのがWHILLだ。


 そして、今年のイノベーターを読み解く最後の

 キーワードが「Japanese Touch(ジャパンーズ・

 タッチ)」。日本らしさを意味する。

 旭酒造社長の桜井博志は、世界的な日本食

 ブームにチャンスを見いだし、「日本らしさ」

 を売りに欧米市場に打って出ている。
 

  (PP.044-045)


選考委員の一人である、一橋大学イノベーション
研究センター教授は、次のように語っています。


 「イノベーションを生む日本の潜在的な力は

 高く、世界で技術力などは評価されている。

 だが、その強みを生かしきれていない」。
 

  (P.045)


さて、最後に、お待ちかねの
「日本イノベーター大賞2014 受賞者」
を発表します。


あなたの予想は当たりましたか?


日本イノベーター大賞2014 受賞者一覧

日本イノベーター大賞2014 受賞者一覧

(『日経ビジネス』 2014.11.24 号 P.045)




「日経ビジネス」は実に面白い雑誌です。
30年近く(今年で29年)読み続けられるのは、
取り扱うテーマと、記者の切り口の斬新さに
あります。


いつも快い刺激を受けます。


最後まで読んでいただき、本当に、
ありがとうございました。


これからも、ブログ「日経ビジネスの特集記事」を
よろしくお願いいたします。




記事を読んで、面白かったら
ポチッとしてください。




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日本の革新者(イノベーター) 2014 世界を動かす12の発想  2014.11.24 <2>



日経ビジネスの特集記事(83)

日本の革新者(イノベーター)
2014
世界を動かす12の発想
2014.11.24



今週の特集記事のテーマは

新興国に迫られ、市場の成熟が進むこの国が蘇(よみがえ)る
には、特に3つのタイプの革新者が欠かせない。
従来ない製品を創る「常識の破壊者」、埋もれている日本の
魅力を世界に発信する「伝道師」、戦後70年を迎え官民共に
老朽化が目立つ組織を再活性化させる「異端児」だ。
多様な分野で活躍する、日本の未来を変える「三種の人財」
12人の今に迫った
 (『日経ビジネス』 2014.11.24 号 P.027)

ということです。


日本の革新者(イノベーター) 2014 世界を動かす12の発想

日本の革新者(イノベーター)
2014
世界を動かす12の発想

(『日経ビジネス』 2014.11.24 号 表紙)



今特集記事では、まず、世界を動かす12人のお名前を
ご紹介します。


「日経ビジネス」は、
常識の破壊者
日本文化の伝道師
組織を変えた異端児
に3分類しました。


常識の破壊者

ホンダ エアクラフト カンパニー社長 藤野道格
WHILL CEO               杉江 理 
東京工業大学教授           西森秀稔
Lalitpur CEO               向田麻衣
シャープ副事業部長          田村友樹
九州工業大学教授           伊藤高廣


日本文化の伝道師

旭酒造社長                桜井博志
マイファーム社長             西辻一真
中川政七商店社長            中川 淳


組織を変えた異端児

近畿大学水産研究所長         宮下 盛
「萩しーまーと」駅長            中澤さかな
AgIC CEO                  清水信哉



最終回にご紹介しますが、この12人の中から、
「日本イノベーター大賞2014」の大賞、優秀賞、
特別賞、そして日経ビジネス創刊45周年記念
特別賞の5人が選出されています。
(但し、日経ビジネス創刊45周年記念特別賞
には、ここにノミネートされた方に特に関わりの
強い方も選ばれています。そのため6人の選出
となりました)


どなたがどの賞に選出されたのか、想像しながら
ご覧ください。


第1回は、「PART1 常識の破壊者」6人のうち、
4人を取り上げます。


第2回は、「PART1 常識の破壊者」の残りの2人
と、「PART2 日本文化の伝道師」3人を取り上げ
ます。


最終回は、「PART3 組織を変えた異端児」3人と、
「日本イノベーター大賞2014」受賞者、「2014年
のイノベーターを読み解く5つのキーワード」を
ご紹介します。



