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2015 株主騒会 ROEで社長失格になる日 2015.06.22 <3>







日経ビジネスの特集記事(112)

2015 株主騒会
ROEで社長失格になる日
2015.06.22




テーマ

今週の特集記事のテーマは

緊張の面持ちで居並ぶ経営陣に、対峙する株主。
年に1度の株主総会シーズンがやってきた。
今年、その光景がガラリと変わる。
株主はROE(自己資本利益率)や配当などの還元策に
厳しく目を光らせ、満足しなければ容赦なく「社長失格」
の票を投じる。
アベノミクスが演出するこの株主“騒”会を何とか乗り越えようと、
新たな経営計画やROEの目標を打ち出す企業が続出している。
押し寄せる大波にのみ込まれるか、株主との対話を成長に
つなげるか。多くの日本企業がその岐路に立つ。

 (『日経ビジネス』 2015.06.22 号 P.027)

ということです。







2015 株主騒会
ROEで社長失格になる日

(『日経ビジネス』 2015.06.22 号 表紙)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.22




今特集のスタートページ

今特集のスタートページ

(『日経ビジネス』 2015.06.22号 PP.026-027)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.22







第1回は、
「PART.1 ROE目標、中期経営計画、株主還元・・・
 企業を揺さぶる 『普通の株主』」
を取り上げました。


第2回は、
「PART.2 アベノミクスが舞台回し
 踊り出す投資家 沸き立つ市場」
「PART.3 本誌独自ROE“分解”ランキング
 持続力を見極めよ」
を取り上げました。


最終回は、
「PART4 圧力を活力に変える
 脱・後ろ向きROE 解は1つじゃない」
をご紹介します。




今特集のキーワードは次の5つです。

キーワード

 ROE 
 持続力 
 株主還元 
 脱・ROE 
 自律 




6月は、2015年3月期決算企業の株主総会が集中する月です。
今年の株主総会は、例年と異なり、「騒動」のある株主総会
ということで、『日経ビジネス』特集班は、株主「騒」会と名付け
ました。


この件について、飯田展久編集長は、「編集長の視点」に
次のように書いています。


 今年は多くの企業で想定問答集の中身に

 変化が見られるのではないでしょうか。

 一般株主の間にも株主還元策に異常な関心が

 集まっているためです。

 ROE(自己資本利益率)の向上に目を光らせ、

 ROEの低い企業には取締役の選任案に「ノー」を

 突き付ける動きも出始めています。

 現実に否決されることはまれですが、否決されない

 案にあらかじめ作り直す例もあるようです。

 こうした状況を本誌は「株主騒会」と名付けてみました。

 総会をめぐる劇的な変化は一種の騒動のようだと見た

 からです。
 

  (P.003)



株主総会と言えば、昔は総会屋対策が重要な課題でした。
決算内容うんぬんよりも、総会屋をどう黙らせるかの方が、
大事だったのです。お金を握らせるという違法行為が公然
と行われてきました。


その後、総会屋の数が減少し、代わって増えてきたのが、
外国人投資家や外資系ファンドです。彼らは株式を買い
増し、株主の要求を経営者に突きつけます。


内部留保が多い企業には、設備投資や株主還元を強く
要求します。株主還元とは、配当金の割増です。
企業価値を高め、株価を上昇させる施策を採ることも、
当然要求します。


最近では、外資の「モノ言う株主」だけでなく、一般投資家
(今まではモノ言わぬ投資家と呼ばれてきました)が、
議決権を行使し、代表取締役の再任に“No!”を突き付ける
ケースが出てきたそうです。


ステークホルダー(利害関係者)には、社員、取引先、得意先、
株主、社会などがありますが、この中で株主の発言力がさらに
強くなってきていることが、今特集で再確認できます。





では、本題に入りましょう!


 PART4 圧力を活力に変える 
 脱・後ろ向きROE 解は1つじゃない 

ROEは経営指標の一つにすぎません。
ですから、他にも多くの経営指標があります。
例えば、EBITDAとかEPS(後述)などがそうです。


経営において何を重視するかによって、
用いる経営指標も異なります。


さらに言えば、ステークホルダー(利害関係者)は
社員、株主、得意先、取引先、社会などがありますが、
株主に力点を置く企業が日本でも多くなってきました。


欧米では、ステークホルダーと言えば株主を指しますが、
今までの日本は、株主はステークホルダーの一つという
捉え方がされてきました。


株式のグローバル化が進み、外国人持株比率が50%を
超える日本企業も珍しくなくなってきました。


必然的に、「モノ言う株主」の要求に応えることが欠かせなく
なりました。設備投資や配当金を支払う、株主還元の要求
が高まったのです。内部留保を厚くして「お金を遊ばせて
おくな!」ということです。


企業が株主の要求に応えていかなくてはならない時代に
なりました。




株主目線で会社を作り直し


 コニカミノルタのケース 


 コニカミノルタが5月に発表した中計には大手企業

 としては珍しい内容が盛り込まれていた。

 これまで見たようにROEは収益性(売上高利益率)と

 効率性(総資産回転率)、財務レバレッジ(総資産/

 自己資本)の3要素を掛け合わせてはじき出される。

 コニカミノルタはこの3要素すべてに数値目標を掲げ、

 具体策を盛り込んでいたからだ。
 

  (P.038)



具体的には、下の表をご覧ください。

3つの方向から経営の中身を変えていく<br />・コニカミノルタのROE改革の想定図

3つの方向から経営の中身を変えていく
・コニカミノルタのROE改革の想定図

(『日経ビジネス』 2015.06.22号 P.038)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.22



「はじめにROEの数値ありき」になっている感は
否めません。
数字をいじくりまわしているだけではないのか、
という印象が拭えません。


前回出てきましたが、もっとシンプルに
「ROEを上げる王道は利益率と売上高を上げること」
の方が、社員にも分かりやすいのではないか、
と思いました。






脱・ROEで事業に落とし込む


 オムロンのケース 


 オムロンは2014年10月、約100億円を投じてブラジルの

 医療機器大手NS社を買収した。ぜんそくなど呼吸器系

 疾患を治療する「吸入器」のブラジル最大手。

 買収でオムロンはオランダのフィリップスを抜き、

 吸入器の世界最大手に躍り出た。ぜんそく患者だけでなく、

 大気汚染が深刻化する新興国の需要も取り込む方針だ。

 このM&Aを裏側で支えたのがROIC(投下資本利益率)と

 呼ばれる経営指標だ。

 ROICは自己資本だけでなく、他人資本(有利子負債)も

 加えた「投下資本」全体でどれだけ効率的に稼いだかを測る

 指標だ。一般的には税引き後の営業利益を投下資本で

 割って算出する。


 オムロンは横軸にROIC、縦軸に売上高成長率を置いた

 「ポートフォリオマネジメントカテゴリ」を経営判断に活用して

 いる。 
 

  (PP.040-041)

 *ROIC=Return On Invested Capital


財務に強く、社員にも説得できる企業であれば、
ROICを活用することができるでしょう。


ただし、一般社員が、ROICの活用でM&Aを実現でき、
成果が上がった、と実感できるかは疑問符がつきます。




では、海外の有力企業はROEを活用しているのでしょうか?
それとも別の指標を用いているのでしょうか?
あるいはまったく指標を用いていないのでしょうか?



海外の有力企業30社のデータがあります。


ROEを目標に掲げる企業はゼロ<br />・海外有力企業の経営目標

ROEを目標に掲げる企業はゼロ
・海外有力企業の経営目標

(『日経ビジネス』 2015.06.22号 P.042)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.22





率直に言いますと、意外でした。
ROEを重視している企業が大半を占める、
と思っていました。


数値目標がない企業が30社中15社、
半数あったことは驚きでした。


さらに言えば、数値目標がある15社全てがROE以外
を使っているという事実は、ROEは重要な指標では
ない、ということなのでしょうか?


少なくとも、データ上はそういうことになります。


数値目標がない企業15社の中には、アップル、インテル、
コカ・コーラが入っています。


コカ・コーラと言えば、世界一の投資家、ウォーレン・
バフェット氏が大株主であることは広く知られています。
バフェット氏が設定したバークシャー・ハサウェイという
ファンドにコカ・コーラを組み込んでいます。


バフェット氏の保有株式銘柄を見てみましょう。
参考になると思いますよ。


残念ながら、日本株は組み入れられていません。
コカ・コーラの組み入れ比率は15.13%で、
ウェルズ・ファーゴ(銀行)に次いで2位です。


ウェルズ・ファーゴは、バフェット氏の一番のお気に入り
です。









 


バフェット氏はROEについてどう考えているのでしょうか?


早速、調べてみました。
世界一の投資家から見て、ROEは重要なのかどうか?


バフェット氏は、徹底的に調査して割安株を見つけると、
投資し、数十年というスパンで長期保有するという運用
をしています。


結論から先にお話ししますと、バフェット氏はROEを重視
しています。ROEの数値が15%以上を投資銘柄として
考慮しています。


 4 - ROEは、継続的に高いか?

 株主資本のROEの平均は、アメリカの場合、12%とされています。

 12%以下は、平均以下で12%以上は、平均以上という事になります。

 バフェットが求めているのは、ROE15%以上との事です。

 例えば、バフェットがコカ・コーラを購入した時のROEは、33%で、

 当時の過去5年間の平均ROEは、25%と基準を満たしていました。

 また、フィリップ・モリスの過去10年間の平均ROEは、30.5%

 (「バフェットロジー」は、1997年出版)でした。

 バフェットが、ROEに継続性を求めるのは、高いROEを継続的に

 維持できるという事は、既存経営陣が事業から利益を出す事が

 できるという事に加え、内部留保した利益を効果的に再投資

 できてさらなる利益を生み出している証拠だという風に考えている

 からだそうです。
 

  (Everything is Learningブログ:海外投資、経済ニュース、
  金融情報など
から)





ここで、ROEについてどう考えるか、3人の経営者の意見を
聞いてみましょう。


『日経ビジネス』は「卒業派」「慎重派」「否定派」に分類しました。


 ROE 私はこう考える 

卒業派

10%の上は目指さない

アサヒビールホールディングス 泉谷 直木 社長兼CEO

アサヒビールホールディングス 泉谷 直木 社長兼CEO

(『日経ビジネス』 2015.06.22号 P.040)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.22



 経営指標にROEを取り入れた理由は2つある。

 一つは国内事業の強化。

 もう一つは、海外での新たな成長エンジンづくりだ。


 事業の成長と企業価値の向上を同時に追求する

 のにROEは有益だった。

 だがこれからは違う。ROEが10%を超えて15%に

 なればさらに良いとは言えず、我々は10%の上は

 目指さない。資本政策ばかりに注力し、本業の業績が

 下がるのは本末転倒だからだ。


 2016年度からの次期中計では、一定の基準として

 ROEを引き続き重視しながら、新たにEBITDA(利払い・

 税金・償却前利益)の採用を検討している。

 結果を数字として示すのではなく、どの事業をどう伸ばし

 ていくかというプロセスを投資家に開示する。

 「ファンダメンタルのROE」から「モメンタムの成長率」へ

 比重を移す。 
 

  (P.040)

 *EBITDA=Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation
         and Amortization  




慎重派

偏重は企業を弱くする

JT 新貝 康司 副社長

JT 新貝 康司 副社長

(『日経ビジネス』 2015.06.22号 P.041)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.22



 日本たばこ産業(JT)のようにグローバル展開している

 企業が資本コストを上回るそれなりに高いROEを目指す

 のは当然だ。


 企業は利益を拡大再生産に回し、利益成長を目指す。

 マーケットは企業に資本を供給するのが本来の姿だ。

 しかし今、企業は投資家の方ばかりを向きがちで、

 ROEが高ければ高いほど良いという風潮があり、

 その他のステークホルダーそっちのけになっていないか。

 マーケットはどちらかと言えば、過度な配当や自社株買い

 を要求して資本を吸い上げようとしていないか。
 

  (P.040)







否定派

分りにくく、使いにくい

カルビー 松本 晃 会長兼CEO

カルビー 松本 晃 会長兼CEO

(『日経ビジネス』 2015.06.22号 P.041)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.22



 カルビーの会長兼CEO(最高経営責任者)になる前は

 米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)に15年勤務し、

 続いて日本法人の社長を9年間務めた。

 J&J社内で経営指標にROEを使っているという話は

 聞いたことがないし、自分も使うことはない。

 ROEという指標の大きな問題はその分かりにくさにある。

 ROEは「売上高利益率×総資産回転率×財務レバレッジ」

 で計算する。

 これを社員に理解してもらって、それぞれの要素の向上を

 図るというのは簡単ではないと思う。

 そんな難しい指標であるROEより、EPS(1株当たり純利益)

 の方が社員には説明しやすい。


 経営で大事なのは物事をシンプルにすること。

 社員には分かりやすくすることだ。
 

  (P.041)

 *EPS=Earnings Per Share



三人三様ですが、3人の経営者それぞれの言い分は
筋が通っています。


バフェット氏は、ROE15%以上の実績を出し続ける企業
が投資対象の一つの基準を満たすということと、
照らし合わせると、日本企業がバフェット氏のファンドに
組み入れられる可能性は、現時点では低いと言わざるを
得ません。


バフェット氏も高齢になってきましたので(1930年8月30日
生まれ (84歳))、日本株を精査する余裕はないかもしれ
ません。




株主との向き合い方、自分本位で

IR(投資家への広報活動)を担当する部署は、
上場企業であればどこにでもあります。


ただし、それだけで株主と企業が相対して話し
合っているとは言えません。一方通行だからです。


良い情報は使えやすいですが、悪い情報(売上が
激減する、M&Aが失敗した、あるいはTOB<敵対的
買収>を仕掛けられているといったケース)は、
現時点で詳細が把握できていないという理由で、
IRを通じて、投資家に伝えない(伝えられない)ことも
あり得ます。


そこで、株主とどう向き合うのか、というのがここでの
テーマです。



 トヨタ自動車のケース 


 トヨタ自動車も株主との新たな向き合い方を模索している。

 純利益が初めて2兆円を突破した2015年3月期のROEは

 13.9%。ただ、あくまで「ROEは経営を見る上での数ある

 指標の一つ」(小平信因副社長)と位置付ける。

 トヨタはROEどころか、売上高や利益の将来目標も公表

 していない。その一方で、従来とは違う株主を自ら創ろうと

 している。

 6月16日の総会で提案した「AA型種類株式」は、発行済み

 株式数の約5%を上限とし、普通株より2割以上高く株価を

 設定した議決権付きの株式。取得から5年後以降に普通株

 への転換、または発行価格でトヨタに買い取りを求めること

 が可能で、元本保証の意味合いも持つ。

 資金の用途を中長期の研究開発に限定し、今後5年をメドに

 約1兆5000億円を調達したい考えだ。


 トヨタは数年前から株主との関係について議論を重ねてきた。

 現在の株主数は約61万人。

 トヨタ株に投資する目的は多種多様で、どこに何を語りかける

 べきかを測りかねていた。自動車産業の構造転換が起こり

 つつある中、対話の相手としての株主を「見える化」する試み

 と言える。
 

  (P.043)



株主騒会における重要なテーマとなり得るROEについて、
特集で取り上げてきたわけですが、
企業がROEをどう捉えるかという側面と、投資家が考える
ROEには乖離があると思います。


目標値に明らかなズレがありますし、ROEは必要ではない
と考える経営者もいます。


ROEの運用法もさることながら、利益率が低い企業には
魅力がないことは事実です。


利益を伴う売上をどのように向上させていくかは、
どの企業にも共通する課題です。


企業の持続可能性は売上と利益にあることは間違い
ありません。もちろん、「勘定合って銭足らず」では
黒字倒産します。


豊富なキャッシュフローは、企業が存続するための
最低限の条件です。


『日経ビジネス』は今特集を総括して、次のように
述べています。


 ROEなどをツールとして、企業は株主と向き合い、

 経営に規律を埋め込むことを半ば強制された。

 「規律」から「自律」へ。

 今、その分かれ道に立つ。この先の解は1つではない。

 それぞれの企業が進路を決め、自らの意志で前に

 進めるかどうか。

 株主から渡されたボールは、企業の側にある。
 

  (P.043)



大前研一さんは、「前もって正解は用意されていない。
さらに、正解は1つとは限らない。複数あるかも知れない」
というようなことを述べていますが、この言葉は私たちが
物事を考える上で、前提条件とするべきだ、と信じています。





ポイント

ROEは経営指標の一つに過ぎないが、
売上と利益の継続的増大が企業存続の
必須条件である以上、無視するわけには
いかない









今特集のキーワードを確認しておきましょう。

キーワード

 ROE 
 持続力 
 株主還元 
 脱・ROE 
 自律 









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2015 株主騒会 ROEで社長失格になる日 2015.06.22 <2>







日経ビジネスの特集記事(112)

2015 株主騒会
ROEで社長失格になる日
2015.06.22




テーマ

今週の特集記事のテーマは

緊張の面持ちで居並ぶ経営陣に、対峙する株主。
年に1度の株主総会シーズンがやってきた。
今年、その光景がガラリと変わる。
株主はROE(自己資本利益率)や配当などの還元策に
厳しく目を光らせ、満足しなければ容赦なく「社長失格」
の票を投じる。
アベノミクスが演出するこの株主“騒”会を何とか乗り越えようと、
新たな経営計画やROEの目標を打ち出す企業が続出している。
押し寄せる大波にのみ込まれるか、株主との対話を成長に
つなげるか。多くの日本企業がその岐路に立つ。

 (『日経ビジネス』 2015.06.22 号 P.027)

ということです。







2015 株主騒会
ROEで社長失格になる日

(『日経ビジネス』 2015.06.22 号 表紙)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.22




今特集のスタートページ

今特集のスタートページ

(『日経ビジネス』 2015.06.22号 PP.026-027)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.22







第1回は、
「PART.1 ROE目標、中期経営計画、株主還元・・・
 企業を揺さぶる 『普通の株主』」
を取り上げました。


第2回は、
「PART.2 アベノミクスが舞台回し
 踊り出す投資家 沸き立つ市場」
「PART.3 本誌独自ROE“分解”ランキング
 持続力を見極めよ」
を取り上げます。


最終回は、
「PART4 圧力を活力に変える
 脱・後ろ向きROE 解は1つじゃない」
をご紹介します。




今特集のキーワードは次の5つです。

キーワード

 ROE 
 持続力 
 株主還元 
 脱・ROE 
 自律 




6月は、2015年3月期決算企業の株主総会が集中する月です。
今年の株主総会は、例年と異なり、「騒動」のある株主総会
ということで、『日経ビジネス』特集班は、株主「騒」会と名付け
ました。


この件について、飯田展久編集長は、「編集長の視点」に
次のように書いています。


 今年は多くの企業で想定問答集の中身に

 変化が見られるのではないでしょうか。

 一般株主の間にも株主還元策に異常な関心が

 集まっているためです。

 ROE(自己資本利益率)の向上に目を光らせ、

 ROEの低い企業には取締役の選任案に「ノー」を

 突き付ける動きも出始めています。

 現実に否決されることはまれですが、否決されない

 案にあらかじめ作り直す例もあるようです。

 こうした状況を本誌は「株主騒会」と名付けてみました。

 総会をめぐる劇的な変化は一種の騒動のようだと見た

 からです。
 

  (P.003)



株主総会と言えば、昔は総会屋対策が重要な課題でした。
決算内容うんぬんよりも、総会屋をどう黙らせるかの方が、
大事だったのです。お金を握らせるという違法行為が公然
と行われてきました。


その後、総会屋の数が減少し、代わって増えてきたのが、
外国人投資家や外資系ファンドです。彼らは株式を買い
増し、株主の要求を経営者に突きつけます。


内部留保が多い企業には、設備投資や株主還元を強く
要求します。株主還元とは、配当金の割増です。
企業価値を高め、株価を上昇させる施策を採ることも、
当然要求します。


最近では、外資の「モノ言う株主」だけでなく、一般投資家
(今まではモノ言わぬ投資家と呼ばれてきました)が、
議決権を行使し、代表取締役の再任に“No!”を突き付ける
ケースが出てきたそうです。


ステークホルダー(利害関係者)には、社員、取引先、得意先、
株主、社会などがありますが、この中で株主の発言力がさらに
強くなってきていることが、今特集で再確認できます。





では、本題に入りましょう!


