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アジアの苦悩 米中激突の最前線 2014.06.09 <1>

日経ビジネスの特集記事(60)

アジアの苦悩
米中激突の最前線
2014.06.09


今週の特集記事のテーマは

互いを必要としながらも牽制し合う米中二国が
パワーゲームを演じる時、その舞台となる
アジアには何が起こるのか

ということです。


南進する中国、慄(おのの)くアジア

まず、下図をご覧ください。
中国が主張する「九段線」が見えます。赤い破線です。


この九段線を見れば、ベトナムやフィリピンと中国との
争いが激化していることが読み取れます。


台湾の北東には、日本と中国が衝突を繰り返す尖閣
諸島が見えます。


中国が主張する九段線

(『日経ビジネス』 2014.06.09号 P.024)



中国が領有権を強行に主張する背景には、中国は
国土の広さの割に海岸線が少ないことがあります。


ヨーロッパ諸国であれば、陸続きで領有権を主張
したくてもできないという現実があります。


中国の領有権の主張が激しくなってくると、周辺国
との軋轢が増加し、紛争に発展しかねません。


そうなると、日本は黙認し続けることはできなくなり
ます。「集団的自衛権」の議論が白熱化してくる
可能性が高くなります。


その選択は決して、日本にとって良いことでは
ありません。


厄介なことは、ここに来て、米中二国のアジアに
おける囲い込みが激化しています。


米国はベトナム戦争で、「敗戦」しました。
時代が変わって、中国と争うベトナムを守る側に
回っています。


米太平洋軍サミュエル・ロックリア司令官は、
こう語ったといいます。


 「米国はベトナムなど他国との協力関係を

 拡充する機会も検討したい」
 

  (P.025)


「米中新冷戦」という言葉があるそうです。
米中は互いに求めるものがあるにも関わらず、
中国のアジアでの覇権を強めることに対抗
するため、米国はアジアの同盟国とのつながり
を強化しようとしています。


日経ビジネスは、この状況を冷静に分析して
います。


 「米中新冷戦」などという言葉もあるが、

 米中関係は、かつての東西陣営間

 のような関係ではない。経済的に深く

 結びつきあい、互いを必要としている。

 だが、それでいながら、いつか互いの

 覇権が衝突するであろうという確実な

 予感をも同時に共有している。
 

  (P.025)


次の図をご覧ください。
アジアを染める中国経済という見出しがついています。
中国と米国の経済的影響力の合計を100%とし、
国別に米中の比率を見える化したものです。


赤い表示は中国の経済的影響力を示し、
青い表示は米国の経済的影響力を示しています。


中国の経済的影響力のほうが優勢に見えますね。
この様子を見ると、「巨大化する中国経済と無縁でいられる
場所は、アジアにはもうない」(P.026)という指摘は、実感を
持って受け入れざるを得ません。




(『日経ビジネス』 2014.06.09号 PP.026-27)



 
PART1 中国がもたらす恩恵と恐れ

先に、中国はベトナムやフィリピンと領有権を巡って
激しく争っている現状をお伝えしました。


中国は、ベトナムやフィリピンだけでなく、台湾とも
最近、衝突の兆しが現れました。


 3月17日、台湾・台北市にある立法院

 (国会に担当)では中国・台湾間で

 締結された「中台サービス貿易協定」

 を批准するための委員会審議が進行

 していた。


 どう協定は、中台が互いにサービス産業

 分野で市場を開放することを定めたもので、

 2013年6月に締結された。事実上の中台

 FTA(自由貿易協定)だ。


 この3月中旬に実施された台湾指標民調

 による世論調査によれば、「同協定を支持
 
 する」と考える人が31.6%、反対する人は

 それを上回る44.5%。この「民意」にも

 かかわらず、同じく「民意」によって立法院

 議席の多数を占めた与党が批准を強行

 しようとしている。


 「このままでは、中国に飲み込まれてしまう」

 学生たちが、抗議デモを組み、立法院を取り

 囲んで声を上げ、ついに自制の一線を越えて

 議事堂になだれ込んだ。


 立法院長・王金平(ワンジンピン)氏が「これは

 院内の問題だ」と発言。

 館の主が事実上「問題ない」と発言している

 以上、学生らの行動は違法性のある「侵入」

 ではなくなってしまったのだ。


 23日間続いたこの「立法院占拠」という異常

 事態は台湾全土で連日報じられ、市民の

 協定に対する関心は否応なく高まってしまっ

 た。


 立法院占拠後には協定を「支持する」と回答

 した人の割合は25.3%と6ポイント以上減少

 している。 
 

  (P.029)