PART1 常識の破壊者

シャープ副事業部長 田村友樹(たむら・ともき)

調理家電のアイデアマン 再建の「種」をまく

シャープ副事業部長 田村友樹

シャープ副事業部長 田村友樹 氏

(『日経ビジネス』 2014.11.24 号 P.034)




 液晶への過剰投資が原因で、経営危機に

 陥ったシャープ。復活に向けた新規事業
 
 の創出にいち早く取り組むのが白物家電

 部門の田村友樹だ。


 提案したのは、市販の茶葉を粉末状に
 
 すりつぶして「粉末茶」を作り出す“お茶

 メーカー”。前代未聞の商品だけに会議

 は紛糾した。

 「お茶は急須で入れるのが日本1000年

 の常識。こんな商品誰が買うんや」「すり

 つぶしたら茶柱が立たんやろ」「お茶だけ

 でなくコーヒーは作れへんのか」――。

 幹部からは容赦ない声が飛ぶ。だが、

 田村は一歩も引かない。ダメ出しをされて

 も、“お茶メーカー”の魅力を企画会議で

 訴え続けた。


 発売時の価格は約2万5000円と高額。

 だが、蓋を開けると今年4月末の発売から

 品薄状態が続き、10月末時点で計画の

 5倍となる10万台以上を売り上げた。


 「社内で有数の頑固者」(本部長の沖津雅浩)

 である田村。その頑固な性格で斬新な商品を

 生み出してきた。


 自分が見込んだ商品のためには、社内の

 前例も次々と否定する。2012年に発売した

 低速ジューサー「ジュースプレッソ」の開発では、

 基幹部品であるスクリューを海外メーカーから

 ライセンス提供を受けることを決めた。


 今年10月からは副事業部長として調理家電

 事業全体を任されるようになり、部下の数は

 10倍以上に膨らんだ。本部長の沖津は

 「頑固で諦めない根性を多くの人に伝えてほしい」

 と期待する。
 

  (P.034)


「頑固さ」は、良い面、悪い面がはっきり表れる
性格だ、と思っています。


市場を考え、顧客の求める商品を作り出そうと
する場合、自分が「これ」がいいという思いが
強ければ強いほど、商品に個性が表れてくる、
と思います。


あれもできる、これもできるという商品は、
一見するといいようでいて、中途半端なものに
なりがちです。特徴がなくなってしまうのです。
機能を特化することで、個性的な商品が出来
上がります。


ただし、独りよがりでは、顧客が求める商品は
出来ません。顧客との対話が欠かせません。




九州工業大学教授 伊藤高廣(いとう・たかひろ)

鉄道少年が紡いだ夢 自力で動く内視鏡へ

九州工業大学教授 伊藤高廣

九州工業大学教授 伊藤高廣 氏

(『日経ビジネス』 2014.11.24 号 P.035)