 PART.2 アベノミクスが舞台回し 
 踊り出す投資家 沸き立つ市場 

「ROEは何より大事な指標だ」と指摘するファンド関係者が
います。


 「ROEは何より大事な指標だ」(米ヘッジファンド、

 インダス・キャピタル・アドバイザーズ日本代表、

 ハワード・スミス氏)。

 市場は、「ROE改善」と聞くだけでいきなり熱い視線

 を送る状況なのである。
 

  (P.033)


私を含め、株式投資をしていない(過去にはあります)
人たちにとって「ROEが改善しようがどうしようが関係
ないよ」と言いたいところですね(笑)。


一方で、日経平均が2万円の大台を回復したことで、
今まで株式投資に参加していなかった人たちが、
株式投資になだれ込んでいます。


その人たちにとって、「ROEは大事な指標」です。


ROEが俄然注目されるようになってきた背景には、
アベノミクスがあります。


企業経営に4つの節目がある、と『日経ビジネス』は
指摘しています。


解説を読んでみましょう。
アベノミクスの「3本の矢」が関係しています。


 2012年末、政権の座に就いた安倍晋三首相は、

 「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「民間投資を

 喚起する成長戦略」の3本の矢をアベノミクスとして掲げ、

 失われた20年からの復活に動き出した。

 アベノミクスによって企業経営は4つの節目を迎えた。

 2013年6月に策定した日本再興戦略はその一つ。

 翌年の改訂版では「経済成長の実現のため、ROE向上

 など稼ぐ力を取り戻す」とROEを前面に押し出した。

 2014年8月には経済産業省の事業で、伊藤邦雄・

 一橋大学教授が座長となったリポートが、ROE8%の

 目標を明示。


 政権は企業に、ため込んだお金を吐き出させる。

 成長投資を促し、それができないのであれば手厚い

 株主還元を迫る。今春の労使交渉で賃上げを強く

 要請したのも同じ流れだ。

 それだけではない。投資家の在り方も変えた。

 長年、「もの言わぬ株主」と揶揄されてきた国内の

 機関投資家が一転、「もの言う株主」に変身し始めた。


 株主に総会での議決権行使をアドバイスする米ISS

 が2014年末、賛否の基準として「ROE 5%」を掲げた

 のも変化に拍車をかけた。


 アベノミクスが投資家を揺さぶり、投資家は企業を

 揺さぶる。その結果、ROE目標や増配、自社株買い

 などを打ち出す企業が続出。安倍政権発足以来の

 株高にはそんな背景もある。 
 

  (PP.033-034)



株主との対話とROE向上を迫る方針が<br />企業と投資家を動かし、株高を演出した

株主との対話とROE向上を迫る方針が
企業と投資家を動かし、株高を演出した

(『日経ビジネス』 2015.06.22号 PP.032-033)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.22



ROEが注目されてきたわけですが、過去にROEが取り沙汰
されたことはなかったのでしょうか?


3回あったそうです。


 日本でROEが取り沙汰されたことは3度ある。

 1度目は1990年代中ごろ。米国のROE経営

 ブームが飛び火した。2度目は米スティール・

 パートナーズなど投資ファンドの買収攻勢が

 猛威を振るった2000年代前半だ。

 アベノミクスが仕掛ける今回の第3次ROEブーム

 は多くの企業、機関投資家を巻き込み、

 広がる一方。そうした中で、かつてアクティビスト

 と恐れられた投資家が復活している。
 

  (P.034)



投資家が求めるROEの水準と現実とはどうなのか、
アンケート調査結果があるそうです。


投資家の求める水準と現実のROEには落差がある

投資家の求める水準と現実のROEには落差がある

(『日経ビジネス』 2015.06.22号 P.034)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.22



この調査結果を見るかぎり、投資家はROEの数値は
10~12%を理想と考える人が37.5%を超えて最も多い
ですが、現実には6%未満が1200社近くあり、
最も多くなっています。



ROEについては、前回ご覧いただいた次の数式を、
もう一度ご覧ください。



ROE(自己資本利益率)

ROE(自己資本利益率)

(『日経ビジネス』 2015.06.22号 P.029)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.22




ROEは3つの要素に分解することができます。
以下の数式で分かります。



ROE

MBA用語集 ROE Globis Management Schoo のサイトから



この式は、今はざっとご覧いただくだけでかまいません。
PART.3でもう一度取り上げますので、その際は、
じっくりこの数式をご覧ください。


そして、『日経ビジネス』の解説をよく読んでください。
そうすれば、この数式はどのような意味を持つのか、
理解できると思います。


ちなみに、「株主資本」とありますが、現在では自己資本
となっています。さらに純資産とも言います。





 PART.3 本誌独自ROE“分解”ランキング 
 持続力を見極めよ 

このパートには多くの表が出てきますが、
ROEを分解し、売上高営業利益率、
総資産回転率、財務レバレッジの3つに分類し、
それぞれをランキングしています。


『日経ビジネス』はランキングを公表する前に、
「“本物”の優良企業とそうでない高ROE企業を
あぶり出した」(P.035)と述べています。


その理由は、「ROEが高いからといって優良企業
とは限らない」(P.035)からです。


『日経ビジネス』は、どのような視点でランキングを
決定したのか説明しています。


 本誌は今回、東証1部上場企業を財務面から

 徹底的に分析した。

 ROEは「売上高利益率×総資産回転率×財務

 レバレッジ」に分解することができる。

 この3要素のどれを改善すれば、ROEが高く、

 体質も強い企業になるのか。あるいは企業規模別

 に見た違いはどうか。

 それらを勘案しながら、“本物”の優良企業とそうで

 ない高ROE企業をあぶり出した。
 

  (P.035)


そこで、もう一度PART.2で取り上げたROEの分解式を
見ておきましょう!



ROE

MBA用語集 ROE Globis Management Schoo のサイトから




ランクインしている企業名は有名、無名が混在して
います。もちろん、私が知らない企業が多数含まれ
ています。


まず、「スーパーROE(連続高)企業」のランキングから
見ていくことにしましょう!


スーパーROE(連続高)企業


スーパーROE(連続高)企業

スーパーROE(連続高)企業

(『日経ビジネス』 2015.06.22号 P.035)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.22




先にご覧いただいた「ROEの理想と現実」で、
ROEの理想の数値は10~12%とありましたが、
はるかに上ですね。1位のカカクコムは60%超です。


ベスト10の中で、私が知っている企業は4社(カカクコム、
ソフトバンク、ヤフー、サンリオ)しかありません。


参考までに、米国の高ROE企業はどのような数値が
評価されているか、専門家の話を聞いてみましょう。


 「米国では長期にわたって20%以上の高いROEを

 達成している企業こそ尊敬される」と早稲田大学

 ビジネススクールの入山章栄・准教授は言う。
 

  (PP.035-036)




では、次から3つの要素に分けたランキングをご紹介
していきます。


利益率が高い企業




(『日経ビジネス』 2015.06.22号 P.036)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.22




スーパーROE(連続高)企業と、利益率が高い企業を突き
合わせてみますと、6社(カカクコム、スタートトゥデイ、
日本M&Aセンター、日本商業開発、エムスリー、ヤフー)
が重複しています。


ここでは、営業利益率でランキングしています。
営業利益率は、売上高に対してどれだけの営業利益
(本業における儲け)を出したかを示す指標です。
利益率が良い、悪いという指標です。





資産回転率が高い企業


資産回転率が高い企業

資産回転率が高い企業

(『日経ビジネス』 2015.06.22号 PP.036-037)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.22




スーパーROE(連続高)企業と、資産回転率が高い企業を
突き合わせてみますと、1社も重複していません。


総資産回転率は、総資産(負債+純資産)を使って、
どれだけの売上を上げたかを示す指標です。


総資産が少なければ、言い換えますと、設備をあまり必要
としない企業は、資産回転率が高くなる可能性があります。


その点で、巨額な設備投資を必要とするメーカーは、
総資産が巨大になる可能性があります。その結果、
総資産回転率は低くなる可能性が高まります。





利益率が低く、レバレッジが高い企業


利益率が低く、レバレッジが高い企業

利益率が低く、レバレッジが高い企業

(『日経ビジネス』 2015.06.22号 P.037)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.22




利益率が低く、レバレッジが高いということは、負債を使って
(レバレッジを効かせて)経営しているということです。
この数値が大きいということは、安全性が低いことを示して
います。


財務レバレッジとは、総資産(負債+純資産)を純資産で
割った数値ですから、この数値が大きいということは負債
の額が大きいこと示しています。


多額な設備投資を必要とする「装置産業」が相当します。
例えば電力会社や、建設会社などです。


それらの企業は、長期借入金の額が莫大です。


ちなみに、自己資本=純資産となります。


レバレッジとは「てこ」のことです。最小の力で最大の効果
を発揮するための道具です。


数十年前、LBO(Leveraged Buy Out)という手法が多用
されたことがありました。


LBOは、「買収先資産を担保にした、借入による買収」
と日本語に訳されていました。


つまり、買収企業に担保がなくても、被買収企業に担保
となる資産があれば、その資産を担保にして買収しよう
とする、まったくもって一方的にM&A(合併・買収)が
認められた時期があったのです。


米国で始められ、日本にも入ってきました。日本で実際に
行われたかどうかは、記憶していません。




さて、『日経ビジネス』は「ROE“分解”ランキング」を総括して、
次のように述べています。


 「ROEを上げる王道は利益率と売上高を上げること」

 と投資信託会社、レオス・キャピタルワークスの取締役

 でファンドマネジャーの湯浅光裕氏は指摘する。


 利益率が高く、ROEも高い企業のランキングで目立つのは、

 5位に入った日本M&Aセンター。後継者のいない中小企業

 などのM&A(合併・買収)仲介という独特の事業を作り出し、

 ニッチ市場で高い利益率を実現している。

 一方、総資産回転率(売上高/総資産)が高く、ROEも高い

 企業のランキングでは、ユナイテッドアローズが7位に入った。

 2015年3月期は、円安で原材料価格が高騰したことなどから

 営業利益は前期比16.8%の減益となったが、18店の出店が

 効いた。


 今回作成したランキングで最も評価が難しいのが、

 利益率は低いものの、財務レバレッジの高さでROEを押し

 上げている企業だ。上のランキングがそれだが、ぴあ、

 飛島建設などかつて業績悪化に苦しんだ企業も多い。
 

  (P.037)





ポイント

ROEを絶対視してはならないが、
とても重要な指標であることは間違いない


ROEは3つに分解できることは既に述べました。
売上高利益率、総資産回転率、そして財務レバレッジです。


どこに重点を置くかは各企業の経営者の考え方次第ですが、
 「ROEを上げる王道は利益率と売上高を上げること」
にあるのは、間違いないでしょう。


『日経ビジネス』(2015.06.08 号)は、ファナックを特集しました。
ファナックのROEは16%ですが、その理由は売上高当期
利益率が28%で、東証1部の製造業の平均4%の7倍も
あるからです(下図参照)。


ROEは東証1部の製造業の2倍ですが、収益性に重点を
置いていることは間違いありません。


ファナックは、
 「ROEを上げる王道は利益率と売上高を上げること」
を実践しているのです。



効率とレバレッジが低いのにROEが高い

効率とレバレッジが低いのにROEが高い


(『日経ビジネス』 2015.06.08号 P.034)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.08







今特集のキーワードを確認しておきましょう。

キーワード

 ROE 
 持続力 
 株主還元 
 脱・ROE 
 自律 




最終回は、
「PART4 圧力を活力に変える
 脱・後ろ向きROE 解は1つじゃない」
をお伝えします。


ご期待下さい!






記事を読んで、面白かったら
ポチッとしてください。






2015 株主騒会 ROEで社長失格になる日 2015.06.22 <1>







日経ビジネスの特集記事(112)

2015 株主騒会
ROEで社長失格になる日
2015.06.22




テーマ

今週の特集記事のテーマは

緊張の面持ちで居並ぶ経営陣に、対峙する株主。
年に1度の株主総会シーズンがやってきた。
今年、その光景がガラリと変わる。
株主はROE(自己資本利益率)や配当などの還元策に
厳しく目を光らせ、満足しなければ容赦なく「社長失格」
の票を投じる。
アベノミクスが演出するこの株主“騒”会を何とか乗り越えようと、
新たな経営計画やROEの目標を打ち出す企業が続出している。
押し寄せる大波にのみ込まれるか、株主との対話を成長に
つなげるか。多くの日本企業がその岐路に立つ。

 (『日経ビジネス』 2015.06.22 号 P.027)

ということです。







2015 株主騒会
ROEで社長失格になる日

(『日経ビジネス』 2015.06.22 号 表紙)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.22




今特集のスタートページ

今特集のスタートページ

(『日経ビジネス』 2015.06.22号 PP.026-027)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.22







第1回は、
「PART.1 ROE目標、中期経営計画、株主還元・・・
 企業を揺さぶる 『普通の株主』」
を取り上げます。


第2回は、
「PART.2 アベノミクスが舞台回し
 踊り出す投資家 沸き立つ市場」
「PART.3 本誌独自ROE“分解”ランキング
 持続力を見極めよ」
を取り上げます。


最終回は、
「PART4 圧力を活力に変える
 脱・後ろ向きROE 解は1つじゃない」
をご紹介します。




今特集のキーワードは次の5つです。

キーワード

 ROE 
 持続力 
 株主還元 
 脱・ROE 
 自律 




6月は、2015年3月期決算企業の株主総会が集中する月です。
今年の株主総会は、例年と異なり、「騒動」のある株主総会
ということで、『日経ビジネス』特集班は、株主「騒」会と名付け
ました。


この件について、飯田展久編集長は、「編集長の視点」に
次のように書いています。


 今年は多くの企業で想定問答集の中身に

 変化が見られるのではないでしょうか。

 一般株主の間にも株主還元策に異常な関心が

 集まっているためです。

 ROE(自己資本利益率)の向上に目を光らせ、

 ROEの低い企業には取締役の選任案に「ノー」を

 突き付ける動きも出始めています。

 現実に否決されることはまれですが、否決されない

 案にあらかじめ作り直す例もあるようです。

 こうした状況を本誌は「株主騒会」と名付けてみました。

 総会をめぐる劇的な変化は一種の騒動のようだと見た

 からです。
 

  (P.003)



株主総会と言えば、昔は総会屋対策が重要な課題でした。
決算内容うんぬんよりも、総会屋をどう黙らせるかの方が、
大事だったのです。お金を握らせるという違法行為が公然
と行われてきました。


その後、総会屋の数が減少し、代わって増えてきたのが、
外国人投資家や外資系ファンドです。彼らは株式を買い
増し、株主の要求を経営者に突きつけます。


内部留保が多い企業には、設備投資や株主還元を強く
要求します。株主還元とは、配当金の割増です。
企業価値を高め、株価を上昇させる施策を採ることも、
当然要求します。


最近では、外資の「モノ言う株主」だけでなく、一般投資家
(今まではモノ言わぬ投資家と呼ばれてきました)が、
議決権を行使し、代表取締役の再任に“No!”を突き付ける
ケースが出てきたそうです。


ステークホルダー(利害関係者)には、社員、取引先、得意先、
株主、社会などがありますが、この中で株主の発言力がさらに
強くなってきていることが、今特集で再確認できます。





では、本題に入りましょう!


 PART.1 ROE目標、中期経営計画、株主還元・・・ 
 企業を揺さぶる「普通の株主」 

新株価指数「JPX日経インデックス400」の選出に関して、
「異変」が起こったそうです。2013年11月のことです。


 「どうしてうちが漏れたんだ!」

 2013年11月、新たな株価指数「JPX日経インデックス400」

 の構成銘柄に、同業で業界2位のAOKIホールディングスが

 選ばれた。JPXはROEなど複数の基準で銘柄を選出する。

 AOKIのROEは青山商事を上回っていた。
 

  (P.028)



明確な理由があるはずです。
その理由とは?