ご存知のように、中国は台湾を中国の一部と考えて
いますし、国連は台湾を国家ではなく、地域と見な
しています。


中国と台湾には「三通」があります。
大前研一さんは、『チャイナ・インパクト』
(初版 2002年3月29日 講談社)の中で、
こう述べています。


 中国と台湾は、公式には国交が断絶していて、

 表向き直接の行き来ができない。

 現在は「小三通(さんつう)」といって、例外的に

 福建省と台湾の馬祖島、金門島との間で

 通商、通航、通信が開放されているだけだ。

 しかし、これが中国本土と台湾とのレベル、

 つまり「大三通」にまで広がって交易の直通が

 できるようになると、台湾が国土を広げるような

 形で一大発展する可能性は十分にある。
 



12年前に出版された本ですが、大前さんの予言は
当たった、と思います。


ただ、中国自体は予想以上に大きく変貌しました。
経済力を背景に軍事力が強化されたことです。


それだけに台湾は危機感を強めていることは想像
に難くない、と思います。


台湾は、香港の現状を未来の台湾に重ねあわせて
いるのです。


 台湾が中国と結んだECFA(経済協力枠組み協定)
 
 似た協約を、1997年に英国から返還された香港は

 2003年に中国本土と結んでいる。
 

  (P.032)

ECFAがメリットとデメリットを香港にもたらしました。


 本土客と香港人との間の摩擦が深刻化している

 のも確かだ。

 4月下旬、香港に本土から訪れている観光客の

 夫婦が、香港の市街地の路上で、我慢しきれ

 なくなった子供に排便させた。そのあまりの光景

 に驚いた香港人がカメラに収めていたところ、

 それに気づいた夫婦が激高し、カメラを奪った。

 香港人は取り返そうとして結局揉みあいになり、

 手を上げた本土客が暴行の疑いで逮捕された。

 この事件は、香港・中国本土の双方で盛んに

 報じられた。

 香港人の多くは本土人観光客との慣習の違い

 に嫌気が差しており、この事件で不満が爆発

 した。 
 

  (P.032)

香港は、99年間英国の統治下にありました。
その間に、英国式と言うか欧米流の慣習を身に
つけ、中国本土に返還されると、慣習の違いに
違和感を抱くようになったのかもしれません。


香港人にとって、厄介な問題はこれだけでは
ありませんでした。


 振る舞いだけではない。本土客の需要が

 あまりに大きいがために、香港人の生活

 が脅かされるといったことも起こっている。

 例えば、中国で粉ミルクの品質問題が

 取り沙汰されて以降、香港に買い出しに

 来て本土内で販売する「運び屋」の買い占め

 が横行。香港人の母親が買うに買えなく

 なってしまった。
 

  (P.032)

香港人にしてみれば、中国本土からの観光客の
横暴に、我慢の限界を超えた、という心境でしょう。


次の言葉が、台湾の近未来を語って、象徴的です。


 台湾立法院を占拠した学生たちを支援する、

 ある民進党議員はこう言う。

 「今日の香港を見れば、明日の私たち(台湾)

 が分かる」
 

  (P.032)


私は、今まであまり意識していなかったのですが、
TPP(環太平洋経済連携協定)は日本の酪農業や
漁業、医療などに多大な影響を及ぼす、ということ
に注意が集まっていました。


ところが、TPP協議に中国は参加表明していません。
実は、ここに米国の真意があるのではないか、と
考えるようになりました。


米国は、中国がアジアで覇権を強めることに難色を示し、
アジアでの覇権を強めるために、アジア各国とTPPを
締結し、中国を抑えこもうとしているのではないか、
と考えたのです。


米中二国の覇権の争いは「新冷戦」(先述)の様相を呈し、
一層その度合いを強めているように見えます。


中国と香港のような「文化的な衝突」(P.033)は避けがたく、
中国と台湾、中国と米国の武力衝突へ発展しかねない
危機感を孕んでいます。


万が一、アジアで武力衝突が勃発したら、日本は静観
しているだけでは済まなくなるでしょう。


「集団的自衛権」の議論が、白熱化するおそれがあります。


TPPに限らず、交渉や協定はトレード・オフ(こちらが立てば、
あちらが立たず、二律背反)にならざるを得ない、と考えて
います。


よく云われるようなWIN-WINの関係は、一方はBIG WINで、
他方はSMALL WINに必ずなります。


交渉や協定は、妥協の産物です。妥協できなければ
決裂し、禍根を残すだけです。



次回は、「PART2 華禍論より『自由の輪』」他を
お伝えします。






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現在(2013.10.16)、ブログの
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