 産業化で欧米に後れを取り、輸入超過が

 続く日本の医療機器。九州工業大学教授

 の伊藤高廣は、体内で自走する画期的な

 カプセル内視鏡の実用化で、その壁の

 打破を目指している。


 10歳の頃、小遣いをはたき、7000円の

 ドイツ製鉄道模型を買った。精密な金型

 技術からモーター、音や光を出す部品まで、

 技術の粋を尽くした小さな機関車は少年の

 心を虜にした。


 長さ2.4cm、直径1.1cmの銀色に光るカプセル。

 突起も溝もなく、滑らかな表面をしている。

 およそ駆動物には見えないこの物体が、

 外から無線で信号を送ると、管の中で前進を

 始める。

 内部のコイルを磁力で振動させ、体内を傷つけ

 ずに前後に自走するカプセル型ロボット。

 九州工業大学の伊藤高廣が10年かけて開発

 した技術は、現在の医療診断が抱える課題を

 解決する潜在力を持つ。


 カプセル内視鏡は、数年前から医療現場で普及

 が進む。しかし現状は、飲み込んでから体外に

 自然排出されるまで、8時間以上かかる。

 その間の7万枚もの画像を見て必要な部位を

 探し出す作業は、医師に多大な負担を強いている。

 前後に動き、狙った部位に自ら移動できる伊藤の

 カプセル型ロボットならこの手間は解消される。


 鉄道会社への就職を諦めた(1983年当時、

 就職を希望していた旧・国鉄が経営不振に陥り、

 新卒採用をストップしたため 註:藤巻隆)伊藤は

 NTTで18年間、ロボットやセンサーの研究開発に

 取り組んだ。


 巨大な鉄道と豆粒大の内視鏡。大きさこそ違う

 ものの、「前に進む能力」が性能の決め手になる点

 では共通する。

 「鉄道模型で遊んだ経験が、今もちょっとした試作

 や実験に生きている」と話す。
 

  (P.035)


伊藤さんが親指と人差し指でつまんでいるのが、
カプセル型ロボットです。本当に小さいですね!
これが体内に入って病に冒されている部位を撮影
してくるのです。


しかも、前後に動きますから、外部から調整しながら、
同じ箇所を繰り返し撮影することも可能です。


「将来は病変組織を採取したり、薬を投与したりする
ことも可能」(P.035)ということですから、期待は膨らみ
ます。治療に役立つといいですね。


鉄道模型とカプセル型ロボット。面白い組み合わせ
ですが、少年の夢が一歩前進したのです。


アポロ11号のアーム・ストロング船長が、
「これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、
人類にとっては偉大な飛躍である
(That's one small step for [a] man, one giant leap for
mankind.)」と述べましたが、
カプセル型ロボットも同様なことかもしれません。





PART2 日本文化の伝道師


旭酒造社長 桜井博志(さくらい・ひろし)

倒産寸前の酒蔵を再建 日本酒を海外に売り込む

旭酒造社長 桜井博志

旭酒造社長 桜井博志 氏

(『日経ビジネス』 2014.11.24 号 P.036)




 国内のみならず海外でも高い評価を受ける

 純米大吟醸「獺祭(だっさい)」。海外での

 日本食ブームの牽引役としての期待も高い。


 今年4月末、首相の安倍晋三は来日した

 米大統領バラク・オバマに“ある日本酒”を

 プレゼントした。

 「磨きその先へ」。山口県岩国市の山里に

 ある旭酒造が製造する「獺祭」の最高品種

 だ。価格は約3万円だが飛ぶように売れ、

 東京都内では「幻の日本酒」として品薄状態

 が続く。人気は国内にとどまらず、海外でも

 ワイン通の舌を魅了している。


 桜井は、これまでの日本酒業界を変革させた

 人物といえる。

 その一つが、日本酒の分類で最高級ランクの

 純米大吟醸酒に特化する戦略だ。日本酒向け

 の最高品種「山田錦」を最大77%も磨いた芯の

 部分だけを使い、ほかの日本酒にはないフルー

 ティーな香りと味を生み出した。


 桜井が旭酒造に復帰したのは84年、34歳の時。

 父が他界したことで社長を継ぐことになったからだ。

 当時の旭酒造は年率15%の減収が続く状況。

 
 「大手と同じことをやっていても潰れてしまう」。

 追い詰められた桜井は発想を転換。純米大吟醸の

 製造に特化し、数年の歳月をかけ納得のいく酒を

 造り上げた。こうして生まれたのが獺祭だ。


 3度、窮地に立った桜井。「自分たちだけで獺祭を

 造るしか道はなかった」。社員一丸となって試行

 錯誤を繰り返した結果確立されたのが、データ

 管理に基づく現在の製造スタイルだ。


 2015年にはパリの凱旋門近くに、日本料理店を

 併設した直営店を出す計画だ。
 

  (PP.036-038)