 明暗を分けたのは本業以外だった。

 青山商事は紳士服事業が営業利益の9割を占める。

 一方、AOKIは結婚式場やカラオケ店の運営などの

 新規事業が営業利益の4割以上。

 「紳士服事業が生むキャッシュを新規事業に回す循環

 が定着した」とAOKIの田村春生副社長は語る。

 手持ち資金を有効に使えていない青山商事と、

 資本効率を上げたAOKI。

 JPX採用銘柄の発表後、1カ月間の株価上昇率では

 差が付いた。
 

  (P.029)


将来への投資をしたAOKIと、しなかった青山商事に
明暗が分かれました。


ちなみに、ROEを比較しますと、青山商事は5.4%で、
AOKIは7.5%です。


この話には伏線があります。
青山商事のROEが5%を超えるかどうかが、ポイント
でした。


 青山商事は2015年3月期決算を締める前まで、

 ROEが5%を超えるという確証がなかった。

 5%を切れば、総会で青山社長再任案への反対率が

 高まる恐れがある。

 そこで、約100億円の自社株買いを断行。

 ROEの計算式の分母である自己資本を圧縮し、

 帳尻を合わせた。

 宮武副社長は怒涛の1年半をこう振り返る。

 「過去の苦労から、キャッシュを手厚く持っておくべき

 との考えが裏目に出た。

 総会を乗り越えるメドがついたが、これがスタート

 地点だ」。
 

  (P.029)



ROEについては、次表をご覧ください。



ROE(自己資本利益率)

ROE(自己資本利益率)

(『日経ビジネス』 2015.06.22号 P.029)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.22




ROEは、最終利益を自己資本で割った数値です。
ROEの数値を向上させるためには、分子の最終利益
を増やすか、分母の自己資本を小さくさせるしかあり
ません。分母の自己資本を圧縮するほうが容易です。


理論的には、分子を大きくし、分母を小さくすればよい
のですが、現実には最終利益を調整することは困難
ですし、ヘタをすると粉飾決算になりかねません。


ですから、自社株買いにより、自己資本を縮小させる
手段が使われるようです。



自社株買いのメリットは、次のことです。
「自社株買いが行われると発行済株式の総数が減ります。
 総数が減るので1株あたりの資産価値やROEが向上
 します」 
自社株買いのメリット 「初心者の株式投資道場」から)






株主総会が様変わりしているそうです。
株主総会の変遷を『日経ビジネス』は次のように
伝えています。


 かつて企業が恐れたのは「特殊株主」。

 総務部門は、大物総会屋の一挙手一投足を気に

 した。逆に、その他の株主は、さして気に留める

 必要がなかった。

 しかし今は違う。怖い相手は「普通の株主」だ。

 ROEが低く、ガバナンスに不備があれば即「社長

 失格」の票を投じる。そんな株主“騒”会を乗り

 切るには、株主やその助言役であるISSなどと

 対話し、理解を求めるしかない。
 

  (PP.029-030)


ここにあるISSというのは、
「米インスティテューショナル・シェアホルダー・
サービシーズ(ISS)。議決権行使を投資家に
助言する最大手だ。
ISSはROEが過去5年平均と直近決算期で
いずれも5%を下回る企業に対し、総会での
経営トップ選任案に反対する指針を表明して
いる」 (P.028)という組織で、企業にとって
怖い存在です。


『日経ビジネス』は、「今年は『ROE総会』の
元年だ」と述べています。


経営トップ選任案への賛成率とROEの数値との
関係を示すグラフがあります。



ROE5%未満の企業の賛成率は9割以下に<br />・3月の総会におけるROE別経営トップ選任案への賛成率

ROE5%未満の企業の賛成率は9割以下に
・3月の総会におけるROE別経営トップ選任案への賛成率

(『日経ビジネス』 2015.06.22号 P.030)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.22




ROEが5%以上であることは、経営トップにとって
自分の地位を守る条件と言えます。


ROEを逆手に取った企業があるということで、
じっくり読んでみました。


 ROEの神通力を逆手に取った企業もある。

 「ようやく承認された」。

 6月12日、ゲーム大手、カプコンの小田民雄副社長は、

 深い安堵感に包まれた。

 この日開かれた総会で、昨年否決された買収防衛策議案

 が可決されたからだ。

 復活劇の裏にはROEがあった。

 同社は今年の総会で初めてROEの数値目標を議案に

 入れた。

 2017年3月期までの3年移動平均のROEを、前期の6.7%から、

 8~10%に引き上げるというものだ。ROE目標を総会の議案に

 入れるのは異例。株主に中期的な成長の青写真を見せ、

 買収防衛策への理解を求める狙いが功を奏した。
 

  (P.031)



買収防衛策のため、ROEの数値目標を掲げた、
ということです。必達しないとなりませんね。





ポイント

ROEの向上は企業価値の向上

ROEが向上することは、1株あたりの利益が増えること
ですから、株主にとってもメリットがあります。


株価上昇や、配当金の増額も期待できます。
企業価値も向上します。自己資本を活用して利益を
上げていることになるからです。


ROEが5%というボーダーラインが果たして高いの
だろうか、という疑問が残ります。


そこで、日米欧のROEの推移を調べてみました。
日本企業のROEが欧米の企業より低いことは、
理解しています。


欧米企業のROEは二桁台はザラにあるということです。
10%以上でなければ、株主から経営者失格の烙印を
押され、CEO(最高経営責任者)を解任される、
という話を読んだことがあります。


次のグラフを見ますと、欧米と日本は乖離していること
が一目瞭然ですね。
2013年までのデータですが、日本は欧米との差を縮める
ことは容易ではないことが、分かります。


長年続いた円高から円安に転換し、少しは改善したの
でしょうか?


現時点では、データが見つからないため確定的なことは
言えませんが、少なくとも、劇的な改善はないでしょう。



ROE(自己資本利益率)

ROE(自己資本利益率)

日米欧の主要企業の財務指標の比較
 三井住友アセットマネジメントのサイトから)










今特集のキーワードを確認しておきましょう。

キーワード

 ROE 
 持続力 
 株主還元 
 脱・ROE 
 自律 




次回は、
「PART.2 アベノミクスが舞台回し
 踊り出す投資家
 沸き立つ市場」
「PART.3 本誌独自ROE“分解”ランキング
 持続力を見極めよ」
をお伝えします。


ご期待下さい!






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時代は「健康経営」 エクセレントカンパニーの新条件 2015.06.15 <3>







日経ビジネスの特集記事(111)

時代は「健康経営」
エクセレントカンパニーの新条件
2015.06.15




テーマ

今週の特集記事のテーマは

「健康管理は従業員本人の責任」。
そんな前時代的な経営は、もはや通用しない。
SCSK、コニカミノルタ、伊藤忠商事、味の素、東急電鉄、内田洋行──。
従業員の健康こそ企業の競争力を高める経営の最重要課題と位置付け、
その増進や維持を図る「健康経営」に取り組む企業が増えている。
活力ある働き方を実現する「戦略投資」として、健康経営を推進することは、
生産性を高め、優れた人材を集めるエクセレントカンパニーの新条件だ。

 (『日経ビジネス』 2015.06.15 号 P.026)

ということです。






時代は「健康経営」<br />エクセレントカンパニーの新条件

時代は「健康経営」
エクセレントカンパニーの新条件

(『日経ビジネス』 2015.06.15 号 表紙)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.15




今特集のスタートページ

今特集のスタートページ

(『日経ビジネス』 2015.06.15号 PP.026-027)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.15







第1回は、
「PART1 本誌調査では従業員の34%が『病』に
 『健康ブラック企業』の闇」
「PART2 SCSK、健康経営の軌跡
 家族に手紙、残業激減 そして増収増益」
を取り上げました。


第2回は、
「PART3 エクセレントカンパニーへの道
 健康経営、4つのポイント」
を取り上げました。


最終回は、
「PART4 経営トップが旗振り役に
 『形だけの罠』に陥るな」
をご紹介します。




今特集のキーワードは次の5つです。

キーワード

 健康ブラック企業 
 健康経営 
 エクセレントカンパニー 
 健康経営に関する誤解 
 持続性 



初回は、健康ブラック企業と、健康経営を推進する企業を
ご紹介しました。


2回目は、従業員や役員の心身の健康を維持・増進する
企業は、エクセレントカンパニーへの道を歩むことになる、
という主旨でお伝えしました。


最終回は、経営トップが旗振り役になり、「健康経営」を推進
していかなくてはならない、という主旨でお伝えしていきます。



では、本題に入りましょう!


 PART4 経営トップが旗振り役に 
 「形だけの罠」に陥るな 

経営トップが大病し、健康の大切さを身に沁みて感じ、
自分だけでなく、従業員の健康維持・増進を経営の
重要課題としているケースをご紹介します。


伊藤忠商事 岡藤正広社長のケース

岡藤さんは、2度も大病したことがあるそうです。


 体が疲れると、耳鳴りがする──。

 伊藤忠商事の岡藤正広社長は、25年前に自らの体に

 起こった“変調”を今も鮮明に覚えている。

 大阪本社のビルに入っていた耳鼻科のクリニックを

 訪ねても原因は分からず、受けた治療は薬を塗ると

 いった処置だけだった。


 ある日、たまたま別のクリニックの医師に打ち明けると、

 「岡藤さん、それは危ない。耳は脳に近いから、

 放っておいたら脳膜炎になる。大きな病院で検査して

 もらいなさい」と言われた。

 慌てて行った大学病院で、「真珠腫性中耳炎」と診断

 された。鼓膜の細胞が内側に入り込み、真珠のような形

 に増殖していく。手術しなければ、耳の骨が溶けていき、

 いずれ聴力を失う。

 医師から言われた入院期間は1カ月。


 「多忙のため体調を気にする暇もあまりなかった」と、

 岡藤社長は振り返る。

 高校3年生の頃、結核が悪化して1年間の療養を余儀なく

 された。健康の重要性を人一倍痛感していたはずだった。

 だが、喉元過ぎれば、熱さを忘れる。

 その後は大病もなく過ごしているうちに、無理をすることも

 多くなっていた。


 仕事には、量より質が問われる時代になった。

 「じっくり考えて良いアイデアを出し、行動に移す。

 そのために、心身ともに健康な状態にしておくことが大事だ」

 と強調する。
 

  (P.042)


こうした体験を通じ、残業削減を進め、代わりに朝型勤務に
移行しています。早朝勤務を深夜残業と同等に扱い、
割増金を支払う制度を導入したそうです。


 こうした岡藤社長の考えは、2014年5月から正式導入した

 「朝型勤務」にも込められている。

 朝型勤務では、夜8時以降の残業を原則禁止し、

 早朝の勤務に対して深夜と同等の割増金を会社が払う。

 残業するなら朝働くように促すものだ。

 会社の食堂には朝食を用意し、社員の一日のスタートを

 支えている。
 

  (P.042)






伊藤忠商事 岡藤正広社長

(『日経ビジネス』 2015.06.15号 P.043)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.15




経営トップが病気を患ったことがないと、健康に問題を
抱えている部下の気持ちが理解できず、無理強いする
ことがあります。


大切なことは、個人的な体験をそのままで終わりにせず、
活かすことはないか考え、あればすぐに実行することです。





カルビー 松本晃・会長兼CEO(最高経営責任者)のケース

松本さんは、外資のジョンソン&ジョンソン出身です。
医療機器メーカーであったため、各種検診費用は
企業がまかなっていたそうです。


ところが、カルビーでは、松本さんが移ってくるまで
そうした制度がなく、驚いたそうです。


松本さんは、体調不良で検査入院したところ、
心臓の病気が発見され、心臓カテーテル手術のため、
1週間の入院を経験したそうです。


 カルビーの松本晃・会長兼CEO(最高経営責任者)は、

 「経営者が社員の健康を守るのは当たり前」と断言する。

 カルビーに来た7年前、松本会長は愕然とした。

 カルビーではがん検診の費用補助が一切なく、

 人間ドックは40歳以上で半額の補助のみ。

 それまで医療機器メーカー、米ジョンソン・エンド・ジョンソン

 日本法人にいた松本会長にとって、こうした費用を会社が

 負担するのは当たり前のことだった。

 それからカルビーでは、松本会長の方針の下で、

 乳がんや子宮頸がんなどの検診費用や35歳以上の社員の

 人間ドック費用の全額補助などを導入。

 2013年には、健康保険組合も設立した。
 

  (PP.042-044)





 松本会長は3年前に心臓のカテーテル手術のため、

 初めて1週間の入院を経験した。

 以前から血圧は高めだったが、薬は飲まず、

 生活にも支障がなかった。

 だが、体調不良を覚えて検査入院した際に、

 偶然心臓の病気が発見されたという。

 自ら経験したからこそ、受診や早期発見の重要性を

 痛感している。


 松本会長は「きちんと治療して、早く職場復帰して

 くれた方が、会社にとってはるかに有益だ」と明快だ。
 

  (P.044)



『日経ビジネス』取材班は、健康経営に関して「4つの誤解」
がある、と指摘しています。



健康経営に関する4つの誤解


誤解1 健康診断の受診率が100%なら安心


 多くの企業で経営者は「健康診断の受診率100%達成」を
 目標に掲げる。それは重要だが、受診率が上がっても、
 要再検査の従業員が2次検査を受けなかったり、
 健康のための生活改善に取り組まなかったりするようでは、
 効果は得られない。
 

  (P.44)


誤解2 健康経営にはお金がかかる


 健康経営に取り組んでこなかった企業こそ、
 人事や健保組合に非効率的な部分がある可能性が高い。
 業務を見直すことで、予算を積み増さず健康経営に取り組め
 ている企業は多い。いずれにせよコストはかかるのだから、
 戦略的に活用しなければ「死に金」を払い続けるだけだ。
 

  (P.44)


誤解3 「ストレスチェック」は予防に効く


 ストレスチェックは従業員個人のストレス状態を把握できる
 のに加え、職場のコミュニケーションや上司・同僚の支援体制
 など、企業風土も浮き彫りにする。従業員個人の問題と捉える
 のではなく、職場の課題を解決する姿勢で取り組む必要がある。
 

  (P.45)


誤解4 1年も続ければ改善効果が表れる


 短期的には、顕著な成果が表れにくいのが健康経営の特徴だ。
 個人も会社も、一般的には3~4年かけて取り組むことでようやく
 成果が表れる。それでも5年、10年先送りしてしまえば、改善の
 ための時間やコストはさらに膨らむ。中長期的に辛抱強く続ける
 ことが重要。
 

  (P.45)




岡藤さんは経営者に、苦言を呈しています。
経営トップは、次の言葉に耳を傾けるべきです。


 「体が頑丈で大病を患ったことのない経営者は、

 健康は大事と口でなんぼ言っても魂が入ってない。

 病気になるのは、たるんでるからや、

 と心では思っている人が多いんじゃないかな」と

 岡藤社長は指摘する。

 日本ではこれまで、一部の意識の高い経営者が

 その重要性と効果に気が付いて、健康経営を実践

 していた面があった。

 だが今や、どの企業にとっても経営上の重要な課題

 となった。
 

  (PP.044-045)


では、どうしたら企業の競争力を持続的に高めることが
できるのでしょうか?


先に結論を書きますと、「健康経営の実践が欠かせない」
ことと、経営トップが健康経営の「『旗振り役』となって推進
する」ことです。


専門家は次のように述べています。


 「企業が持続的に競争力を高めようと思うなら、

 健康経営の実践は欠かせない」と、

 特定非営利活動法人健康経営研究会の岡田邦夫

 理事長は強調する。

 それには経営者が意識を変え、「旗振り役」となって

 推進する必要がある。
 

  (P.045)



ただし、お題目だけ唱えても、きちんと成果に結び付け
られなければ(従業員の健康維持・増進に寄与する)、
絵に描いた餅に過ぎません。


 注意しなければならないのは、「形だけの罠」だ。

 例えば、健康経営を目指す企業の多くが、

 「健康診断の受診率100%」を目標に掲げる。

 確かに、従業員にきちんと健康診断を受けさせ、

 病気やその兆候がないかを調べるのは健康経営の

 第一歩だ。

 だが、そのデータを実際に健康増進の対策に

 つなげなければ、ただ調べただけ。

 「治療や生活改善に取り組ませるところまで目配り

 しないと、従業員の健康は守れない」。

 健診データの解析サービスなどを提供するミナケア

 の山本雄士代表は、こう警鐘を鳴らす。
 

  (P.045)



国の方針も変わってきています。
2015年12月から「ストレスチェック制度」が義務付けられます。
「『ストレスチェック』は、企業をブラックかホワイトかを判定
するリトマス試験紙にもなる」(P.045)のです。



 2015年12月から義務付けられる「ストレスチェック制度」

 にも、健康診断と同じことが言える。

 ストレスチェックの結果を踏まえて、職場の改善につなげ

 なければ意味がない。

 企業のメンタルヘルス施策に詳しい産業医大ソリュー

 ションズの亀田高志社長は「ストレスチェックは従業員個人

 のストレス状態を測るだけでなく、その企業がブラックか

 ホワイトかを判定するリトマス紙にもなる」と話す。
 

  (P.045)


国の政策に変更が加えられた理由は、
「国は目下、予防や健康づくりの環境整備に努めているが、
その狙いは『国民の健康増進』のみならず、
『医療費の削減』の実現にある」(P.044)からです。


医療費の削減は、国にとって喫緊の課題となっています。



「健康経営」について、『日経ビジネス』は次のように、
結論づけています。


 健康経営とは、突き詰めていけば従業員が生き生きと

 前向きな姿勢で働ける場をつくることにほかならない。

 それを怠り放置すれば、そのツケはさらに膨らんで

 返ってくる。
 

  (P.045)







ポイント

健康経営は目標ではなく、目的そのもの

企業経営は経営者と株主がいれば、成り立つものではない
ことは言うまでもありませんが、経営者のみならず、
従業員が健康を害する企業は、「ブラック」の烙印を押され、
社会からペナルティを課される時代になりました。


企業の目的は利益を上げることに、論を俟ちませんが、
企業目的は一つだけではありません。


従業員を犠牲にし、健康を損なってまでして増益しても、
それは一時的なものに過ぎず、後で大きな代償を支払わ
されることになります。しっぺ返しを喰らいます。






ポイント

経営トップの意識改革

「健康経営」を実践するためには、経営層が魂を入れて、
傾注することが不可欠です。そうでなければ、「健康経営」
がなぜ大切なのかが、末端の社員にまで浸透することは
ありません。単なるパフォーマンスで終わってしまいます。





私見

普段、健康に感じている人は(必ずしも、実際に健康状態
にあるかどうかは疑問ですが)、無理をしたり、他人に無理
強いする傾向があります。


管理職や経営層にそうした考え方があるとすれば、
早晩、「グレー企業」が「ブラック企業」に転落することは
目に見えています。当事者に見えていないだけです。
客観視できていないからです。


「メタ認知」という概念を最近知りましたが、客観視に近い
もので、もう一人の自分から見て、自分はどうなのかを
常に考えてみる姿勢が欠かせません。


<メタ認知>


 メタ認知(メタにんち)とは認知を認知すること。

 人間が自分自身を認識する場合において、

 自分の思考や行動そのものを対象として

 客観的に把握し認識すること。

 それをおこなう能力をメタ認知能力という。
 

  (メタ認知 Wikipedia から)


「健康経営」を実践し続ける企業だけが、持続可能性を
獲得できます。


「健康経営」にゴールはありません。






今特集のキーワードを確認しておきましょう。

キーワード

 健康ブラック企業 
 健康経営 
 エクセレントカンパニー 
 健康経営に関する誤解 
 持続性 






記事を読んで、面白かったら
ポチッとしてください。






時代は「健康経営」 エクセレントカンパニーの新条件 2015.06.15 <2>







日経ビジネスの特集記事(111)

時代は「健康経営」
エクセレントカンパニーの新条件
2015.06.15




テーマ

今週の特集記事のテーマは

「健康管理は従業員本人の責任」。
そんな前時代的な経営は、もはや通用しない。
SCSK、コニカミノルタ、伊藤忠商事、味の素、東急電鉄、内田洋行──。
従業員の健康こそ企業の競争力を高める経営の最重要課題と位置付け、
その増進や維持を図る「健康経営」に取り組む企業が増えている。
活力ある働き方を実現する「戦略投資」として、健康経営を推進することは、
生産性を高め、優れた人材を集めるエクセレントカンパニーの新条件だ。

 (『日経ビジネス』 2015.06.15 号 P.026)

ということです。






時代は「健康経営」<br />エクセレントカンパニーの新条件

時代は「健康経営」
エクセレントカンパニーの新条件

(『日経ビジネス』 2015.06.15 号 表紙)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.15




今特集のスタートページ

今特集のスタートページ

(『日経ビジネス』 2015.06.15号 PP.026-027)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.15







第1回は、
「PART1 本誌調査では従業員の34%が『病』に
 『健康ブラック企業』の闇」
「PART2 SCSK、健康経営の軌跡
 家族に手紙、残業激減 そして増収増益」
を取り上げました。


第2回は、
「PART3 エクセレントカンパニーへの道
 健康経営、4つのポイント」
を取り上げます。


最終回は、
「PART4 経営トップが旗振り役に
 『形だけの罠』に陥るな」
をご紹介します。




今特集のキーワードは次の5つです。

キーワード

 健康ブラック企業 
 健康経営 
 エクセレントカンパニー 
 健康経営に関する誤解 
 持続性 



初回は、健康ブラック企業と、健康経営を推進する企業を
ご紹介しました。


今回は、従業員や役員の心身の健康を維持・増進する
企業は、エクセレントカンパニーへの道を歩むことになる、
という主旨でお伝えしていきます。



では、本題に入りましょう!