例によりまして、私はお酒に関してはほとんど
知識がありません。アルコール類にあまり興味が
ないからです。


ですが、以前取り上げた芋焼酎「黒霧島」や、
今回登場した、純米大吟醸「獺祭(だっさい)」
は強烈な印象を残しました。


今後も嗜むことはないと思いますが、少なくとも
銘柄だけは覚えました(笑)。


霧島酒造も旭酒造も同様ですが、経営危機に
瀕し、どうしたら生き残ることができるか必死に
考え、実践した結果、全国的に知られる「名酒」
を世に送り出すことが出来ました。


キーワードは「高級な銘柄に特化」です。
ランチェスター戦略が教えるところでは、
小企業が大企業に勝つための一つの方法は、
徹底的に商品の質やサービスを絞り込み、
磨き上げ、深堀りするという、ニッチ戦略を
推し進めることです。


それが実現できなければ、破綻するだけです。




マイファーム社長 西辻一真(にしつじ・かずま)

荒れた田畑を再生 農業経営実践の場に

マイファーム社長 西辻一真

マイファーム社長 西辻一真 氏

(『日経ビジネス』 2014.11.24 号 P.038)




 農業ベンチャー「マイファーム」(京都市)を展開。

 手入れが行き届かず荒れた「耕作放棄地」を

 貸農園として再生し、就農を希望する都市住民

 を支援している。


 西辻がマイファームを設立したのは2007年。

 農家などから広さ1000㎡以上の土地を提供

 してもらい、就農したい都市住民などに小分け

 して貸し出す。

 賃料は15㎡で月5000円前後。農園の借り手に

 種まきから栽培、収穫、さらには販路開拓まで

 「農業のバリューチェーン」を一体で運営してもら

 うことで農業に長けた人材を育て、耕作放棄地の

 再生を目指す。


 「新規就農者を増やし、彼らが十分な収益を上げる

 ようにバックアップする。日本の農業を再生するには、

 それしかない」と西辻。

 西辻は日本の農業を守るため、一つまた一つ、

 耕作放棄地に息を吹き込み続ける。 
 

  (P.038)


「耕作放棄地」はどのくらいあると想像できますか?
私は全く想像できませんでした。


結果は広大でした。
「全国では滋賀県ほどの広さの耕作放棄地が手つかず
のままだ」(P.038)というのが実態です。


専業農家は少なく、平日はサラリーマンをやりながら、
週末に農業に従事する兼業農家が多いのです。


長年続けてきた「減反政策」から、国は突然方向転換
しました。しかし、田畑は荒れ、再生は容易ではあり
ません。


農家は田畑を持ち続ければ、国から補助金が貰えます
からそのままにしています。


そうした「耕作放棄地」を提供してもらい、農業再生を
実践しているのが、西辻さんたちが推進している
「マイファーム」です。


ただ、危惧されることは、都市住民が「農業をするのが
流行」だからという軽い気持ちで携わると、失敗すると
思います。「趣味の園芸」とは違い、収益を確保する
ことは並大抵な気持ちでは続きません。


「趣味」ではなく、「事業」だからです。




中川政七商店社長 中川 淳(なかがわ・じゅん)

工芸品の「ユニクロ」 地域活性の起爆剤に

中川政七商店社長 中川 淳

中川政七商店社長 中川 淳 氏

(『日経ビジネス』 2014.11.24 号 P.039)