 PART3 エクセレントカンパニーへの道 
 健康経営、4つのポイント 

『日経ビジネス』特集班は、健康経営には4つのポイント
がある、と指摘しています。


順に見ていくことにしましょう。


手法1 緻密な検診データで最適提案

企業による従業員の心身の健康管理は、単に医療費の
削減のみならず、企業の存続にも関わる大変重要な
テーマとなってきました。


従業員も個人の問題ではなく、全社的な問題であるという
認識が不可欠です。


内田洋行の場合


 医療コンサルティングのミナケア(東京都千代田区)

 に健康診断とレセプトのデータ分析を依頼して、

 リスクの高い従業員を洗い出した。

 生活習慣病をターゲットにしたのは、長期間にわたって

 継続して治療を受けたり、服薬したりする必要がある

 病気だからだ。本人の負担が重い上に医療費もかさむ。


 内田洋行は2017年度に血糖・血圧で緊急度が高いリスク

 を持つ従業員を、2014年度比で8割削減するなどの中期

 目標を策定した。

 健康への取り組みはすぐに成果が出るものではないが、

 データを基にして適切な手を打ち続ければ必ず成果が

 出る。たゆまぬ実践が、今日も続いている。
 

  (PP.036-037)


従業員の健康に関するビッグデータ活用により、
個人の健康状態の把握だけでなく、男女別、年代別、
業務内容別、上長と部下との関係など、いろいろな
セグメントで分析が可能になってくる、と考えられます。


そうしたデータを事業にどう活かしていくか、
が将来の課題になる、と思います。



図1


健康リスクが高い従業員を狙い撃ち
・内田洋行保険組合のデータ活用概要

(『日経ビジネス』 2015.06.15号 P.036)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.15






手法2 楽しむ仕掛けで三日坊主を防ぐ

従業員の健康への意識を向上させるため、
企業はあの手この手を使って、動機づけしています。


課題をクリアしたらポイントが貯まり、健康関連商品
や、さまざまな商品に交換できるプログラムを採用
する企業も増えてきました。
「アメとムチ」のアメの戦略です。


一方、健康診断を未受診の従業員に対して、
ボーナスをカットする荒療治を課す企業もあります。
「アメとムチ」のムチの戦略です。


こうした「アメとムチ」を使い分ける試みが始まりました。


出光興産の場合(アメ)


 健康ポイントをためて商品を手に入れる──。

 こうした楽しむ仕掛けで健康活動の「三日坊主」を

 防ぐ仕組みは、出光興産も取り入れている。

 2012年、住友商事が開発した健康応援サイト

 「KENPOS」を採用。

 1日7000歩や1万歩の歩行を一定期間続けるなど

 の活動をすると、ポイントがもらえる。

 ためたポイント数に応じて、東京ディズニーリゾートの

 フリーパスポートや雑穀米など様々な商品に交換

 できる。
 

  (P.038)



こうした試みが目に見える成果となってきています。


 現在、健康保険組合の被保険者の3分の1に

 当たる約3600人がKENPOSに登録。

 導入初期に登録した40歳以上の人と、

 それ以外の人の年間医療費の平均を調べたところ、

 後者の2013年の医療費は約24万9000円と、

 2年前から23%増加。

 一方、初期登録者の医療費は約15万5000円で

 同期間に7%減るなど、着実に成果が表れている。
 

  (P.039)


今後も、“経過観察”が必要でしょう。
1~2年で終わり、ではありませんから。




ローソンの場合(ムチ)


 ローソンは健康診断を未受診の従業員に対し、

 本人の賞与を15%減らすと同時に、

 所属部の部長など上司の賞与も10%カットする

 制度を2013年度に導入した。部下の健康管理に

 ついて上司にも責任を持たせて、

 受診率の向上につなげようという考えからだ。

 従業員の受診率はそれまで97%だったが、

 制度導入を機に2013年度は100%に上昇。

 2014年度も全従業員が受診した。

 健康診断の2次検査に応じない従業員の賞与を

 2~8%減らす取り組みも2013年度に開始。

 こちらも2次検査を受けない従業員が2013年度の

 10人から2014年度は6人に減るなど、

 一定の成果を上げている。

 2015年度は2次検査が必要な従業員全員の

 受診を目指す。
 

  (P.039)


ボーナスを減額されても、健康診断の2次検査を
受けない従業員が一部ですが、まだいるのですね。


なぜ、受診しないのでしょうか?
大病だったらと思うと、結果を知らされることが怖い
からでしょうか?


健康診断は身体に関するものだけで、心の問題は
扱いませんね。心と身体は不可分なものなので、
通常の健康診断とは別に、心の健康状態を診断する
ことも大変重要なことだ、と思います。


次の手法は、そうした心の健康に関する課題を取り
上げたものです。





手法3 復職へのロードマップを作る

メンタル疾患によって、休職した従業員をどのように
ケアし、復職させるかは企業にとって、とても重要な
意味を持ちます。


メンタル疾患の場合、2~3カ月後に再発するケースが
多いそうです。そのため、結局、退職を余儀なくされる
ことがあるそうです。


 労働政策研究・研修機構が2014年に実施した

 「第2回日本人の就業実態に関する総合調査」

 によると、メンタルが不調になった人の13.3%が、

 結局退職している。

 メンタル疾患は、一般的には休養を取り、

 薬物治療やカウンセリングを受けることで、

 「気分が落ち込む」「何もやる気が起きない」

 といった症状自体は数カ月で改善する。

 外出が容易になるため、職場復帰できると

 思いがちだが、業務を遂行できるレベルまでの

 回復には時間がかかる。

 しかも、症状が改善してから2~3カ月後の再発

 が最も多いことから、職場復帰には慎重になら

 ざるを得ない。
 

  (P.039)


メンタルヘルスと同様に、がんを患う従業員に対する
ケアは、企業が取り組むべき課題と言えます。


 最近では、抗がん剤や手術、放射線療法といった

 治療が進歩し、生存率が高まっている。

 完治には至らなくても、治療を続けながら仕事に就く

 ことも十分可能な時代になった。

 その一方で、「がんを抱えた同僚との接し方や、

 どう働いてもらうかなどで悩んでいる企業は多い」と、

 キャンサー・ソリューションズ(東京都千代田区)の

 桜井なおみ社長は話す。

 自身も乳がんの闘病経験があり、起業してがん患者の

 就労支援を手掛けている。

  「部下ががんの治療をして、先月復帰してきた。

 体力的にきついだろうと考えて、営業から内勤に異動

 してもらったが、最近ふさぎ込んでいるようだ」。

 キャンサー・ソリューションズの無料相談窓口には、

 大手企業の管理職からこんな悩みが寄せられた。

 「本人の希望をきちんと聞き出しましたか」と桜井社長が

 尋ねると、その上司は黙ってしまったという。

 電話相談を通して桜井社長が感じているのが、

 こうした職場でのコミュニケーション不足だ。
 

  (P.040)


職場でのコミュニケーション不足の他に、従業員にも問題
があるということです。


 従業員側にも問題はある。「復職に当たって会社の

 人事担当者などと話す際、自分の病気の程度や

 治療内容、経過ばかりを語りがち。

 今の体調を踏まえて、職場で何ができるかを伝える

 ことが重要だ」と桜井社長は話す。

 それに基づき、企業は現部署での復帰か、配置転換を

 認める必要がある。
 

  (P.040)


がんを患う従業員にどう対処したらよいか悩んでいる、
上司や同僚がいることは間違いないでしょう。


専門のカウンセラーに相談することを、選択肢の一つ
に加えるべきでしょう。


最高健康責任者(チーフヘルスオフィサー=CHO)と
いう肩書が登場したそうです。


CEO(最高経営責任者)、CFO(最高財務責任者)、
COO(最高執行責任者)、CTO(最高技術責任者)、
CIO(最高情報責任者)は目にしますが、
CHO(最高健康責任者)は知りませんでした。





手法4 経営陣が「健康責任」を負う

従業員全員の健康管理は、会社が行なうべき
ことであり、健康維持・増進は企業戦略の一環
となってきました。


ということになれば、健康責任を負う経営陣の
中から、相応しい人物をCHOに据えることは、
必然となります。


ロート製薬の場合


 2014年6月、ロート製薬で海外事業を担当する

 ジュネジャ・レカ・ラジュ副社長に、

 同社としては初となる新たな肩書が加わった。

 「最高健康責任者(チーフヘルスオフィサー=CHO)」。

 従業員の健康増進活動を推進し、

 その健康維持に大きな責任を負う役職だ。


 昨年4月にロート製薬に入社。

 その後、副社長に就くのと同時に、山田邦雄会長の

 指名でCHOにもなった。

 「健康は目に見えず、意識しにくい。従業員に健康へ

 の意識と気付きを与えるために、CHOの役職に就いた」。

 ジュネジャ氏は自らのミッションをこう明かす。
 

  (P.040)





(『日経ビジネス』 2015.06.15号 P.041)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.15





 今後はジュネジャ氏が旗振り役となって、健康活動をさらに

 推し進める。

 今年秋のおおさかグレートサンタラン(サンタクロースの衣装

 で走るチャリティーイベント 註:藤巻隆)への2年連続の参加や、

 喫煙者が禁煙に挑む取り組みなどを検討する。

 「健康増進に自発的に取り組む従業員の存在は、

 家族など周囲の人たちの模範にもなり得る」とジュネジャ氏は

 語る。

 健康担当の役員を置く動きが、企業の間で徐々に広がっている。

 これは個人の責任と見なされがちだった従業員の健康維持を、

 経営陣の責任と捉えて、体系的に取り組もうとする企業が

 増えてきたことを象徴する。
 

  (P.041)




ポイント

従業員の健康管理は経営陣の責任

この考え方は、日本中に浸透しているわけでは
ありません。


ですが、遅かれ早かれ、経営陣は自覚しなくては
ならない時期が必ず、到来します。


なぜなら、投資家も、従業員を財産と考え、
その財産を毀損するような企業には投資しない、
という方向へ向かっているからです。




ポイント

アメとムチの戦略は長続きしない

企業が考えたプログラムに参加し、達成度に応じて
ポイントを与え、いろいろな商品と交換できる仕組み
(アメ)や、健康診断の2次検診を未受診の従業員は
ボーナスを減額するという仕組み(ムチ)は一時的には
効果があるでしょう。


ですが、長続きはしないと思います。
そのうちにマンネリ化したり、「やらされ感」で疲弊して
しまうからです。




私見

「アメとムチの戦略」と並行して行なっていくべきことは、
「従業員の健康は会社の財産」であると経営陣が自覚し、
また、従業員も「自分の健康は個人の問題ではなく、
家族の問題でもあり、全社的な問題でもある」
と自覚させる、啓蒙活動が欠かせないことだ、
と考えています。


そうした経営陣、従業員双方の自覚が、やらせている
のでもなく、またやらされているのでもなく、
自ら取り組んでいるという信念につながっていく、
と固く信じています。


経営陣と従業員は、対立ではなく、共創の関係である、
と再定義し直す必要がありそうです。





今特集のキーワードを確認しておきましょう。

キーワード

 健康ブラック企業 
 健康経営 
 エクセレントカンパニー 
 健康経営に関する誤解 
 持続性 




最終回は、
「PART4 経営トップが旗振り役に
 『形だけの罠』に陥るな」
をお伝えします。


ご期待下さい!






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時代は「健康経営」 エクセレントカンパニーの新条件 2015.06.15 <1>







日経ビジネスの特集記事(111)

時代は「健康経営」
エクセレントカンパニーの新条件
2015.06.15




テーマ

今週の特集記事のテーマは

「健康管理は従業員本人の責任」。
そんな前時代的な経営は、もはや通用しない。
SCSK、コニカミノルタ、伊藤忠商事、味の素、東急電鉄、内田洋行──。
従業員の健康こそ企業の競争力を高める経営の最重要課題と位置付け、
その増進や維持を図る「健康経営」に取り組む企業が増えている。
活力ある働き方を実現する「戦略投資」として、健康経営を推進することは、
生産性を高め、優れた人材を集めるエクセレントカンパニーの新条件だ。

 (『日経ビジネス』 2015.06.15 号 P.026)

ということです。






時代は「健康経営」<br />エクセレントカンパニーの新条件

時代は「健康経営」
エクセレントカンパニーの新条件

(『日経ビジネス』 2015.06.15 号 表紙)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.15




今特集のスタートページ

今特集のスタートページ

(『日経ビジネス』 2015.06.15号 PP.026-027)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.15







第1回は、
「PART1 本誌調査では従業員の34%が『病』に
 『健康ブラック企業』の闇」
「PART2 SCSK、健康経営の軌跡
 家族に手紙、残業激減 そして増収増益」
を取り上げます。


第2回は、
「PART3 エクセレントカンパニーへの道
 健康経営、4つのポイント」
を取り上げます。


最終回は、
「PART4 経営トップが旗振り役に
 『形だけの罠』に陥るな」
をご紹介します。




今特集のキーワードは次の5つです。

キーワード

 健康ブラック企業 
 健康経営 
 エクセレントカンパニー 
 健康経営に関する誤解 
 持続性 



PART1には、多くのグラフが掲載されています。
多くのグラフの中から、一部をご紹介します。


一部ですが、本誌の趣旨をよく示すグラフです。
ここまで深刻な実態を如実に表すグラフとは、
正直言って、想像していませんでした。


ただし、本誌のアンケートをもとに集計したものも
含まれているため、日本全体の企業の傾向を
示したとは言えません。


その点を誤解されませんように。



では、本題に入りましょう!


 PART1 本誌調査では従業員の34%が「病」に 
  「健康ブラック企業」の闇 

最近では「ブラック企業」という言葉が下火になって
きました。


ですが、ブラック企業がなくなったわけではありません。
メディアがあまり取り上げなくなっただけです。


「長時間労働」が、従業員の心身を蝕んでいることは
間違いありません。


『日経ビジネス』は今週号で、「健康ブラック企業」を
取り上げました。「長時間労働」が問題を引き起こす
根底にあることを、アンケート結果が示しています。



パワハラによる「うつ病」で休職し、現在は復職して
いる「東京証券取引所1部に上場する名の知れた
企業」の社員のケースが取り上げられています。



健康ブラック企業


情報・通信大手、A社に勤務する吉田幹夫さん
(40代・営業職、仮名)の場合



 「当時の私は、どういう行動を取ってしまうか、

 自分でも予測がつかない状況だった。

 衝動的に電車に飛び込んでしまうことを恐れ、

 通勤時は駅のホームの真ん中を歩くようにしていた。

 上司を刺しても構わないと思い詰め、

 ナイフを忍ばせて会議に出たことも。

 家族の存在がなければ、今ここに自分はいなかった

 かもしれない」。

 吉田さんは過去、仕事が原因のうつ病を2度発症して

 休職。今年に入って職場に復帰した。

 在籍する会社は、東京証券取引所1部に上場する

 名の知れた企業。


 最初に体の変調を訴えたのは5年前。

 部長から営業ノルマ達成を過剰に強いられ、

 プレッシャーに押しつぶされた。

 部長は気に食わないことがあればモノを投げ付け、

 大声で叱責する。

 典型的なパワハラ上司だった。さらに課長からは別の

 命令が飛び、そのたびに双方から叱責され、苦しんだ。

 そうしたある日、ふいに仕事中に耳が聞こえなくなり、

 涙がポタポタと落ちた。


 同僚の勧めで心療内科を受診することになり、

 医師に胸中を打ち明けた時、吉田さんは号泣。

 医師に「重症だ」と告げられ、休職手続きを取った。

 だが、部長は親身になるどころか、

 「おい、病名を言ってみろ。ん? 聞こえないぞ、

 もっと大きな声で言え」などと恫喝した。
 

  (PP.028-029)


言語道断ですね。
吉田さんの上司は異動の対象とはならず、
代わりに吉田さんが他部署に異動になったそうです。


部長も課長も仕事上は「成果」を出し、「優秀」なのか
も知れません。ですが、部下を恫喝するパワハラ
管理職は管理職の資格はない、と思います。


そういう人物は、部下が一人もいない部長や課長に
すべきでしょう。


問題は、当事者間だけでなく、周囲の人間にまで
悪影響を及ぼすことがあることです。


企業のメンタルヘルス不調者の対策を手掛ける
アドバンテッジリスクマネジメントに多くの相談が
寄せられたケースの一部が、以下の内容です。


 「これから自殺する」といった切羽詰まった相談が

 多く寄せられる。同僚がオフィス内で自殺し、

 それを目撃した社員がPTSD(心的外傷後ストレス障害)

 を発症するといった事例の相談もあるという。

 同社の神谷学取締役は「どんな会社であっても

 全従業員の15%ほどが高ストレスを抱えた要注意状態

 にある。このうち7割近くが医師の面談が必要とされて

 いる人たちだ」と指摘する。
 

  (P.029)


つまり、全従業員の10%近くが医師の面談が必要と
されていることになります。非常に多い、と実感します。


PTSDは非常に厄介な病気で、オウム真理教による
地下鉄サリン事件の直接の被害者や、その惨状を
目撃した人たちの中には、未だに病状に苦しんで
いる人たちがいるそうです。


「時間が解決する」というものではないのです。



最近では、内部告発を認める企業が出てきました。
ところが、内部告発を認め調査する制度はあっても、
実際には機能しない、次のようなケースがあります。


 メンタル面で問題を抱え、衝動的に行動を起こそう

 と考えた人は枚挙にいとまがない。

 東証1部上場メーカーの子会社B社では昨年、

 3人の自殺者が出た。

 そうした悲劇に関し同社では箝(かん)口令が

 敷かれて、その原因を探ることは難しいという。

 「今、メンタルを病んで休職している20代の若手が

 3人いる。いずれもある1人の上長のパワハラが原因」。

 同社に勤務する田中実さん(50代、仮名)は、

 状況の悪化を危惧する。

 B社ではこうしたパワハラやセクハラに対し、

 人事部に内部告発する制度が存在する。

 組合はないが、社員の不平や不満を吸い上げ、

 職場環境の改善に結び付ける仕組みだけは整っている

 という。だが、「内部告発すると不利益になるという噂が

 まことしやかに流れ、行使できる環境にはない」

 (田中さん)。
 

  (P.030)


画龍点晴を欠くとはこのことです。
形式的に制度を採用しても、運用面がしっかりしたもの
でない限り、形骸化し、むしろ事態を悪化させます。



ここで、今までお伝えした内容に関連したグラフを掲載
します。


グラフ1

自殺者数の推移

自殺者数の推移

(『日経ビジネス』 2015.06.15号 PP.028-029)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.15



グラフ2

日本男性はOECDで最も長時間労働

日本男性はOECDで最も長時間労働

(『日経ビジネス』 2015.06.15号 P.028)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.15



グラフ3

労災請求・決定件数の推移

労災請求・決定件数の推移

(『日経ビジネス』 2015.06.15号 P.028)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.15






グラフ4



(『日経ビジネス』 2015.06.15号 P.030)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.15



グラフ5



(『日経ビジネス』 2015.06.15号 P.030)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.15



グラフ6



(『日経ビジネス』 2015.06.15号 P.031)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.15




先に、パワハラ上司によって部下がうつ病になったケースを
ご紹介しました。その会社では、パワハラ上司にはお咎め
無しだったようですが、次のようなケースもあることをパワ
ハラ上司は肝に銘じておいたほうがよいでしょう。


従業員の心身の健康管理を怠ったということで、
遺族から訴えられ、経営者や企業が賠償を命じ
られたケースがあります。


 居酒屋チェーン「日本海庄や」では、新入社員が

 入社後の月平均で112時間の残業を繰り返した結果、

 就寝中に急性心不全で死亡。

 2013年に運営会社の大庄に加え、役員個人にも

 総額7860万円の支払いを命じる判決が確定した。

 メンタルヘルス対策の不備による経営リスクを実感

 したにもかかわらず、大庄は「構造改革を進めている

 ところだが、まだ社内的には生々しい案件。

 コメントするには時期尚早」と業務改善の内容を語らない。


 2005年、JR福知山線脱線事故の際、「日勤教育」など

 の行き過ぎた社員教育が指摘されていた西日本旅客鉄道

 (JR西日本)。

 その後も労働環境が改善されたとは言い難い。

 時間外労働が最大月254時間にも達し、うつ病を発症して

 2012年に飛び降り自殺した社員について、大阪地裁は

 今年3月、同社に計約1億円の賠償を命じる判決を出した。
 

  (P.031)


社員の心身の健康に全く配慮しない企業は、後に、
何倍もの大きな代償を払わされることになります。





ポイント

社員の心身の健康管理は、個人に任せきりは許されない

企業は、社員のことを外部には「人財」と言いながら、
内部では奴隷か虫けらのごとく扱うところもあります。


健康ブラック企業は公表すべきです。



さて、PART2では、健康ブラック企業に代わって、
「健康経営」を標榜するだけでなく、実践している
企業を紹介しています。


ケーススタディとなっている企業も、以前は、
健康ブラック企業という暗い歴史がありました。


経営者の本気度が試されています。





 PART2 SCSK、健康経営の軌跡 
 家族に手紙、残業激減 そして増収増益 




IT(情報技術)業界のSCSKの場合

いきなり驚くべきことを語ったのは、SCSK会長の
中井戸信英氏です。


 「ブラック企業の代表と言われたIT(情報技術)業界で、

 1人当たり平均残業時間が月18時間。

 『嘘ついてるんちゃうの』と言われるけど、全部事実や」

 住友商事系のSCSKで会長を務める中井戸信英氏は、

 飄々と語る。

 2014年度のSCSKの残業時間は全社平均で月18時間16分。

 1日当たりに換算すれば、45分程度だ。

 同年度の有給休暇取得率も97.8%に達する。
 

  (P.032)


残業時間を聞いて、「本当なの?」、とにわかには信じられ
なかったのではないでしょうか?


私も最初は疑いました。それで会社が回っていくのだろうか?
企業業績はどうなのか?



本社移転がきっかけでした。
企業ストーリーとしても、よく出来ていると思います。
「企業成功物語」に出てきそうな話です。
トップに「慧眼と実行力」が、あるかどうかの違いです。



 2009年、親会社の住友商事副社長から、

 グループIT企業の住商情報システム(現SCSK)社長に

 転じた中井戸氏の目に、惨憺たる光景が映っていた。

 昼休みには日々の長時間残業に疲れ果てた多くの社員が、

 机の上に突っ伏していた。

 寝袋を持ち込んで休憩室に寝泊まりしている社員もいる。

 机の横幅は90cmしかなく、オフィスには社員がぎゅうぎゅう

 詰めだ。


 「オフィスを移るぞ」

 中井戸氏が着任半年後に下した決断に、誰もが仰天した。

 SCSKが入居していた東京・晴海のオフィスビルは、

 住友グループの所有物。

 そこから突然、グループIT企業が“集団脱走”し、

 東京・豊洲に新しくできたビルへと丸ごと移るというのだから

 無理もない。

 2010年10月に本社移転。従業員らが得た果実は大きかった。

 横幅135cmの机、十分な数の快適なトイレ、社員食堂、診療所、

 薬局──。
 

  (P.031)



その後、どうなったでしょうか?
気になりますね?


ことはそう簡単ではありませんでした。


 「7~9月の時間外勤務時間を半分にせよ」。

 2012年、SCSKを構成する約170の部門の中で、

 特に残業時間の多い32部署に命令が下った。


 会議時間の短縮、業務の取捨選択などに加えて、

 同年度に始まったフレックスタイム制をフル活用し、

 40時間ほどあった部署の平均残業時間を半減させた。

 他の部門も成果を出し、7~9月の全社残業時間は

 大きく減った。

 だが、成果が上がったのは一時的なことにすぎなかった。

 2012年8月に23時間4分にまで減少した平均残業時間は、

 年度末にかけて急上昇。

 2013年3月は再び28時間50分へと膨れ上がった。
 

  (P.034)


その理由は、残業が減ったことで残業手当が減少した
からです。


残業手当は、確かに「手当」で給料プラスαですが、
実際には、残業手当を含めて生活給という意味合いが
濃いですね。


そうしますと、悪循環でまたぞろ残業する人が増えてきた
ということです。


そこで、中井戸さんは奥の手を出しました。
残業が減り、企業業績が向上したら、浮いたお金を
社員に還元しようと思い立ったそうです。
ここが素晴らしいな、と思いました。
なかなかできないことです。


 「社員が削減した残業代を、会社が『ぽっぽないない』

 しないと決めたんや」

 残業代を減らして目標を達成すれば、SCSK全体で

 約6億円が浮く。

 この6億円を、すべて従業員に還元することにしたのだ。

 職場の達成度ごとに12万円、9万円、6万円、ゼロ円を、

 翌年の夏のボーナスに積み増した。

 多くの企業が残業時間削減を掲げるが、うまくいかない。

 理由は単純。

 従業員の生活が、残業代があって成り立っているからだ。

 「教育費もかさむしローンもある。それなのに残業は悪だ、

 やめたまえと言っても、従業員はそれでは仕事が回らない

 と頭で整理するのが当たり前だ」(中井戸氏)。
 

  (P.034)


ただし、それでも死角はあります。
悪名高き「サービス残業」です。
そして、そのサービス残業への対応にも唸らされます。


 残業時間削減の取り組みには「死角」がある。

 違法なサービス残業の発生だ。SCSKは7300人の

 従業員全員に「サービス残業アンケート」を実施している。

 サービス残業を強いられていないか、

 暗黙のうちに付け控えを奨励するような雰囲気に

 なっていないか、などを問う内容だ。

 アンケートによって問題がありそうな部署があったら、

 人事が社員から部門長までヒアリングをかける。

 併せて入退室記録を照合し、徹底的に洗い出すという。

 「サービス残業が発生したら、必ず遡及して残業代を

 支給する。年に1桁レベルではあるが、実際に支払った

 ケースがある」(古森氏)というから、決して名ばかりの

 調査ではない。
 

  (P.035)

* 古森氏:人事部を担当する常務 (註:藤巻隆)


中井戸氏がさらに行なったことは、従業員の家族宛に
手紙を複数回書いたことです。「お願い」の手紙でした。


 全従業員の家族に中井戸氏から1通の手紙が届いた。

 題名は「禁煙・健康増進(ウオーキング)キャンペーン

 についてのお願い」。

  「私は、経営の根幹として第一に役職員の健康を

 あげています。次に当然のことながら役職員の

 健康的な活動の基になる健康で充実した家庭生活の

 大切さをあげています。(中略)『役職員の健康』無く

 して『企業の発展』はあり得ません」

 用紙3枚にわたり、中井戸氏が推敲を重ねた文章が

 記されていた。従業員の健康増進への協力を、

 家族に求めた。
 

  (P.032)




 「記念日やお子様の学校行事の際に、

 積極的に有給休暇を活用されるよう

 お声がけください」

 2013年3月、またもや中井戸氏は従業員家族への

 「手紙」攻撃を発動した。

 禁煙、ウオーキングに加えて、今回は「有給休暇の

 取得奨励」を呼びかけた。

 同年4月、「スマートワーク・チャレンジ20」と呼ぶ

 取り組みを開始。目標は残業時間20時間と、

 有休取得日数20日(100%消化)と定めた。
 

  (P.034)


こうした「心に訴える」施策を行なったのは、
制度を作っただけ、お題目を並べただけでは、
成果に結びつかないからです。


綺麗ごとばかりではないか、と思われたかもしれません。
確かにそうかもしれません。


表面に出てきたことだけで判断することは危険である
ことは、十二分に承知しています。


それでも、ここまでトップが従業員や従業員の家族に
まで気配りする会社は稀だ、と考えています。


ただ一つ言えることは、こうした活動は持続性が大事だ、
ということです。


目標を達成したら終わりではなく、さらに高みに向かって
活動を切らさないことがもっと大切なことです。


むしろ、これからが本番とも言えます。





今特集のキーワードを確認しておきましょう。

キーワード

 健康ブラック企業 
 健康経営 
 エクセレントカンパニー 
 健康経営に関する誤解 
 持続性 




次回は、
「PART3 エクセレントカンパニーへの道
 健康経営、4つのポイント」
をお伝えします。


ご期待下さい!






記事を読んで、面白かったら
ポチッとしてください。






孤高の製造業 ファナック 利益率40%を生む異様な経営 2015.06.08 <3>







日経ビジネスの特集記事(110)

孤高の製造業
ファナック
利益率40%を生む異様な経営
2015.06.08




テーマ

今週の特集記事のテーマは

世界シェア8割の商品を持ち、営業利益率40%という
最強製造業。
それが今、株式市場を沸かせる産業用ロボットメーカー、
ファナックだ。
米アップルや独自動車大手も、ファナック無しでは
成り立たない。
極端に少ない情報開示から、実態はベールに包まれて
きたが、最大80%という大胆な株主還元策を打ち出し、
話題の中心に躍り出た。
富士通の傍流部門から始まったファナックが、
なぜここまで強くなったのか。
あえて常識の逆を行く、異様なビジネスモデルが
そこにはあった。

 (『日経ビジネス』 2015.06.08 号 P.026)

ということです。






孤高の製造業<br />ファナック<br />利益率40%を生む異様な経営

孤高の製造業
ファナック
利益率40%を生む異様な経営

(『日経ビジネス』 2015.06.08 号 表紙)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.08




今特集のスタートページ

今特集のスタートページ

(『日経ビジネス』 2015.06.08号 PP.026-027)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.08







第1回は、
「PROLOGUE 利益の最大8割を株主還元
 満額回答に隠された真意」
を取り上げました。


第2回は、
「PART1 あえて常識の逆を行く
 『異様』なのにはワケがある」
を取り上げました。


最終回は、
「PART2 偉大な父との葛藤
 カリスマを継ぐ『雑用係』の意地」
「PART3 稲葉善治社長が独白
 創業者がいなくても勝ち続ける」
 
をご紹介します。




今特集のキーワードは次の5つです。

キーワード

 株主還元 
 黄色いロボット 
 高収益 
 カリスマとの葛藤 
 永続性 



今週号の表紙と特集の写真をご覧になって、
お気づきの点があると思います。

ロボットの色が黄色であることです。


黄色は、ファナックのコーポレートカラーであり、
「戦いの色」だそうです。


今年になって、緑のロボットを発売したそうです。
緑はエコカラーです。


黄色いロボットと緑のロボットの違いは、
何でしょうか?


黄色いロボットは、ロボット単独で動きます。
黄色いロボットが動いている時には、
人は近づけません。危険だからです。


一方、緑のロボットは人と一緒に作業をします。
仮にロボットアームが人にぶつかっても安全
です。なぜなら、人に接触した瞬間に停止する
ようになっているからです。


ファナックという社名には、馴染みがないかも
しれません。BtoB(企業向けビジネス)の会社
だからです。


一般人が製品を目にすることが殆どないから
です。


NC(数値制御)装置や産業ロボットメーカーとして、
国内外で圧倒的な地位を築いています。


ファナックは、当初は富士通ファナックでした。
富士通の一部門に過ぎず、しかも傍流でした。


その後、富士通ファナックは富士通から独立し、
ファナックとなりました。


ファナックの創業者は、富士通でNC装置やロボット
部門の責任者であった、稲葉清右衛門氏です。
カリスマと言われています。


ファナックは高業績企業です。


その一端をご覧ください。


グラフ1

ファナックは飛び抜けている<br />・主要製造業と競合各社の売上高営業利益率

ファナックは飛び抜けている
・主要製造業と競合各社の売上高営業利益率

(『日経ビジネス』 2015.06.08号 P.027)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.08



グラフ2

高い利益率を誇る<br />・ファナックの売上高と営業利益率、<br />東証1部上場製造業の営業利益率

高い利益率を誇る
・ファナックの売上高と営業利益率、
東証1部上場製造業の営業利益率

(『日経ビジネス』 2015.06.08号 P.027)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.08






では、本題に入りましょう!


 PART2 偉大な父との葛藤 
 カリスマを継ぐ「雑用係」の意地 


ファナックを語る時、実質的な創業者、稲葉清右衛門氏に
触れないわけにはいきません。


今年(2015)、90歳になるそうです。
すでに引退されていますが、彼の精神はファナックの隅々
にまで浸透しています。


カリスマであっただけに、社内に大きな問題を抱えていました。


 ファナックは清右衞門が作り上げた会社だ。

 日本が高度成長期に差し掛かろうとしていた56年、

 富士通の技術者として、工作機械の動きを制御する

 「NC(数値制御)装置」の開発に成功したのが全ての

 始まりだった。

 NC装置の専業メーカーとして富士通から分離独立

 したのが72年のこと。清右衛門はその3年後に社長に

 就任すると、米ゼネラル・モーターズなど世界大手との

 提携に奔走しながら、自らの「教義」でファナックを染め

 上げていった。
 

  (P.036)





実質的な創業者、稲葉 清右衛門 氏

(『日経ビジネス』 2015.06.08号 P.030)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.08





清右衛門氏のエピソードが語られます。
「厳しさ」が感じとれる内容です。


 利益に対する執着は並大抵ではなく、

 「万が一、赤字でも出そうものなら、黒字になるまで

 いじめられた」とファナックのあるOBは振り返る。

 規律が乱れぬように目を光らせ、信賞必罰を徹底

 していた。NECや沖電気工業といった競合が続々と

 脱落していく中で、ファナックは世界シェア5割の企業

 へと駆け上がっていった。
 

  (P.037)



海外の取引先にとっても、
ファナックは、「ドクターS(清右衛門)・イナバ」の会社
と見なされていたようです。



 「ドクターS(清右衞門)・イナバの会社だ」。

 2000年代に入ってもなお、インドの工作機械メーカー

 首脳はそう、ファナックを評していた。

 時の社長が誰であろうと、顧客も仕入れ先も社員も皆、

 清右衛門を見ていた。

 実際に、ファナックの最終的な意思決定はすべて、

 清右衛門が下していた。
 

  (P.037)



20年以上前から、「高収益企業」でした。


 1983年に東証1部に上場して以降の売上高営業利益率

 は平均で31%。リーマンショック後、機械メーカーが軒並み

 赤字に沈んだ2010年3月期でも、ファナックは21.7%の営業

 利益率を守り抜いた。誰の目から見ても、清右衛門は「最強

 の製造業」を率いるカリスマだった。
 

  (P.037)




表1

独自の「教義」で高収益企業を築いた

独自の「教義」で高収益企業を築いた

(『日経ビジネス』 2015.06.08号 P.037)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.08




最強の製造業であっても、企業が大きくなり、
経営者が末端の社員まで目が行き届かなく
なってくると、綻びが生じてきます。


長年の垢が溜まってきた、とも言えます。
取引先から「ファナックがおかしい」という声が
聞こえ始めます。


 「ファナックがおかしい」。2010年代に入ってから、

 NC装置の顧客である日本の工作機械メーカーから、

 こんなボヤキが聞こえるようになった。


 新商品が出てくるペースが鈍っていた。

 不満を抱くようになった大口顧客のDMG森精機は、

 過半を占めていたファナックからのNC装置の購入

 比率を一時、ぐっと引き下げた。


 iPhoneの筐体を削るロボドリルの特需と、元来の強い

 ビジネスモデルが覆い隠してはいたが、ロボットや

 加工機の分野でも、競合メーカーからの遅れがちらほら

 と出始めていた。販売の最前線にいるファナック社員が

 異変に気が付いていなかったわけではないのに、

 すぐに手を打てなかった。
 

  (PP.037-038)



カリスマ経営者が陥りがちな状況です。
すべてトップダウンで決定・指示するため、
下の者は指示待ちになってしまうのです。


指示を無視して行動しようものなら、
雷が落ち、自ら行動することができなく
なってしまうのです。


 それが、超ワンマンの限界だった。

 ファナックはひとたび清右衛門が決めてしまえば、

 ものすごいスピードで動く組織だ。

 東日本大震災でマイコンの調達が滞るや否や、

 NC装置の設計を、そのマイコンが不要なように変更

 して世界への供給責任を果たした。

 だが、彼が決定しない限り、物事は一向に前に進まない。

 現場からの技術改良の提案に対し、「何でこんな物を

 作るんだ」と怒鳴り散らすこともあった。

 停滞の兆しが表れていた。
 

  (P.038)




経営陣




(『日経ビジネス』 2015.06.08号 P.038)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.08





(『日経ビジネス』 2015.06.08号 P.039)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.08





このような状況になってきても、
「猫の首に鈴をつける」
ことができませんでした。


最後は、清右衛門氏の息子である、
現社長、善治氏が引退を進言するしか、
選択肢は残されていませんでした。
そこに至るまでには長い年月が必要でした。


 長きにわたる独裁で社員は萎縮し、清右衛門の指示を

 じっと待つばかり。そんなファナックと清右衛門の姿を、

 悶々としながら見ていたのが、息子で現社長の稲葉善治

 だった。

 大学を卒業後、最初に入社したいすゞ自動車で一生働く

 つもりだった善治は35歳の時、当時いすゞの社長だった

 岡本利雄と清右衞門の取り決めでファナックに引きずり

 込まれた。


 2003年に社長に就いた後も、父の陰の存在であることに、

 変わりはなかった。「決められない社長だ」と社内外で

 揶揄されながらも、「創業者」を引き立てることがファナック

 の繁栄にとって最善なのだと、ぐっと耐えてきた。

 だからこそ、目立ち始めた父の判断の遅れや誤りに、

 誰よりもいら立っていた。

 ファナックのビジネスモデルは緻密に組み上げられている

 ため、どこかが綻ぶと一気に瓦解しかねない。

 「今のままでは、ファナックを100年、200年と続く企業にする

 ことはできない」。

 富士山麓に帝国を作り上げた頃の父と同じ、60代半ばに

 なった2013年夏、善治は心を固める。清右衛門に引退を

 求めたのだ。
 

  (PP.038-039)