 1716(享保元)年に創業した麻織物問屋、

 中川政七商店(奈良市)の13代目。

 「ユニクロ」などカジュアル衣料ではなじみ

 深いSPA(製造小売り)ビジネスモデルを

 伝統工芸品で初めて本格展開した。


 東京・丸の内の旧東京中央郵便局を再開発

 した商業施設「KITTE(キッテ)」。4階に構える

 中川政七商店は東京の新名所になりつつある。

 若いカップルや老夫婦でにぎわうほか、外国人

 観光客も増えてきた。


 日本には、地産地消で作られた伝統工芸品が

 たくさんある。だが事業者の多くは零細で自前の

 販路を持たない。中川はそんな事業者と協力し、

 開発から製造、販売まで手掛ける。

 いわば伝統工芸品のSPAだ。


 「地方には、もうほんの少し経営力があれば、

 息を吹き返す魅力的な企業がまだまだある。

 彼らを支援することで、地方再生の一助になり

 たい」。こう願う中川に、ホテル運営大手、

 星野リゾート(長野県軽井沢町)代表の星野佳路

 も「中小企業こそ、企業の持続性にはブランドが

 欠かせない」と応える。
 

  (P.039)


PART2 日本文化の伝道師の3人に共通する
キーワードは、「再生」です。


旭酒造は、このままでは、経営破綻するのは時間の
問題でした。そこで戦略を転換し、日本酒の最高
ランクの純米大吟醸を製造することに特化し、
「再生」を図り、実現させました。
その中心人物は、桜井博志さんでした。


マイファームは、荒れた田畑を「再生」させ、農業その
ものの「再生」を目指しています。西辻一真さんが、
その中心人物です。


中川政七商店は、地方の零細企業を「再生」させる
ため、伝統工芸品のSPAを強力に進めています。
ひいては地方「再生」への起爆剤にもなりうるもの
です。


中川さんは、京都大学を卒業後、富士通に勤務しま
したが、大企業では自由に仕事ができないもどかしさ
を感じ、2年で退社し、2002年に家業を継いだそう
です。


継いで分かったことは、「このままでは立ち行かなく
なる」(P.039)と実感したことでした。


そこで、中川さんが決心したことは、「マーケティングの
本を読みあさりながら出した結論が、オリジナル商品の
開発と直営店舗を軸にしたブランドの展開」でした。




最終回は、「PART3 組織を変えた異端児」ほかを
ご紹介します。






記事を読んで、面白かったら
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日本の革新者(イノベーター) 2014 世界を動かす12の発想  2014.11.24 <1>



日経ビジネスの特集記事(83)

日本の革新者(イノベーター)
2014
世界を動かす12の発想
2014.11.24



今週の特集記事のテーマは

新興国に迫られ、市場の成熟が進むこの国が蘇(よみがえ)る
には、特に3つのタイプの革新者が欠かせない。
従来ない製品を創る「常識の破壊者」、埋もれている日本の
魅力を世界に発信する「伝道師」、戦後70年を迎え官民共に
老朽化が目立つ組織を再活性化させる「異端児」だ。
多様な分野で活躍する、日本の未来を変える「三種の人財」
12人の今に迫った
 (『日経ビジネス』 2014.11.24 号 P.027)

ということです。


日本の革新者(イノベーター) 2014 世界を動かす12の発想

日本の革新者(イノベーター)
2014
世界を動かす12の発想

(『日経ビジネス』 2014.11.24 号 表紙)



今特集記事では、まず、世界を動かす12人のお名前を
ご紹介します。


「日経ビジネス」は、
常識の破壊者
日本文化の伝道師
組織を変えた異端児
に3分類しました。


常識の破壊者

ホンダ エアクラフト カンパニー社長 藤野道格
WHILL CEO               杉江 理 
東京工業大学教授           西森秀稔
Lalitpur CEO               向田麻衣
シャープ副事業部長          田村友樹
九州工業大学教授           伊藤高廣


日本文化の伝道師

旭酒造社長                桜井博志
マイファーム社長             西辻一真
中川政七商店社長            中川 淳


組織を変えた異端児

近畿大学水産研究所長         宮下 盛
「萩しーまーと」駅長            中澤さかな
AgIC CEO                  清水信哉