親子であるがゆえに、葛藤は相当なもので
あったろう、と想像されますが、実際には、
外部からは窺い知ることはできません。


引退の時期は、自ら決めなければなりませんが、
それが最も難しいことなのかもしれません。


いつかは自分も引退しなくてはならない、
と頭の中では理解しているつもりでも、
カリスマゆえに、引退の時期を先延ばししてきた、
というのが実情でしょう。


誰かに背中を押してもらう必要があったのです。


 メディアに対してさえ、「ファナックは生きがい」と

 言ってはばからぬ父だ。めっぽう気が強く、

 ゼロか100かしかない性格だということは誰よりも

 よく知っていた。案の定、父は最初、反論した。

 だが、最後は息子の意思を受け入れた。

 世代交代の必要性は、清右衛門本人も強く感じて

 いたに違いない。

 でも、自分からは表舞台を降りられなかった。

 息子に諭されて、ようやく最後の決断に踏み切れた

 のだ。
 

  (P.039)



善治氏も、これで一つの仕事を成し遂げた、
という気持ちになったのかもしれません。
吹っ切れたのです。


引退勧告以後、ファナックは先代の方針から
大きく舵を切ります。


カリスマ経営ではなく、集団経営への移行です。


しかも、部門責任者である取締役に大幅な権限
委譲をしました。


善治氏によれば、「プロに任せ、自分は雑用係に
徹する」ということになります。


 2013年10月15日、善治は3人の副社長を、

 代表取締役に引き上げた。

 同時に、ロボットやNC装置、産業機械と

 いった商品ごとの事業本部へと、組織を

 再編した。

  「停滞を打破する」という善治の姿勢は

 明快だった。目指したのが、1人のカリスマ

 に頼らない企業づくりである。

 この日を境に、ファナックの役員たちの動き

 はがらりと変化した。

 15分で終わっていた役員会は1~2時間、

 続くようになった。

 清右衞門の「鶴の一声」を聞く場ではなく、

 議論をする場に変わったからだ。
 

  (P.039)



栃木県壬生町の70万平方メートルの土地を
購入することを決めるために動いたのは、
金庫番である副社長の権田与志広氏と、
製造統括の副社長、山口賢治氏でした。


 わずか4カ月後の9月には栃木県知事の福田富一と

 善治が並んで、握手を交わしていた。

 投資額は1000億円。

 栃木県では本田技術研究所が進出した1980年代

 以来という、30年ぶりの大規模案件だ。

 善治は「1日遅れで(土地の一部だけ買われて)

 『虫食い』になったら最悪だぞ」とハッパをかけこそ

 したが、主導したのは副社長たちだ。

 「私は決めない。最後はその事業の責任者の意見

 が一番重要です」と言い切る善治らしさが鮮明に

 表れた一件だった。
 

  (P.040)



気になることは、清右衛門氏は息子の善治氏に
後継者としてカリスマ経営を続けて欲しかったので
はないか、ということです。


しかし、善治氏は父親のやり方を否定しました。


 善治はワンマンだった父親とは正反対のリーダー

 になることをあえて、選んだ。

 「規模が小さかった昔はワンマン経営でよかった

 かもしれないが、今は最前線のみんなの意見を

 結集しなければ、速く正しく動けない」という思いが

 あるからだ。事業の責任者に決断を委ねることで、

 いずれは自分の立場を受け継ぎ、次の「雑用係」

 になれる人材を育てようという意図もある。
 

  (P.040)




緑のロボット

緑のロボットを販売したことは、父親とは異なる
方向性を打ち出した象徴と言えるかもしれません。


なぜなら、清右衛門氏は産業ロボットは人間と
一緒に働くことを全く想定していなかったからです。


緑のロボットは、人間と一緒に作業するロボットです。
根本から発想が違います。


 ファナックの根幹である研究開発にも変化の兆し

 が見え始めた。象徴が、柵を隔てずに人と一緒に

 働くことができる「緑のロボット」だ。

 外側がスポンジで覆われており、人が触れると

 止まるため、作業員のすぐそばに置いても危険が

 少ない。

 守り抜いてきた企業カラーの黄色を逸脱しているし、

 「ロボットは人とは別の場所で働くものだ」と語って

 いた清右衛門の考え方にはそぐわない。
 

  (P.040)



時代の流れがあります。
世界中の顧客の求める技術が変わったからです。


 求められる技術は変わった。生産設備や製品、

 人間がネットでつながるドイツの「インダストリー4.0」や、

 米国の「インダストリアルインターネット」。

 こうしたモノ作りの革命が進めば、人とロボットが

 同じ生産ラインで協力しながら働く場面が増えていく。

 「ラストチャンスだった」と善治は言う。

 もう少し遅れれば、ファナック抜きで市場が確立され

 かねなかった。だから、あえて父の教義を踏み越えた。

 今、以前よりも明らかに社員は明るくなり、自らの意見

 を口にするようになった。
 

  (PP.040-041)




柵がいらず、人と一緒に働くことが<br />できる「緑のロボット」

柵がいらず、人と一緒に働くことが
できる「緑のロボット」

(『日経ビジネス』 2015.06.08号 P.041)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.08




善治氏が進んでいこうとする道はどこなの
でしょうか?


キーワード

原点復帰

原点回帰という言葉はよく見にしますが、
原点復帰はどのような意味でしょうか?


 善治にとって、今やっていることはファナックの

 「原点復帰」なのだそうだ。

 原点復帰とは、機械制御の分野で使う専門用語だ。

 例えば、工作機械が部品を精緻に削ることができる

 のは、原点に対して今、工具を付けた軸がどの位置

 にあるかを常に把握しているからだ。

 ロボットが定められた点を溶接できるのも、原点に

 対して溶接ガンがどこにあるかを自ら理解しているからだ。

 しかし時折、機械がずれたり、急に電源が切れたりして、

 機械自身、軸の位置を見失ってしまうことがある。

 その場合はいったん、原点に立ち戻る。

 原点復帰は、正確な仕事を続けるために、必要な動作だ。

 ファナックには今、それが求められているという。
 

  (P.041)



ファナックにとって、原点とは「『企業は何のために存在して
いるのか』という、清右衛門が投げかけ続けた問いでは
ないだろうか」(P.041)、と『日経ビジネス』は述べています。




ポイント

「社員がいて、1兆円さえ手元にあれば、
何があったってファナックを再生できる」




これ以上の内部留保は必要ない、
という明確な意思表示をしました。




いよいよ、最後のパートとなりました。
今回は通常より、かなり長くなりました。
もう少し、お付き合いください。


 PART3 稲葉善治社長が独白 
 創業者がいなくても勝ち続ける 

独白ですので、ポイント思われる箇所を
抜粋します。


最後に、私見を書きます。



稲葉善治社長

稲葉善治社長

(『日経ビジネス』 2015.06.08号 PP.042-043)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.08






 社員がいて、今の内部留保である1兆円があれば、

 最悪の事態に見舞われても乗り切れる。

 ファナックは復活できる。

 こう考えて、1兆円を超える分を還元することにした

 のです。
 

  (P.042)





 ファナックは「健全な形で永続性を保つ」という意思を

 持っています。そのためには、社会に付加価値を

 生み出して、勝ち続けなければいけません。

 勝ち続けるためには、我々が勝てる市場で、

 戦わなければいけない。

 例えば、(人型など)サービスロボットには手を出しません。
 

  (P.042)





 利益を出し続けるためには、競合他社よりも強くなければ

 いけません。競合他社よりも強くあるためには、強い企業

 体質が必要です。開発、生産、販売、サービス、すべてが

 強くなければいけない。それを役員、社員がどう理解するか。

 理解度が強ければ強いほど、会社は強くなっていきます。

 ファナックの高収益は、企業体質が強いことの証明だと

 考えています。
 

  (P.042)





 私はファナックの伝統、文化がずっと続いていくことを期待

 しています。今やっているのは、そのための「原点復帰」です。

 創業当初の思想は素晴らしいと思うので、基本的に受け継い

 でいく。むしろ、ファナックが大きくなって、ぐちゃぐちゃになって

 しまった部分を、元に戻そうとしています。
 

  (P.042) 





 100年とか200年ではなく、もっと長く、この企業が続くと

 期待をしているんです。

 法人って、「法律上認められた人格」と書きますよね。

 法律の上では、我々人間と同じ存在なんです。

 私たちは生身の人間だから、寿命も体力も限られています。

 けれども法人は、法治国家が続く限り、何千年と永続できる

 可能性を持っている。
 

  (P.043) 





 仕事はプロたちがしていくので、社長は「雑用係」でいい

 のです。雑用係はしょうがないから、矢面に立つ。

 それに、法人ですから、社員や役員は新陳代謝していきます。

 我々の一番大きな責任は、次の世代に健全な形でタスキを

 つなぐことなんです。
 

  (P.043)





 ファナックはパブリックな会社で、誰もオーナーではあり

 ません。

 (株主として)与えられた権利はないんです。

 皆が体制に納得しなければついていかないし、皆が納得して

 ついていく体制を時代に応じて作り続けなければいけない。

 それができている会社は世の中に、それほど多くないと

 思いますよ。
 

  (P.043) 





ポイント

永続性、サステナビリティーを保つ





私見


最初、ファナックは特異な企業である、という印象を持ちました。
ところが、記事を読み進んでいくうちに、考えが変わりました。


利益を上げていくことで、顧客にサービスを提供し続けること
が可能になり、永続性を保つことができる、と考えました。


ファナックが最も恐れるのは、顧客が自社から離れることです。
いつまでも顧客から選び続けられれば、長期的に利益を上げる
ことができます。その利益を顧客や株主に還元することで、
お金がうまく循環していきます。


200年、300年、それ以上に企業が勝ち残った上で、存続させる
ためには、ファナックの企業理念を時代に合わせて調整しながら、
タスキをつないでいくことでしょう。





今特集のキーワードを確認しておきましょう。

キーワード

 株主還元 
 黄色いロボット 
 高収益 
 カリスマとの葛藤 
 永続性 



最後まで読んでいただき、ありがとうございました!






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孤高の製造業 ファナック 利益率40%を生む異様な経営 2015.06.08 <2>







日経ビジネスの特集記事(110)

孤高の製造業
ファナック
利益率40%を生む異様な経営
2015.06.08




テーマ

今週の特集記事のテーマは

世界シェア8割の商品を持ち、営業利益率40%という
最強製造業。
それが今、株式市場を沸かせる産業用ロボットメーカー、
ファナックだ。
米アップルや独自動車大手も、ファナック無しでは
成り立たない。
極端に少ない情報開示から、実態はベールに包まれて
きたが、最大80%という大胆な株主還元策を打ち出し、
話題の中心に躍り出た。
富士通の傍流部門から始まったファナックが、
なぜここまで強くなったのか。
あえて常識の逆を行く、異様なビジネスモデルが
そこにはあった。

 (『日経ビジネス』 2015.06.08 号 P.026)

ということです。






孤高の製造業<br />ファナック<br />利益率40%を生む異様な経営

孤高の製造業
ファナック
利益率40%を生む異様な経営

(『日経ビジネス』 2015.06.08 号 表紙)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.08




今特集のスタートページ

今特集のスタートページ

(『日経ビジネス』 2015.06.08号 PP.026-027)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.08







第1回は、
「PROLOGUE 利益の最大8割を株主還元
 満額回答に隠された真意」
を取り上げました。


第2回は、
「PART1 あえて常識の逆を行く
 『異様』なのにはワケがある」
を取り上げます。


最終回は、
「PART2 偉大な父との葛藤
 カリスマを継ぐ『雑用係』の意地」
「PART3 稲葉善治社長が独白
 創業者がいなくても勝ち続ける」
 
をご紹介します。




今特集のキーワードは次の5つです。

キーワード

 株主還元 
 黄色いロボット 
 高収益 
 カリスマとの葛藤 
 永続性 



今週号の表紙と特集の写真をご覧になって、
お気づきの点があると思います。

ロボットの色が黄色であることです。


黄色は、ファナックのコーポレートカラーであり、
「戦いの色」だそうです。


今年になって、緑のロボットを発売したそうです。
緑はエコカラーです。


黄色いロボットと緑のロボットの違いは、
何でしょうか?


黄色いロボットは、ロボット単独で動きます。
黄色いロボットが動いている時には、
人は近づけません。危険だからです。


一方、緑のロボットは人と一緒に作業をします。
仮にロボットアームが人にぶつかっても安全
です。なぜなら、人に接触した瞬間に停止する
ようになっているからです。


ファナックという社名には、馴染みがないかも
しれません。BtoB(企業向けビジネス)の会社
だからです。


一般人が製品を目にすることが殆どないから
です。


NC(数値制御)装置や産業ロボットメーカーとして、
国内外で圧倒的な地位を築いています。


ファナックは、当初は富士通ファナックでした。
富士通の一部門に過ぎず、しかも傍流でした。


その後、富士通ファナックは富士通から独立し、
ファナックとなりました。


ファナックの創業者は、富士通でNC装置やロボット
部門の責任者であった、稲葉清右衛門氏です。
カリスマと言われています。


ファナックは高業績企業です。


その一端をご覧ください。


グラフ1

ファナックは飛び抜けている<br />・主要製造業と競合各社の売上高営業利益率

ファナックは飛び抜けている
・主要製造業と競合各社の売上高営業利益率

(『日経ビジネス』 2015.06.08号 P.027)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.08



グラフ2

高い利益率を誇る<br />・ファナックの売上高と営業利益率、<br />東証1部上場製造業の営業利益率

高い利益率を誇る
・ファナックの売上高と営業利益率、
東証1部上場製造業の営業利益率

(『日経ビジネス』 2015.06.08号 P.027)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.08






では、本題に入りましょう!


 PART1 あえて常識の逆を行く 
 「異様」なのにはワケがある 


前回、黄色いロボットについて少しだけお伝えしました。
今回は、このロボットについて詳細にお伝えしていきます。


なぜ、高収益企業なのか?

ロボットが超高性能で高価格であるからか?

また、従業員の待遇や生活は他企業とどう異なるのか?


そのような点に注目して、ご覧ください。
きっと驚きの連続となることでしょう。


私自身、今特集を読んで、本当に驚きました。
大金があったら、ファナック株を購入し、長期保有したい、
と心から思いました。


ファナックは、とても魅力的な会社だからです。


まず、独自動車メーカーのフォルクスワーゲンで、
異変が起きているという話からお伝えしていきます。


 独ウォルフスブルクにあるフォルクスワーゲン(VW)

 の本社工場。無骨なオレンジ色のロボットが「腕」を

 器用に動かしながら、小型車「ゴルフ」の車体を組み

 立てていく。

 工場内を埋め尽くすオレンジ色は、ドイツの老舗機械

 メーカー、クーカ(KUKA)製のロボットであることの証しだ。

 しかし、オレンジ一色だった工場にここ数年、異変が

 起きている。鮮やかな黄色のファナック製ロボットが

 目につくようになってきたのだ。

 VWは世界の工場でKUKAを採用してきた。

 ダイムラーやBMWもそうだった。ドイツが世界に誇る

 自動車産業の陰の立役者がKUKAだ。

 その牙城を、ファナックが切り崩し始めた。
 

  (P.030)




下の2枚の画像が、ファナックとクーカの産業用ロボットです。
素人の私には、色以外にどう違うのか、区別がつきません。




(『日経ビジネス』 2015.06.08号 P.030)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.08





(『日経ビジネス』 2015.06.08号 P.031)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.08




ファナックがクーカの牙城を侵食し始めたきっかけに
ついて、『日経ビジネス』は次のように述べています。
「安さ」がキーポイントです。


 VWが進めている開発・生産改革の中で調達先を

 洗い直したところ、ファナックの優位性が鮮明に

 なったことだった。

 VWの工場担当者は言う。「同じ技術、信頼性、

 品質で比べた時に、KUKAより安かった」。

 VWは明言しないが、1割程度の価格差があった

 とみられる。
 

  (P.030)


価格に1割程度差があったということは大きいですね。
ロボットの納入台数によりますが、納入台数が増えれ
ば増えるほど総額に大きな差が出ます。


 ウォルフスブルクで毎日1700~1800台生産される

 ゴルフのフロアパネルは今、黄色いロボットが組み

 立てている。ファナックがVWへ出荷したロボットは

 既に2000台を数えた。設備コストが1割下がれば、

 自動車メーカーは世界で競争力のある工場を作り

 やすくなる。今後、ドイツ以外のVWの拠点でも導入が

 進む可能性は高い。

  「彼らが優れたロボットを作ったことは認めなくては

  ならない」。KUKAのCFO(最高財務責任者)である

  ピーター・モーネンは言う。
 

  (P.031)



補足説明があります。


 ファナックがドイツでシェアを拡大する最大の理由は、

 VWが言うように「安さ」である。

 製造業では世界でも類を見ないほど高い、売上高

 営業利益率40%を誇るファナック。

 多くの人は、こんな高収益企業はよほど高付加価値

 の製品を、高価格で売っているはずだと想像するだろう。

 だが、ファナックの商品戦略は、その真逆を行く。

 産業用ロボットでも、工作機械の司令塔であるNC

 (数値制御)装置でも、「iPhone」など世界中のスマート

 フォンを削っている加工機「ロボドリル」でも、ファナック

 の製品は競合メーカーより、安い。

 しかも、性能や機能は日本やドイツの競合を上回って

 いるわけではない。
 

  (P.031)



ファナックのロボット納入の理由は「安さ」にあることが、
分かりました。


ですが、安いのにどうして売上高営業利益率が約40%
に達しているのか、疑問ですね?


表1をご覧いただくと分かりますが、売上高営業利益率の
比較で、ファナックは40%に対し、クーカは6~7%程度
しかありません。乖離しています。


その疑問を解く鍵はドイツにはありません。
日本国内にあったのです!



 山梨県忍野村に林立するファナックの黄色い工場群。

 その一つをのぞくと、数台のロボットが自己増殖する

 かのように、自動車工場へ出荷するロボットの腕を

 組み立てていた。部品を削る、バリを取るといった

 機械加工もほとんど、ロボットが手掛ける。

 ファナック副社長の山口賢治は「組み立て工程の8割は

 自動化できており、配線以外は今秋までにロボットで

 できるようになる」と言う。


 他社とは真逆の「少品種大量生産」に徹しているからだ。

 ファナックでは多くの場合、顧客からの単純な特注品の

 申し入れは断る。だが、顧客との会話の中で聞き出した

 情報から、広く通用しそうなニーズを抽出すると、

 そのたびに量産品へ反映させる。

 だから、ファナックの製品は、使い勝手の改善など細かい

 部分も含め、頻繁にマイナーチェンジが繰り返される。
 

  (P.031)



以上の話を聞きますと、汎用品を製造しているように
聞こえますね。そうなると、コモディティー(ありふれた製品)
となり、さらに買い叩かれ利益を削ることになるのでは?