最終回にご紹介しますが、この12人の中から、
「日本イノベーター大賞2014」の大賞、優秀賞、
特別賞、そして日経ビジネス創刊45周年記念
特別賞の5人が選出されています。
(但し、日経ビジネス創刊45周年記念特別賞
には、ここにノミネートされた方に特に関わりの
強い方も選ばれています。そのため6人の選出
となりました)


どなたがどの賞に選出されたのか、想像しながら
ご覧ください。


第1回は、「PART1 常識の破壊者」6人のうち、
4人を取り上げます。


第2回は、「PART1 常識の破壊者」の残りの2人
と、「PART2 日本文化の伝道師」3人を取り上げ
ます。


最終回は、「PART3 組織を変えた異端児」3人と、
「日本イノベーター大賞2014」受賞者、「2014年
のイノベーターを読み解く5つのキーワード」を
ご紹介します。



PART1 常識の破壊者

ホンダ エアクラフト カンパニー社長 藤野道格(ふじの・みちまさ)

ホンダジェット離陸 不可能成し遂げた戦略家

ホンダ エアクラフト カンパニー社長 藤野道格

ホンダ エアクラフト カンパニー社長 藤野道格 氏

(『日経ビジネス』 2014.11.24 号 P.028)




 2015年、新しい航空機メーカーが誕生する。

 7人乗りの「ホンダジェット」を製造する

 ホンダ エアクラフト カンパニー(米ノース

 カロライナ州)だ。


 東京大学工学部航空学科を卒業。

 根っからの飛行機好きだと誤解されがち

 だが、藤野が航空学科を選んだのは

 「自動車学科がなかったから」。

 新しいコンセプトを考える仕事がしたくて、

 若いうちから大きなプロジェクトを任せて

 もらえそうなホンダの門を叩いた。


 無論、ずっと順風満帆だったわけではない。

 直近では2008年秋のリーマンショック。

 ホンダの業績が低迷し、F1と同様、ホンダ

 ジェットからの撤退もささやかれた。


 脚部を供給する住友精密工業専務の田岡

 良夫は「いろいろな航空機メーカーと取引

 しているが、経営トップであそこまで全てを

 詳細に把握している人はいない」と語る。


 取材中、終始冷静に話していた藤野が、

 ふいに素顔を見せた一瞬があった。

 試験用のホンダジェットが3台並ぶ姿を見つけ

 た時だ。「たくさん機体があるとうれしくなっ

 ちゃって」。少年のように笑う藤野の頭には

 もう、ホンダジェットが続々と量産されて飛び

 立っていく姿が描かれているようだった。 
 

  (PP.028-030)


二輪(バイク)からスタートしたホンダが、
四輪(自動車)に進出し、モータースポーツの
最高峰F1を、ブラジルの英雄、F1レーサー、
アイルトン・セナとともに制覇した日々が
ありました。


ホンダは地上を走行するだけでは飽きたらず、
遂に空に羽ばたくプライベートジェットを製造
する会社の一つとなりました。


藤野さんの小学校時代のエピソードが掲載されて
います。


 小学校の先生が課題で出した、ゴム動力の

 ミニカー作り。クラスメートを驚かそうと、

 ベアリング(軸受け)からタイヤまで工夫を重ねて、

 コンテストに臨んだ。圧倒的なスピードで走る少年

 のクルマを前に、教室は興奮に包まれる。

 「人は想像もしないモノを作ると、皆が喜んでくれ

 るんだ」。翌年の卒業文集には迷わずこう書いた。

 「設計技師になりたい」。
 

  (P.028)


藤野さんの夢はまだ実現したわけではなく、
夢の途中で、夢ははるか先まで続いているのかも
しれません。




WHILL CEO 杉江 理(すぎえ・さとし)

若き職人が作るワクワクする車椅子

WHILL CEO 杉江 理

WHILL CEO 杉江 理 氏(写真右)

(『日経ビジネス』 2014.11.24 号 PP.030-031)