そう考えるのが自然だ、と思いますね。
ですから、これだけでは真意は分かりません。


おそらく、次の説明を聞いても納得出来ないと思います。


 連結売上高の8割超が海外向けであるにもかかわらず、

 全量を国内生産にこだわるのも、日本で一極生産する

 方が、顧客ニーズを早く、量産品に反映しやすいからだ。

 競合メーカーが「地産地消」を旗印に、海外生産を拡大

 しているのとは対照的だ。

 世界中の様々な工場で使われる商品だから、使用環境

 が変わっても壊れにくいことを最重視する。

 「狭い路(みち)を真っ直ぐに」という創業者の「教義」を

 今もかたくなに守り、むやみに最先端技術や畑違いの

 分野には踏み出さない。とがった新技術ではなく、使い慣れた

 技術を用いることで信頼性を高める。あえて平凡な性能に

 しているのだ。

 こうしてNC装置で世界の5割、ロボットで2割、スマホ用加工機

 で8割という高シェア企業になった。顧客の中心が先進国から

 新興国にシフトしても、同じシェアを維持している。
 

  (P.032)




表1


(『日経ビジネス』 2015.06.08号 PP.032-033)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.08





ポイント

サービスファースト




 製造業では生産、販売、サービスという優先順位が

 一般的だろう。しかし、社長の稲葉善治は「サービス

 ファースト」と言ってはばからない。


 バンコクにあるファナックのタイ拠点。事務所の大半を

 占める倉庫を訪れると、モーターや電子基板といった

 交換用の部品が山積みになっていた。


 ここでは新規顧客への販売よりも、既存顧客への

 サービスが優先事項だ。ファナックがタイで納めたNC装置

 や機械は約4万5400台。顧客から「調子が悪い」と連絡が

 入ると、総勢32人のサービスエンジニアが部品を持って

 駆けつける。
 

  (P.032)


サービスを最優先にするために、過剰とも言えそうな部品
を在庫しているそうです。


これには明確な理由があります。
顧客をつなぎとめておくためです。
ファナックは、顧客にとってなくてはならない存在になって
いるのです。


 顧客のNC装置が壊れた場合、ファナックはまず、

 顧客の元に駆けつけてこの装置を持ち帰る。

 代わりに別の正常な装置を、顧客の機械に取り付ける。

 壊れたNC装置はファナック社内で直し、ほかの顧客で

 故障があった際、今度はその交換のために持っていく。

 高いシェアを武器に、NC装置が顧客の間を何十年にも

 わたって循環する仕組みを作り上げた。

  「決めているわけじゃないのにファナックから買う比率が

 100%近い」(工作機械中堅ツガミCEOの西嶋尚生)。

 顧客が一度はまったら、抜け出したくなくなるとまで言われる

 類のないビジネスモデルで、高収益を上げてきた。
 

  (P.033)




「逆張り」投資が生む圧倒的な収益

一般的に言われていることは、内部留保を少なくし、
設備投資や株主還元するべきだ、というものです。


ファナックは手元資金が1兆円あります。
企業規模から見ると、過剰とも言える金額です。


それにも明確な理由がありました。


 ファナックは2015年3月期の売上高の1.4倍に上る

 約1兆円の手元資金を抱えている。

 社長の善治は「1兆円あれば、需要縮小や競合の

 攻勢、工場が天変地異に見舞われるなどの危機が

 一遍に来ても対応できる」と、戦略的な資金である

 ことを強調する。

 ファナックが恐れるのは、株価が下落することでも、

 投資家から不興を買うことでもない。

 供給責任を果たせずシェアを落とし、顧客を失うことだ。
 

  (PP.033-034)



世の中には、「顧客第一主義」を標榜している企業は
ゴマンとあります。


ですが、本当に顧客の立場に立って、企業を行なって
いる企業がどれだけあるでしょうか?


とても疑問ですね。顧客を騙し、不正に利益を上げている
企業がなかにはあります。


社訓に掲げていることは、未だ実現できていない、
と考えるのが妥当とさえ思えます。


その点で、ファナックは利益の源泉は顧客にあると定義
しています。ですから、顧客を失うことを恐れているのです。
「サービスファースト」とは、その意思表示をしたもの、
と言えます。


下の表2をご覧ください。
投資家が重要視するROE(自己資本比率)は、
ファナックは16%で、東証1部製造業の平均の2倍です。


収益性(当期利益を売上高で除したもの)が同比較で、
7倍と圧倒的だからです。


ですから、効率性(売上高を総資産で除したもの)や、
財務レバレッジ(総資産を自己資本で除したもの)が
同比較で下回っていても、ROEが2倍を維持できるの
です。


表2


(『日経ビジネス』 2015.06.08号 P.034)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.08




ただし、善治社長はROEにこだわっていない、
と明言しています。


その理由は――。

「『投資家と会っている暇があれば、お客さんに会いたい』

 と善治は語る」

サービスファースト = カスタマーファースト、
であるからです。





社員の衣食住 全部ファナック
  
富士山麓に本社・研究所・工場があるファナックで
働く従業員は、どんな待遇でどんな生活を送って
いるのでしょうか?


『日経ビジネス』は、こんな世俗的な関心事にも
取材しました。


仕事は厳しいでしょうが(どこでも同じ?)、
はっきり言って待遇は相当に良いです。


 忍野村で働く約2000人の社員には高学歴の

 理系卒が多い。

 彼らは入社と同時に村での生活を始める。

 35歳の男性社員は振り返る。

 「建物は黄色いし、寮も黄色い。ジャケットも、

 おしぼりも、コップまで黄色い。入社式でもみな

 黄色いジャケットを着ている。どこに迷いこんだ

 のかと不安になった」。

 それでも徐々に「ファナックイエロー」に誇りを

 持つようになる。


 本社施設は49万坪の広大な森に点在。

 黄色い建屋以外は延々と林が続く。

 「午後10時前後まで残業していることが多い。

 仕事はきついです」(30歳)。

 納期の厳守が徹底され、商品開発でも

 スピードが求められる忙しい若手社員が、

 平日に忍野村を抜け出すのは難しい。

 結局、敷地内に用意された黄色い寮と職場とを

 往復する生活が続く。

 「3食とも社食で済ませる人も多い」(同)。


 平均給与は約1000万円と、日本の平均の2倍以上。

 1億円以上の報酬を受け取る取締役数はトヨタ自動車

 の7人(2014年3月期)を上回る10人(同)。

 待遇の良さも求心力の源泉だ。

 それを反映してか、本社地区の駐車場には高級車も

 目に付く。アウディA3に乗っている26歳の社員は、

 休日は恋人と都心までドライブに出かけることが多い

 という。そして平日は黄色い戦場に戻って「命を削って

 働く」(同)。

 常勤取締役はいすゞ自動車にいた社長を除き生え抜き。

 彼らを仰ぎ見ながら若手は「ファナックエリート」へ育ち、

 その「教義」を後輩に伝えていく。
 

  (P.035) 





ポイント

コーポレートカラーの黄色で組織も意思も統一


異様な、あるいは不思議な会社、ファナックの一端を
垣間見た気になりました。


黄色は、交通信号では「注意」を表します。
黄色は明度が最も高い色です。
目につきやすい色です。
汚れも目立つ色です。
いつでも綺麗に保つ必要があります。


光の3原色(RGB、赤、緑、青)の一つです。
原色といえば、知育玩具の LEGO ブロックが原色
でしたね。


また、LEGOと提携した Google のロゴも黄色を含む
原色が特徴です。



LEGO  








今特集のキーワードを確認しておきましょう。

キーワード

 株主還元 
 黄色いロボット 
 高収益 
 カリスマとの葛藤 
 永続性 



最終回は、
「PART2 偉大な父との葛藤
 カリスマを継ぐ『雑用係』の意地」
「PART3 稲葉善治社長が独白
 創業者がいなくても勝ち続ける」
をお伝えします。


ご期待下さい!






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孤高の製造業 ファナック 利益率40%を生む異様な経営 2015.06.08 <1>







日経ビジネスの特集記事(110)

孤高の製造業
ファナック
利益率40%を生む異様な経営
2015.06.08




テーマ

今週の特集記事のテーマは

世界シェア8割の商品を持ち、営業利益率40%という
最強製造業。
それが今、株式市場を沸かせる産業用ロボットメーカー、
ファナックだ。
米アップルや独自動車大手も、ファナック無しでは
成り立たない。
極端に少ない情報開示から、実態はベールに包まれて
きたが、最大80%という大胆な株主還元策を打ち出し、
話題の中心に躍り出た。
富士通の傍流部門から始まったファナックが、
なぜここまで強くなったのか。
あえて常識の逆を行く、異様なビジネスモデルが
そこにはあった。

 (『日経ビジネス』 2015.06.08 号 P.026)

ということです。






孤高の製造業<br />ファナック<br />利益率40%を生む異様な経営

孤高の製造業
ファナック
利益率40%を生む異様な経営

(『日経ビジネス』 2015.06.08 号 表紙)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.08




今特集のスタートページ

今特集のスタートページ

(『日経ビジネス』 2015.06.08号 PP.026-027)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.08







第1回は、
「PROLOGUE 利益の最大8割を株主還元
 満額回答に隠された真意」
を取り上げます。


第2回は、
「PART1 あえて常識の逆を行く
 『異様』なのにはワケがある」
を取り上げます。


最終回は、
「PART2 偉大な父との葛藤
 カリスマを継ぐ『雑用係』の意地」
「PART3 稲葉善治社長が独白
 創業者がいなくても勝ち続ける」
 
をご紹介します。




今特集のキーワードは次の5つです。

キーワード

 株主還元 
 黄色いロボット 
 高収益 
 カリスマとの葛藤 
 永続性 



今週号の表紙と特集の写真をご覧になって、
お気づきの点があると思います。

ロボットの色が黄色であることです。


黄色は、ファナックのコーポレートカラーであり、
「戦いの色」だそうです。


今年になって、緑のロボットを発売したそうです。
緑はエコカラーです。


黄色いロボットと緑のロボットの違いは、
何でしょうか?


黄色いロボットは、ロボット単独で動きます。
黄色いロボットが動いている時には、
人は近づけません。危険だからです。


一方、緑のロボットは人と一緒に作業をします。
仮にロボットアームが人にぶつかっても安全
です。なぜなら、人に接触した瞬間に停止する
ようになっているからです。


ファナックという社名には、馴染みがないかも
しれません。BtoB(企業向けビジネス)の会社
だからです。


一般人が製品を目にすることが殆どないから
です。


NC(数値制御)装置や産業ロボットメーカーとして、
国内外で圧倒的な地位を築いています。


ファナックは、当初は富士通ファナックでした。
富士通の一部門に過ぎず、しかも傍流でした。


その後、富士通ファナックは富士通から独立し、
ファナックとなりました。


ファナックの創業者は、富士通でNC装置やロボット
部門の責任者であった、稲葉清右衛門氏です。
カリスマと言われています。


ファナックは高業績企業です。


その一端をご覧ください。


グラフ1

ファナックは飛び抜けている<br />・主要製造業と競合各社の売上高営業利益率

ファナックは飛び抜けている
・主要製造業と競合各社の売上高営業利益率

(『日経ビジネス』 2015.06.08号 P.027)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.08



グラフ2

高い利益率を誇る<br />・ファナックの売上高と営業利益率、<br />東証1部上場製造業の営業利益率

高い利益率を誇る
・ファナックの売上高と営業利益率、
東証1部上場製造業の営業利益率

(『日経ビジネス』 2015.06.08号 P.027)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.08






では、本題に入りましょう!


 PROLOGUE 利益の最大8割を株主還元 
 満額回答に隠された真意 


ファナックは東証一部の企業です。
ファナックの本社・工場の所在地はどこにあると
思いますか?


海外でしょうか? 国内でしょうか?


多くの方が驚くと思います。
富士山麓にあります。
もちろん、東証一部の企業で、本社・研究所・
工場が富士山麓にある会社は、ファナック以外
にはありません。


 富士山麗に広がる山梨県忍野村。

 山中湖から北に3kmほど車を走らせると、

 ファナックの本拠地が見えてくる。

 黄色の建屋が林立し、周りを鉄製の柵が囲う。

 通りには黄一色のトラックや社用車が行き交う。

 異様な光景だ。

 ファナックにとって黄色は「戦いの色」である。

 「狭い路(みち)を真っ直ぐに」「ロボット市場を

 征服せよ」。

 実質的創業者であり、現社長の父親である

 稲葉清右衛門は自社の理念を「黄色」に込めた。

 建屋、ジャケット、社用車、帽子まで黄色で染め

 上げた。


 4月13日、米国の大物投資家が2人のブレーンを

 連れてこの黄色い世界にやってきた。

 「アクティビスト(物言う株主)」、サード・ポイントCEO

 (最高経営責任者)のダニエル・ローブだ。

 今年2月にファナック株の保有を発表。

 株主還元が足りないとの批判を展開し、株式市場の

 注目をさらっていた。

 出迎えたのは、社長の稲葉善治と副社長の山口賢治、

 権田与志広の3人。

 彼らを前に、ローブは静かな口調で話し始めた。

 「御社の価値は今の株価より高いはずだ。自社株

 買いをすべきだ」。

 社長の善治はこの要求をはぐらかしながら、自社の

 理念を説いていった。


 2時間を超える会談の後、ローブは言った。

 「経営は何も変える必要はない。御社に尊敬の念を

 持った。長い付き合いをしたい」。
 

  (P.028)



富士の裾野にあるファナック本社・工場

富士の裾野にあるファナック本社・工場

(『日経ビジネス』 2015.06.08号 PP.028-029)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.08




ここに登場している、サード・ポイントCEO(最高経営責任者)
のダニエル・ローブ氏の名前は、雑誌やサイトで目にします。


激しい要求(彼にしたら当然の要求)をする株主として、
有名です。


この話の続きがありますが、その前に、ファナックは米アップル
にとっても、フォルクスワーゲンにとっても欠かせない存在に
なっているという、記事をご紹介します。


 ファナックが止まれば米アップルの「iPhone」が作れなくなる。

 世界の自動車生産も滞る。

 2015年3月期の売上高営業利益率は40%、スマートフォンの

 筐体を作る機械の世界シェアは8割、手元資金は約1兆円、

 ROE(自己資本利益率)は東証1部上場製造業平均の倍の

 16%。日本企業の中で飛び抜けた事業、財務体質だ。
 

  (P.028)





表1


ファナック(株)【6954】 Yahoo!ファイナンスから



表2


ファナック(株)【6954】詳細情報 Yahoo!ファイナンスから





先ほどの話の続きはこちらです。
サード・ポイントCEO(最高経営責任者)のダニエル・
ローブ氏の要求に屈したかのような対応をしました。
ところが、『日経ビジネス』は真意は別のところにある、
と指摘しています。


 決算発表翌日の4月28日には4年3カ月ぶりに

 投資家向け説明会を開催。

 決算発表と同時に明らかにした株主還元策は

 「(サード・ポイントの要求に対して)満額回答

 に近い」(外資系証券アナリスト)ものだった。

 今後5年間、利益の最大80%を株主に還元する。

 「サード・ポイントに屈した」「企業に株主との

 対話を求める政府の方針(コーポレートガバナンス・

 コード)に従わざるを得なかった」。

 株式市場ではこう捉えられている。

 だが、外部圧力による変心と捉えては本質を見誤る。

 善治は明かす。

 「(株式市場の周囲から出る)ゴチャゴチャとした騒音

 を断ち切りたかった。だから有無を言わせない還元策

 を発表して黙ってもらった」。

 モノ言う株主や政府に屈したわけではない。
 

  (PP.028-029)



では、どうしてこんな大胆な株主還元をしたのでしょうか?



 黄色い壁の中で40年以上、ファナックは実質的な

 創業者の教えを忠実に実行してきた。

 それは「教義」と言ってもいいほど浸透している。

 一例を挙げよう。1970年代から工作機械の司令塔

 であるNC(数値制御)装置と、産業機械、ロボット

 という3部門の研究開発に特化し続けてきた。

 清右衛門がNC装置とモーターを基本技術と定め、

 その応用以外の分野については参入しないと決めた

 からだ。

 1兆円もの手元資金をため込んでいるのも、清右衛門

 が借金を嫌い、強固な財務体質を目指してきたから。

 利益率が高いのは、売り上げが3分の1に減るという

 異常事態が発生したとしても、利益を出しながら生き

 残れるようにするためだ。
 

  (P.029)


常に危機感を持って事業に取り組んできた姿勢が、
窺い知れます。


株式時価総額は6兆3千億円を超えています。
ファナック(株)【6954】詳細情報をご参照ください。


 稲葉家はファナックの大株主ではない。


 株式市場の「騒音」を断ち切ろうとしたのは、

 「カリスマ」が生み出し、稲葉家を中心に引き継い

 できた教義、すなわち強さの根幹を守るためだった。

 常識はずれに見える戦略を解きほぐすと、

 謎めいたファナックの本質と、目指す新しい企業像

 が浮かび上がってくる。
 

  (P.029)




表3






ポイント

稲葉家を中心に引き継いできた教義、
すなわち強さの根幹を守る



強みをさらに強化するのが、企業の取るべき戦略です。
さらに、経営者が「危機感」を自覚していることが、
補強しています。驕りは、破滅への道に導きます。




ポイント

黄色いロボットは、コーポレートカラーであると同時に、
戦いの色


なぜ黄色を選んだかについて、次のような記述が
見つかりました。


 黄色が会社カラーになった由来は、富士通の一事業部

 時代に、事業部ごとの報告書等を区別しやすいように

 黄色が割り当てられたためであり、また稲葉清右衛門が

 黄色を「皇帝の色」「気遣いの色」「注意の色」と気に入った

 ため、徹底されて使われるようになった。
 

  ファナック Wikipedia から



ちなみに、ファナック(FANUC)の由来は、
「社名のFANUCは「Factory automation numerical control
(工場の自動化及び数値制御)」の頭字語である」
ファナック Wikipedia から)
そうです。







今特集のキーワードを確認しておきましょう。

キーワード

 株主還元 
 黄色いロボット 
 高収益 
 カリスマとの葛藤 
 永続性 



次回は、
「PART1 あえて常識の逆を行く
 『異様』なのにはワケがある」
をお伝えします。


ご期待下さい!