 今年9月、電動車椅子の常識を覆す乗り物が

 日米で発売された。斬新なデザインと砂利道

 も走れる機動性が売りの「WHILL(ウィル)Type-A」

 だ。2014年度には250台の販売を見込み、

 来年には台湾での量産も始まる。


 2012年5月、杉江はCDO(最高開発責任者)の

 内藤淳平やCTO(最高技術責任者)の福岡宗明

 と共同で、株式会社WHILLを設立した。


 「これが本当に作れたらすごい」という思いと

 「やる」という覚悟だけは、誰に聞かれても

 「あります」と自信をもって答えられた。


 杉江は「1次情報が好きで、リアルな

 経験しか信じない」と自分の生き方を語る。


 自分で見て聞いたことだけを信じるのは、

 今も変わらない。自らシリコンバレーを

 WHILLで走り、車椅子の利用者にどんどん

 声をかけて話を聞く。

 前後に動く座席や可動式のハンドルはそんな

 調査を重ねて加えた機能だ。


 内藤は「杉江の一番すごい能力は絶対に

 諦めないこと」と言う。そして、福岡と顔を

 見合わせながら「俺らもだけどな」と付け加える。 
 

  (PP.030-031)


「1次情報が好き」というのは、いいですね。
2次情報や3次情報は脚色されたり、内容を
変更されているため、実態からかけ離れて
いることが多いからです。


自分の五感を信じ、現場で、現物を、現実の
ものとして(三現主義)見て、聞いて、匂いを
かいで、味わって、触れて感じ取ることは
とても大切なことだ、と思います。


地位が上に行くに従い、自らそうした体験を
しなくなる傾向が強まります。下から上がって
くる報告を見聞きするだけになると、非常に
危険です。


普段から三現主義で五感を鍛えておくと、
部下の報告に違和感を感じることができ、
正しい判断ができます。


逆に言いますと、その感覚が鈍ってきたと
感じた時が、引退時期となります。
本人は認めたくないでしょうが。




東京工業大学教授 西森秀稔(にしもり・ひでとし)

夢のコンピューター引き寄せた理論

東京工業大学教授 西森秀稔

東京工業大学教授 西森秀稔 氏

(『日経ビジネス』 2014.11.24 号 P.032)




 実現は早くて50年後と考えられてきた

 量子コンピューターの実用化が始まった。

 原動力は、東京工業大学教授の西森秀稔

 が考案した一つの理論。「役に立たない」

 はずの基礎研究は、社会を一変させる注目

 技術に飛躍した。


 9月、米グーグルがまた一つ「野望」を明らか

 にした。「量子コンピューター」のチップ開発に

 乗り出すというのだ。同社は昨年、カナダの

 D-Waveシステムズが開発した1台10億円と

 言われる世界初の量子コンピューターを購入。

 社内でその実力を見極めてきたが、今回ついに

 自ら開発を始める。

 1980年代に提唱された量子コンピューターは、

 実現に50年かかるとされた。

 従来検討されてきた量子コンピューターとは全く

 違う原理で現実となった。基盤にあるのは東京

 工業大学教授、西森秀稔の考案した「量子アニー

 リング理論」だ。


 D-Waveの量子コンピューターは、「組み合わせ

 最適化問題」の計算を高速化するためのマシン

 だ。

 実は最適化は画像認識や自然言語処理、

 医療診断など今や社会に欠かせない技術。

 調べる数の組み合わせが増えると現在のスパコン

 では手に負えないが、量子コンピューターなら

 瞬時に解ける可能性がある。

 検索や地図などを本業にするグーグルにとって、

 看過できない技術なのだ。

 「西森さんは紙と鉛筆で解ける問題にしか興味が

 ない。世俗離れしていたが、それが基礎研究の

 力強さかもしれない」。かつて西森の研究室に

 在籍した京都大学大学院助教の大関真之は語る。


 当初は米国の研究者のアイデアを基にしたマシン

 と思われてきたが、やがてそのルーツが西森の

 理論にあることが明らかになった。
 

  (P.032)