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日野原・稲盛 魂の提言 日本の医療を救え 2015.06.01 <3>







日経ビジネスの特集記事(109)

日野原・稲盛 魂の提言
日本の医療を救え
2015.06.01




テーマ

今週の特集記事のテーマは

「日本を、長寿を悲しむ国にしてはいけない」
103歳の現役医師、聖路加国際病院名誉院長の
日野原重明は言う。
「長寿世界一」は日本の誇りである。
だが、老人の医療費負担が現役世代に重くのしかかる。
2000年に約30兆円だった国民医療費は2025年に
50兆円を突破。
支え手の負担が限界を超えれば、社会は長寿を
寿げなくなる。
コスト構造をゼロから見直し日本航空(JAL)を再生した
京セラ名誉会長の稲盛和夫は言う。
「医療に従事するすべての人が経営マインドを持てば、
できることはまだまだある」
医療という「命のインフラ」をどう守るか。

 (『日経ビジネス』 2015.06.01 号 P.022)

ということです。



医療問題と高齢化は切っても切れない関係にあります。
日本は「少子高齢化」の先頭を切っています。
生産年齢人口(15~64歳)が減少傾向にあり、
高齢者を支える人たちの負担が重くのしかかってきて
います。


日本がこの問題をどう解決するのか、世界は注目して
います。先進国においては、いずれは日本と同じ道を
たどることが確実視されているからです。




日野原・稲盛 魂の提言<br />日本の医療を救え

日野原・稲盛 魂の提言
日本の医療を救え

(『日経ビジネス』 2015.06.01 号 表紙)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.01




今特集のスタートページ

今特集のスタートページ

(『日経ビジネス』 2015.06.01号 PP.022-023)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.01







第1回は、
「PART1 魂の提言
 日野原重明×稲盛和夫」
「PART2 夢の団地と必然の孤独死」
を取り上げました。


第2回は、
「PART3 算術が仁術を超えた日」
を取り上げました。


最終回は、
「PART4 初公開
 病院経営力ランキング」
をご紹介します。




今特集のキーワードは次の5つです。

キーワード

 医療の質 
 利益の還元 
 仁術に限界 
 病院経営力 
 選択と集中 




では、本題に入りましょう!
最終回は「初公開 病院経営力ランキング」です。
100位までが掲載されていますが、
この内の上位15病院をご紹介します。


さらに、自治体別ランキングの上位3病院を掲載
します。自治体の規模、病院数に大きな差が
あるためです。


しかも、自治体によって3病院までしか『日経ビジネス』
に取り上げられていない6県(秋田、石川、山梨、
和歌山、鳥取、徳島)があることも、その理由です。


お断りしておきますが、このランキングはあくまで
「経営力」を基準にしたランキングです。


儲かっている病院であるかないかを比較したもの
です。


したがって、名医がいるとか、最先端治療のための
医療機器が設置されているなどを基準に病院を
格付けしたものではありません。


『日経ビジネス』の評価基準を、先にお知らせして
おきましょう。




 根拠としたのは、厚生労働省が2003年度から

 導入したDPC制度だ。従来の保険制度は、

 病院が医療行為を提供するほど儲かる出来高

 払い制だったが、診断群分類(DPC)ごとの

 定額払い制を徐々に広げてきた。

 今やDPC導入病院は1580(2015年4月時点)。


 ランキングの対象はDPC準備病院やDPC調査

 参加病院を含む全国1798病院。

 集客力(退院患者数、退院患者数シェア、

 退院患者数増加率)、効率性(患者構成指標、

 在院日数指標、病床稼働率、機能評価係数Ⅱ)、

 提供体制(医師数、看護師数、専門医割合、

 臨床研修人気度)、収益力(DPC入院総収入額、

 1日当たり単価、1床当たり収入、1患者当たり

 収入)という指標ごとに偏差値を算出。

 それらを加重平均して総合得点で比べた。

 医師数、看護師数、専門医割合は都道府県が

 公表する医療機能情報を使用した。

 指標分析は、全国の急性期病院の診療実績を

 ウェブで公表している「病院情報局」(運営:ケア

 レビュー)が協力した。
 

  (P.035)





 PART4 初公開
 病院経営力ランキング 




初公開 病院経営力ランキング



まず、上位15病院をご紹介します。

表1

病院経営力ランキング 上位15病院

病院経営力ランキング 上位15病院

(『日経ビジネス』 2015.06.01号 P.034)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.01




表1を見て、気づくことは九州にある病院が15病院中、
4病院と最も多く、しかも10位内に3病院がランクイン
しています。さらに1~2位は熊本県内にある病院です。


これには理由があります。
後ほどお伝えします。




次に、自治体別ランキングを掲載します。
上位3病院を取り上げます。
先に述べましたが、3病院までしか取り上げられていない
県があるからです。


全国47都道府県すべてを取り上げます。
あなたのお住まいの近くにある病院が、3位までにランク
インしているかお確かめください。


表2

自治体 順位    略称         総病床数 総合得点

北海道  20 小笠原クリニック札幌病院   80     60.97
       21 札幌北楡病院          231     60.93
       28 札幌白石記念病院        103   60.20

青森県  49 八戸市立市民病院       608    59.37
     121 青森県立中央病院       695    56.99
      293 弘前大学医学部附属病院   644    54.94

岩手県  39 岩手県立中部病院       434    59.75
       59 岩手県立中央病院       685    59.02
     120 岩手県立胆沢病院       346    57.04

宮城県  4 石巻赤十字病院         452   62.35
      16 大崎市民病院           456    61.21
     114 仙台厚生病院          409   57.21

秋田県 397 秋田赤十字病院         486    53.66
     485 秋田厚生医療センター      479    52.86
     563 大曲厚生医療センター      437   52.15

山形県  57 日本海総合病院         646    59.06
     223 山形県立中央病院        645   55.64
     402 公立置賜総合病院        520   53.60

福島県 311 福島県立医科大学
        会津医療センター附属病院    226     54.67
     319 総合南東北病院          461    54.59
     332 福島県立医科大学附属病院   778    54.40

茨城県  82 聖麗メモリアル病院         72    58.10
     149 総合病院土浦協同病院      900    56.44
     189 日立総合病院            543   55.96

栃木県  40 自治医科大学附属病院      1132   59.74
     104 栃木県済生会
         済生会宇都宮病院          644   57.57
     107 足利赤十字病院           555   57.48

群馬県  41 沼田脳神経外科循環器科病院   84     59.71
      66 太田記念病院              400   58.69
      74 伊勢崎市民病院            504   58.50

埼玉県  23 埼玉医科大学国際医療
         センター                 700    60.62
      60 自治医科大学附属さいたま
        医療センター               608   58.96
     111 埼玉医科大学 総合医療
        センター                  991   57.40

千葉県  10 船橋整形外科病院          70   61.73
      19 東京ベイ・浦安市川
        医療センター              344   61.04
      36 総合病院 国保旭中央病院     989   59.91

東京都  5 東京都立多摩総合医療
        センター                  789    62.03
      8 イムス葛飾ハートセンター       50    61.82
      18 武蔵野赤十字病院           611    61.07

神奈川県 11 湘南鎌倉総合病院           574    61.72
       14 済生会 横浜市東部病院      560    61.28
       26 東海大学医学部付属病院      804    60.33

新潟県   91 新潟市民病院            660    57.82
      156 新潟県立新発田病院        478    56.36
      263 長岡赤十字病院           729    55.21

富山県   71 富山県立中央病院          733    58.59
      418 富山赤十字病院           435    53.50
      463 富山市立 富山市民病院      595    53.12

石川県  340 金沢脳神経外科病院        220    54.30
       361 石川県立中央病院          662    53.97
       489 国民健康保険 小松市民病院   344    52.82

福井県  333 福井県立病院             961    54.40
       428 福井県済生会病院          460    53.47
       490 福井大学医学部附属病院      600    52.81

山梨県  174 山梨県立中央病院          651    56.10
       441 笛吹中央病院             150    53.34
       530 山梨大学医学部附属病院      606    52.40

長野県   30 一之瀬脳神経外科病院        50    60.02
        51 長野赤十字病院            700    59.28
        58 長野県厚生連 佐久総合病院    801    59.05

岐阜県  115 岐阜県立多治見病院         575    57.15
      215 岐阜市民病院             609    55.71
      269 大垣市民病院             888    55.11

静岡県   22 中東遠総合医療センター       500   60.83
        53 静岡県立静岡がんセンター     589   59.20
        72 静岡県立総合病院          720   58.53

愛知県   15 愛知県厚生連 安城更生病院    735   61.25
        34 一宮市立市民病院          584   59.94
        35 豊橋市民病院             820   59.92

三重県   43 伊勢赤十字病院             655   59.70
      175 市立四日市病院             568   56.09
      344 三重県立総合医療センター      443   54.21

滋賀県  129 済生会滋賀県病院            393   56.89
       173 滋賀医科大学医学部附属病院    614   56.12
       217 近江八幡市立総合医療
          センター                  407   55.70

京都府   12 洛和会丸太町病院            150   61.65
        92 新京都南病院                102   57.82
       122 宇治徳洲会病院             400   56.97
 
大阪府    56 関西医科大学附属枚方病院      750  59.10
        78 国立循環器病研究センター       612  58.40
        93 医誠会病院                 327  57.75

兵庫県    3 神戸市立医療センター
           中央市民病院               700   62.88
       126 兵庫県立淡路医療センター       441  56.93
       142 兵庫県立尼崎病院            500   56.55

奈良県  105 天理よろづ相談所病院          815  57.52
      186 奈良県立医科大学附属病院       978  55.98 
      224 奈良県総合医療センター         430  55.64

和歌山県  37 和歌山県立医科大学附属病院      800   59.90
        55 日本赤十字社 和歌山医療
       センター                       873  59.12
       462 紀南病院                   356   53.14

鳥取県  188 鳥取県立中央病院              431  55.97
      266 鳥取大学医学部附属病院          697  55.17
      435 山陰労災病院                 383  53.40

島根県  196 島根大学医学部附属病院         600  55.89
      214 島根県立中央病院               679  55.73
      409 松江赤十字病院                645  53.57

岡山県   17 倉敷中央病院                1161  61.21
       80 岡山大学病院                  865  58.18
      134 岡山医療センター               609  56.73

広島県  110 呉医療センター                630   57.42
      132 広島市立広島市民病院           743   56.81
      139 福山医療センター               410   56.63

山口県  124 山口県済生会下関総合病院        373  56.96
      278 徳山中央病院                 519  55.05
      360 岩国医療センター               530  53.98

徳島県   9 徳島赤十字病院                405  61.79
       38 徳島県立中央病院               460  59.86
      452 徳島大学病院                 696  53.26

香川県 128 香川労災病院                  404  56.90
      238 三豊総合病院                 482  55.49
      296 香川県立中央病院              531  54.84

愛媛県 119 愛媛県立中央病院               827  57.04
     182 済生会松山病院                 170  56.03
     242 市立宇和島病院                 435  55.47

高知県  64 高知医療センター               649  58.80
     226 近森病院                    512  55.63
     383 高知赤十字病院                468  53.77

福岡県  13 福岡新水巻病院                212  61.60
      25 飯塚病院                   1116  60.36
      27 戸畑共立病院                  218  60.26

佐賀県  73 佐賀県医療センター好生館         450  58.52
     145 佐賀大学医学部附属病院          604  56.49
     355 新武雄病院                   135  54.04

長崎県  31 長崎大学病院                  862  59.97
     103 長崎医療センター                643  57.62
     201 佐世保市立総合病院              594  55.85

熊本県  1 済生会熊本病院                 400  65.46
      2 熊本医療センター                550  62.90
      7 熊本赤十字病院                 490  61.90

大分県 113 河野脳神経外科病院              40  57.29
     248 大分県立病院                  578  55.39
     283 帰巖会 みえ病院                70   55.01

宮崎県 148 宮崎大学医学部附属病院          632   56.46
     273 宮崎善仁会病院                106   55.07
     481 都城市郡医師会病院              172   52.88

鹿児島県 42 厚地脳神経外科病院             60   59.70
     187 徳田脳神経外科病院             70    55.97
     253 鹿児島逓信病院                50   55.32

沖縄県  6 沖縄県立中部病院               550   61.95
      29 中部徳洲会病院                 331   60.15
      50 敬愛会中頭病院                 336   59.32


注:2014年9月に厚生労働省が公表したDPCデータおよび
「医療機能情報」の公表データを基に作成

『日経ビジネス』2015.06.01 号 PP.036-039




 病院こそ「選択と集中」 

次に2つの病院をご紹介します。
総合ランキング1位と3位です。



1位 済生会熊本病院

熊本県には1位と2位があります。
驚異的なことです。


その明確な理由があります。
競争と、診療科のすみ分けが相乗効果を
生んでいます。


熊本の基幹病院が地域・診療機能をすみ分け、
全国のモデルとなっています。



 済生会熊本病院(熊本市南区、400床)は、

医療界では著名な病院だ。

1995年に移転したのを機に、診療科を絞り

込んで高度・専門医療と緊急性の高い

重症患者の救命・救急に対応できる特化型

の病院へと生まれ変わった。

1つの病院であらゆる医療ニーズに応える

「総合病院」をやめたことで、大繁盛の人気

病院へと変貌を遂げた。

 経営力を端的に示すのは入院患者の平均

在院日数の短さだ。

2014年度実績で9.9日と全国屈指の短さ。

一方、病床利用率は96.0%と、年間を通じて

ほぼ満室状態をキープしている。

現在の保険制度では入院日数が短いほど

診療報酬が高く設定されている。

つまり、済生会熊本病院では売り場(ベッド)に

優良顧客(単価の高い患者)が殺到している

状態を維持しているのだ。
 

  (P.040)



病院の病床の利用率は、ホテルの部屋の利用率
と同様なもの、と考えています。


ホテル業界でいう空室率は、病院の病床率に相当
すると考えられる理由は、1日使われなければ、
その分は永遠に戻ってこないからです。
後で補充することはできないのです。


その点で、「病床利用率は96.0%」というのは、
驚異的な数字だ、と思います。



図1をご覧になるとお分かりになると思いますが、
他の地域との大きな違いがあります。


熊本を代表する病院が集中しています。
しかも、各病院の強みに特化し、すみ分けが
できているのです。



 人口約70万人の熊本市は、全国でも有数の

 病院激戦区として知られる。

 市内中心部には同院を含め、6つの基幹病院

 があり、ほかにも大小様々な規模の病院が

 乱立する。

 そんな中、「何もかもやろうとしても勝算は立たない」

 (副島秀久院長)ことが、機能転換の発想につながった。

 特化型の病院に切り替えるため、

 「疾患・臓器別センター制」を導入した。


 実は、済生会熊本病院の機能転換が、地域の医療

 提供体制の地殻変動をもたらした。

 下図のように市内6つの基幹病院ごとに強みとする

 領域をすみ分け、地域全体で分業する体制を作り上げた。

 これは地域連携の成功例として、医療界では「熊本方式」

 と呼ばれている。

 すみ分けが成功しているため、今回のランキングで全国

 トップ10に熊本の病院が3つも入った。
 

  (P.040)



図1

熊本では6つの基幹病院が地域・診療機能をすみ分け<br />・熊本市内の基幹病院と“看板”診療科・得意とする診療分野

熊本では6つの基幹病院が地域・診療機能をすみ分け
・熊本市内の基幹病院と“看板”診療科・得意とする診療分野

(『日経ビジネス』 2015.06.01号 P.040)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.01






3位 神戸市立医療センター 中央市民病院


次にご紹介する病院は、建物の老朽化に伴い、
移転しただけでなく、旧病院と比べてベッド数を
約130床も減らしながら収益力を向上させて
います。




 自治体が運営する公立病院は経営に対する

 意識が低いのが「通説」だが、神戸市立医療

 センター中央市民病院(神戸市中央区、700床)

 は該当しない。

 同院は神戸市全域の基幹病院・救命救急センター

 として24時間365日の救急医療を提供するとともに、

 高度医療・急性期医療を重点的に担い、地域医療

 の中心的役割を果たしている。

 建物の老朽化に伴い、2011年7月にポートアイランド

 に移転。

 その際、市の方針で、旧病院と比べてベッド数を

 130床も減らした。


 ハード面では“稼ぎ頭”を伸ばす戦略を取った。

 全体で病床を減らしつつ、入院単価の高い救急専用

 病床と差額ベッド代が徴収できる有償個室は、

 旧病院よりも倍近くに増やした。

 また、手術数の増加は経営収入の安定化につながるため、

 手術室を12室から18室に増設。外来化学療法センターの

 病床も、16床から33床に増やした。
 

  (P.041)



同病院は、医療関係者を増やし、雇用問題にも一石を
投じています。




 病床回転率が徐々に高まり、手術数も増えていくと、

 現場はより忙しくなる。そこで、旧病院に比べて

 これまでに医師は50人、看護師は100人ほど増員した。

 公立病院の9割が赤字に苦しむ中、経営が健全ならば

 必要な人員を確保できることを示している。
 

  (P.041)




表3


ベッド数は減ったが“稼ぎ頭”を伸ばした

(『日経ビジネス』 2015.06.01号 P.041)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.01





病床を減らしても収益力を向上させるために、
「入院単価の高い救急専用病床と差額ベッド代が
 徴収できる有償個室は、旧病院よりも倍近くに
 増やした」(P.041)
ことは、投資におけるポートフォリオの組み換えに
相当することで、病院経営に「経営戦略」を取り
入れたことが奏功した、と言えます。



今後、病院経営は一層厳しくなってきます。
厚生労働省は医療費の削減をさらに進めるため、
DPC(診断群分類)を導入し、病院経営を「ガラス張り」
にしようとしています。


赤字を垂れ流している病院は潰すつもりでいます。



 「薬漬け」や「検査漬け」に代表されるように

 従来の病院は、医療を提供するほど儲かった。

 厚生労働省は2003年、診療内容を標準化して

 ムリ・ムダ・ムラをなくすDPC(診断群分類)ごと

 の包括支払い制度を導入した。


 DPCデータを使えば、「どんな患者に」「いつ」

 「何を行い」「どのような結果になったのか」が分かる。

 また各病院が同一のフォーマットでデータを提出

 しているため、簡単に病院が比べられる。

 一方、すべての患者のレセプト(診療報酬明細書)

 の情報を集めたナショナルデータベースの仕組み

 が完成したことから、今後はこれを用いて、診療行為

 や医療費についての評価・分析がさらに充実する見込みだ。

 つまりDPCデータとレセプトデータを組み合わせれば、

 医療の中身は“丸裸”となり、病院の経営実態もすべて

 ガラス張りとなる。そんな未来が間近に迫っているのだ。


 将来の医療需要を推計した上で、地域の医療提供の

 実態を踏まえながら、必要病床数を定める。

 データを基に病院・病床の大胆なリストラ策が断行される

 可能性もあり、医療ニーズに応えられない病院は早晩、

 淘汰されるかもしれない。
 

  (P.041)






ポイント

病院の収益力の差が、病院の優劣を決める






私見

昨日まで、平常通り診療が行われていた病院が、
消滅したらどうしますか?


これからは、そんな現実を目の当たりにすること
になるかもしれません。


その一方で、評判が評判を呼び、患者を集め、
収益力を向上させ、経験値を蓄積させるという、
好循環を生み出す病院もあります。


病院も普通の企業と何ら違ったことはありません。
利益を出し、キャッシュを生み出すことに注力
しなければ潰れるのです。


黒字倒産はありますが、赤字でもキャッシュが
潤沢にあれば潰れません。







今特集のキーワードを確認しておきましょう。

キーワード

 医療の質 
 利益の還元 
 仁術に限界 
 病院経営力 
 選択と集中 






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プロフィール

藤巻隆

Author:藤巻隆
管理人の藤巻隆です。

以前、ジュゲムブログで、
同タイトルの
「日経ビジネスの特集記事」
を書いていました。

しかし、使い勝手があまり
よくなかったので、
FC2ブログで新たにスタート
することにしました。

現在(2013.10.16)、ブログの
引越を行っているところです。

FC2ブログでは、2013.10.14号
が最初のブログということに
なります。


2013年10月16日記す。

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