量子コンピューターのことはよく分かりませんが、
「現在ののスパコンでは手に負えないが、
量子コンピューターなら瞬時に解ける可能性が
ある」ということですから、素晴らしい技術だ、
と思いますね。


しかも、その基盤となったのは、日本人の学者の
西森秀稔・東京工業大学教授であったということは、
日本人として大いに誇れることですね。


「ITは米国」という誇りを持つ米国人でも、こればかり
は認めざるをえないでしょう。


さらに、すごいことは「紙と鉛筆で解ける問題しか
興味がない」というところです。コンピューターに
頼って自分の理論を確かめるのではないことです。




Lalitpur CEO 向田麻衣(むかいだ・まい)

モノより心の豊かさを 新世代の社会起業家

Lalitpur CEO 向田麻衣

Lalitpur CEO 向田麻衣 氏

(『日経ビジネス』 2014.11.24 号 P.033)




 社会問題に切り込む社会起業家を目指す

 若者が増えているが、多くはあくまで「モノ」

 による支援。それに対し、向田麻衣は新興国

 で精神的被害に苦しむ女性に対して「心の

 豊かさ」を支援する。


 2013年に設立したベンチャー企業、Lalitpur

 (ラリトプール)でCEOを務める。取り扱うのは

 ネパール産のハーブを使った化粧品だ。


 一見、華やかな世界に身を置くように見えるが、

 真の目的はネパールなど新興国で精神的被害に

 苦しむ女性たちの支援。ラリトプールは、ネパール

 で人身売買の被害に遭った女性たちの雇用創出

 のために設立された。

 狙いは、それだけではない。向田はネパールの被害

 女性たちに化粧による喜びを伝える心のケアも実施

 している。拠点となるのが、5年前の2009年に設立

 した一般社団法人、Coffret Project(コフレ・プロジェクト)

 だ。


 トルコ滞在中に、夫からドメスティックバイオレンス(DV)

 被害に苦しむ女性たちから聞いた「化粧をしてみたい」

 という言葉が、コフレ・プロジェクト設立につながった。


 向田は「子供のように素直でとにかく行動が速い」

 (ラリトプールを支援する外資系コンサルティング会社

 勤務の柳沢和正)。


 化粧品ビジネスの米国展開も視察でニューヨークに

 滞在した3週間で即決。「スピード感が日本と全然違う。

 米国で勝負するしかないと思った」(向田)。
 

  (P.031)


向田さんは、三断跳び(三段跳びではありません)の
実践者です。三断跳びとは私の造語です。


判断・決断・断行で三断です。ホップ・ステップ・ジャンプ
で最後のジャンプで決まります。


判断・決断までは頭の中でのことです。断行は実行する
ことです。判断・決断まではしても、最後の断行できない
ケースはよくありますね。


向田さんは断行までのスピードが速い、ということが
素晴らしい、と思います。考えることはできても、実行
できないことは多々あります。向田さんは余計なことを
考えすぎずに実行に移すという、日本女性と言うよりも、
日本人離れした行動力の持ち主のようです。


これから難題が次々に発生するかもしれませんが、
乗り越えていってほしい、と思います。




次回は、「PART1 常識の破壊者」の残りの2人
と、「PART2 日本文化の伝道師」3人の横顔を
ご紹介します。






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プロフィール

藤巻隆

Author:藤巻隆
管理人の藤巻隆です。

以前、ジュゲムブログで、
同タイトルの
「日経ビジネスの特集記事」
を書いていました。

しかし、使い勝手があまり
よくなかったので、
FC2ブログで新たにスタート
することにしました。

現在(2013.10.16)、ブログの
引越を行っているところです。

FC2ブログでは、2013.10.14号
が最初のブログということに
なります。


2013年10月16日記す。

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